青少年委員会

青少年委員会 意見交換会

2015年10月30日

青少年との意見交換会(立命館守山)概要

◆概要◆

青少年委員会は、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路」としての機能を担っています。その活動の一環として、10月30日(金)の午前9時から正午までの間、立命館守山高校(滋賀県守山市)メディアホールにおいて、青少年(視聴者)、放送局、青少年委員会委員の3者による意見交換会を行いました。3者が一緒に意見交換を行うのは初めてのことです。
今回の意見交換会は実験的な取り組みであり、立命館守山高校および朝日放送のご協力を得て実施しました。立命館守山高校からは1・2年生およそ300人、朝日放送からはテレビ制作・ラジオ・報道担当者とアナウンサー、BPOからは汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員が参加しました。
当日は意見交換に先立ち、松井健副校長からあいさつがあった後、BPOの三好晴海専務理事がBPOおよび青少年委員会の役割について生徒に説明しました。その後は稲増委員と橋詰優子アナウンサー(朝日放送)の司会進行により、テレビ制作、ラジオ、アナウンサー、報道の仕事について、それぞれ朝日放送の担当者から説明があり、3者による活発な意見交換が行われました。
同校はタブレット端末を使用した授業を推進していることから、意見交換にあたっては、各クラスの代表生徒十数名がタブレット端末を持ち、放送局担当者や委員との質疑応答に活用しました。

テレビ制作、ラジオの担当者からは、実際に制作を担当した番組の映像や音声を利用しながら説明がありました。アナウンサーの仕事については、自らの実経験を踏まえた業務紹介、報道については写真や図を用いて、高校生にも分かりやすく説明が行われました。また、事前アンケートの結果を基に、高校生の視聴(聴取)実態や興味のある番組などについても意見交換が行われました。
意見交換を終えて、汐見委員長からは「生徒のみなさんはインターネットと放送を上手に使い分けているようだ。テレビやラジオは公共性を大事にしながら、たくさんの人が関わり、責任ある放送をしている。インターネットは様々な個人の意見が出ているのだと理解して、これからも使い分けてほしい。BPOは視聴者と放送局をつなぐ役割をしている。みなさんには一緒にいい番組を作っていく応援団になってほしい」とのまとめの言葉がありました。
また、上杉兼司副校長からは「放送がどのように制作されているかを知ることで、今後は新しい角度から視聴・聴取することができるようになるだろう。本日は初めての機会ということもあり、もっと言いたいことや深い意見があったにも関わらず、上手く発言出来なかった人もいると思う。これを機会に、積極的に自分たちの声を出すようにしてほしい」との言葉がありました。

放送局の各担当者の経歴・講演、質疑応答の概要は次のとおりです。

(1)「テレビ制作について」井口毅氏(朝日放送・東京支社制作部プロデューサー

<経歴>
1993年入社、テレビ制作部に配属。『ごきげん!ブランニュ』などを担当し、2002年東京支社制作部に異動。『みんなの家庭の医学』や『芸能人格付けチェック』などを担当。現在は『大改造!! 劇的ビフォーアフター』のプロデューサーをつとめる。
<講演>
自らが制作を担当した、『芸能人格付けチェック』や同番組の予選会の映像(お笑いタレントの罰ゲームシーンなど)を会場のスクリーンに映し出し、その映像を基に、企画、キャスティング・構成、シミュレーションなど、番組制作の仕組みを説明したほか、どのような考えで企画が生まれ、どのような点に留意して番組制作を進めているのかを具体的にわかりやすく伝えた。
質疑応答では、BPOに「お笑いタレントへの罰ゲームなどが子どもたちのいじめを助長している」との視聴者意見が多く寄せられていることから、生徒たちに意見を聞いた。「いじめを助長している」と考える生徒が少なかったことを受け、井口氏から「番組制作にあたっては様々なシミュレーションを行い、安全を確認している。親世代からの意見が多いようだが、実際の視聴者である高校生のみなさんが冷静に番組を見てくれているようで安心した」との感想があった。
また、バラエティー番組でのやらせをどう考えるかについて質問したところ、否定と肯定の意見がほぼ半数となった。井口氏からは「やらせの定義は難しいが、視聴者と何をどこまで約束しているかが大事だ。視聴者が何を番組で楽しんでいるのかを常に考え、それを裏切るようなことをしてはいけない」との考えが示された。

(2)「ラジオ制作について」鈴木洋平氏(朝日放送・ラジオ局編成業務部主任)

<経歴>
2003年入社、技術局から2005年テレビ制作部に異動。コメディ番組やM-1グランプリの担当を経て2013年ラジオ局に異動。現在、月曜~木曜の午後10時から午前1時までの番組『よなよな…』のプロデューサーをつとめる。
<講演>
『よなよな…』の音源を聞きながら、ラジオ番組の制作について、「ラジオは台本があってないようなもの。『よなよな…』は生放送なのでその場で判断し、展開している」「スタッフは少なく、ほぼ3人で放送している」など、制作現場の実態について説明があった。また、「テレビでのタレントのイメージと違う一面が出るところも魅力。タレントの素の話を聞きたいならラジオが適している」とラジオの楽しみ方を伝えた。
質疑応答では、ラジオを実際に聴取している生徒が少なかったことから、「どうしたらラジオを聴くようになるか」と質問した。生徒からは「好きなタレントが出演していたら」「もっと手軽に聞けるようになったら」などの回答があったほか、テレビを利用してラジオの魅力をもっとアピールすべきとの意見も複数寄せられた。
また、会場でラジオ受信機を持っているかどうか聞いたところ、持っている人が少なかったことを受け、委員から「防災用品として、ひとりが1台持ってほしい」との発言もあった。

(3)「アナウンサーについて」橋詰優子氏(朝日放送・編成局アナウンス部主任)

<経歴>
1997年アナウンサーとして入社。夕方の情報番組のサブ司会、夕方のニュース番組キャスターをつとめる。2011年末に双子を出産し、2013年9月職場復帰。現在、ラジオ『堀江政生のほりナビ!』の火曜レギュラー、『橋詰優子の「劇場に行こう」』、『橋詰優子のサンデーかうも。』を担当。
<講演>
担当番組での業務について詳しい説明があり、アナウンス業務の楽しさと厳しさを生徒たちに伝えた。また、同社では聴覚障害者向けの解説放送に力を入れており、自らも『新婚さんいらっしゃい』の解説放送を担当していることから、解説放送にも興味を持ってほしいと訴えた。
また、担当番組以外のアナウンス業務について、「天災などへの対応に備え、泊まり勤務があり、誰かが必ず局にいる。何かあったときにひとりでも多くの命を救うために常に訓練している」と、その使命についても語った。

(4)「報道について」田中徹氏(朝日放送・報道局局長補佐)

<経歴>
1982年入社、報道局に配属。警察・司法担当後、「ニュースステーション」に1年派遣。「おはよう朝日です」などの情報番組経験も豊富。「サンデープロジェクト」にはディレクター、プロデューサーとして合計6年かかわる。
<講演>
ニュースネットワークや取材拠点などの紹介を通じて、ニュースが放送されるまでの仕組みなどをわかりやすく伝えた。また、「世の中には色々な出来事が起こっているが、放送時間は限られている。様々な要素があるが、"驚き"をひとつの基準として、ピックアップした出来事をニュースとして伝えている」との考えを示した。
質疑応答では、生徒から「特に朝のニュースでは要点をまとめて放送してほしい。夕方や夜のニュースでは学生が見やすいように工夫してほしい」との要望があり、「いかに分かりやすく伝えるかに注力しているが、どうしても高校生より上の年代を意識している面があるかもしれない。高齢者への配慮は進んでいるが、今後は若者への配慮も考えていきたい」との回答があった。
また、「質疑応答を通じて、テレビとインターネットでは情報の信頼性が違うと理解している生徒が多く、安心した」との感想もあった。

【質疑応答】
△=生徒、○=放送局、●=委員

【演出とやらせについて】

  • ● インターネットの掲示板などでは、『芸能人格付けチェック』の一部の出演者が答えをあらかじめ知っているのではないかとのうわさもある。高校生はどう思っているのか。
  • △ 制作者は面白い展開にしたいと考える。視聴者にはばれないので、あらかじめ答えを教えているのではないか。
  • △ 答えを教えていてもいなくても、出演者が上手に対応してくれると思うので、教えていないと思う。
  • ○ 答えを教えてはいない。制作する側からすると、正解でも不正解でも面白い展開になることが予想されるので、事前に教える意味が全くない。
  • ○ 事前に答えを求めるようなタレントに出演してもらうことはない。一流と呼ばれる出演者が間違ってしまうリスクもあるため、出演を断られることもあるが、正月の恒例番組として理解頂き、出演いただいている。クイズ的な要素もあるが、タレントの本当の姿はどうなのかという興味に迫ることが番組の趣旨だと考えている。
  • ● バラエティー番組であれば多少のやらせをしてもいいと思うか。
  • △ バラエティー番組は面白ければいいので、多少のやらせはあってもいいと思う。
  • ○ 視聴者と何をどこまで約束しているかが大事だ。視聴者が何を番組で楽しんでいるのかを常に考え、それを裏切るようなことをしてはいけないと考えている。
  • ● 『大改造!! 劇的ビフォーアフター』の出演者はどのように選んでいるのか。
  • ○ たとえスタッフの知り合いが出演したいと言っていても、番組のフォームから応募してもらうことにしている。

【罰ゲームといじめについて】

  • ● BPOには視聴者から、お笑いタレントへの罰ゲームなどが子どもたちのいじめを助長しているとの意見が寄せられることがある。お笑いタレントにとっては、いわゆる「おいしい」演出ではあるが、いじめを助長している面もあると思うか。
  • ● タブレット端末の回答を見てみると、「いじめを助長する」と考えている生徒はほとんどいないようだ。
  • △ バラエティー番組なので、多少の罰ゲームはあってもいいのではないか。
  • △ ちょっとしたことから発展していじめにつながることも考えられる。
  • △ 番組の中で行われていることであり、テレビの中だけの話だと理解している。学校でのいじめには全く関係ない。
  • ● 年配の人からは若い人に悪影響を与えるとの意見が多く寄せられている。
  • ○ もう少し「いじめを助長する」と考える生徒が多いかと思っていた。若い人たちが冷静に番組を見ていることがわかった。
  • ● 予想どおりの結果となった。番組での行為がいじめの方法を考えている人にヒントを与えてしまうとの意見もあるが、そういう人はいつの時代にもいる。
  • ● 制作現場では罰ゲームの程度について、どのように判断しているのか。
  • ○ シミュレーションをしっかりとしている。罰ゲームは軽すぎると面白くないが、やりすぎると危険だ。大がかりな罰ゲームについては、専門業者に頼んで事前に実験をしている。その後、プロデューサーやディレクター自身でチェックすることもある。
  • ○ 必要に応じて、事前にタレントに対し、仮に罰ゲームを受けることになった場合、どのような展開になっていくのかの概要は伝えることもある。

【録画視聴の実態について】

  • ● 深夜帯の番組を録画視聴している人はどれくらいか。(6~7割の生徒が録画視聴していると回答)
  • △ 深夜帯のアニメ番組が好きだが、夜の遅い時間に視聴することは親が許してくれないので、親に録画を頼み、休日の朝などに見ている。
  • ● 深夜帯のアニメ番組については、保護者からだけではなく、若い人からの意見も多い。

【ラジオについて】

  • ● ラジオ受信機を持っている人、およびラジコを使っている人はどれくらいか(受信機を持っている生徒が20人、ラジコを使用している生徒が10人程度挙手)
  • ● 今の若者は受信機もなく、ラジコの存在も知らない人がほとんどのようだ。どうすれば若者もラジオを聴くようになると思うか。
  • △ 有名な人や好きな人が出演していたら聴きたい。
  • △ もっと手軽に聴けるようになれば聴きたい。
  • △ テレビCMでラジオの魅力をアピールすべき。
  • △ テレビが無くなれば聴く。
  • ○ 高校生のラジオ聴取に関するリアルな現状を知ることができた。みんなに聞いてもらえるよう、頑張っていきたい。

【報道について】

  • ● 講演を聞いて、高校生のみなさんが思うよりニュースはあらゆることに気をつけて制作されていることを理解してもらえたと思う。インターネット上に情報があふれ、若者はテレビ離れをしている。放送が世の中に役立っていることを啓発し続けていくことも大事だと考える。
  • △ テレビのニュースは、色々な過程を経てから放送されていることが良く分かった。
  • ● 事前アンケートではテレビは偏向しているなどの意見もあった。テレビのニュースにどのような不満があるのか教えてほしい。
  • △ 放送時間が長いニュースがあるが、特に朝のニュースでは要点をまとめて放送してほしい。
  • △ 夕方や夜のニュースでは、もっと学生が見やすいような工夫が必要だと思う。

【インターネットとテレビについて】

  • ● テレビを見ながらインターネットをするのはどのようなときか。
  • △ スポーツ中継を見ながら、他の試合会場での試合情報を確認したりしている。
  • △ 「ニコニコ生放送」などにアクセスしながら、仲間とテレビ番組の良かった点などについて意見交換をしている。
  • ● 事件などがあった場合、テレビのニュースではプライバシーに配慮して匿名にしているが、インターネットでは実名が出ていることがある。そうした情報を知りたい場合はインターネットで確認をしているのか。インターネットとの付き合い方や問題点をどう考えているのか教えてほしい。
  • △ テレビでは放送されない動画や写真は、SNSなどを通じて見ている。
  • △ インターネット上の情報とテレビの情報が違うことがあり、混乱することがある。
  • △ インターネット上の情報には嘘の情報があるので怖い。
  • △ インターネットもテレビも好きなように使えばいい。
  • △ テレビとインターネットは別物と考えている。テレビの情報は先生から聞いているような感覚で、インターネットの情報は友達と話しているような感覚だ。
  • △ インターネット上には嘘の情報もあり少し怖いが、面白いこともたくさんある。テレビの情報はほぼ信用できるので、ニュースはテレビ、面白い動画などはインターネットで見ている。
  • △ テレビは速報があり、情報が早い。
  • △ インターネット上の情報には嘘も多いが、テレビが意図的に隠していることが分かる点が魅力だ。
  • △ インターネットニュースや新聞は見出しがあり、自分の見たいニュースを選べるところが利点だ。
  • ○ 放送局では、どの情報を出すべきか、出さざるべきか、様々な要素を基に判断している。少年犯罪の報道などでは、加害者であっても特定されないように配慮しているが、インターネット上の情報で特定されることもあり、判断が増々難しくなってきている。
  • ○ 一般の人であっても面白い素材を撮影できる時代になっており、ポジティブに考えると、放送できる素材が多くなったとも言える。これをテレビなりに取捨選択して使用することが大事であり、インターネットとは共存共栄の関係でありたいと考えている。
  • ○ インターネット上の情報は、テレビよりリアリティーがあるとの気持ちもある。テレビではなかなか本音が言えない面もある。インターネット上では、正しい、正しくないは別として本音が言えているような気がする。
  • ○ インターネットとテレビでは情報の信頼性に違いがあるということを認識してくれていて安心した。

【ニュースについて】

  • ● どうすればもっとニュースを見るようになるか教えてほしい。
  • △ 特に朝のニュースでは要点をまとめて放送してほしい。
  • △ 夕方や夜のニュースでは学生が見やすいように工夫してほしい。
  • △ 今のままでいい。
  • △ 使用する語句を含め、もっと分かりやすく伝えてほしい。
  • ○ いかに分かりやすく伝えるかに注力しているが、実際にはどうしても高校生より上の年代を意識している面もある。
  • ○ 現在の『報道ステーション』の前身である『ニュースステーション』を立ち上げたときの目標が、「中学生でも分かるニュース」だった。しかし、まだまだ工夫の余地があるようだ。
  • ○ 最近のニュースで理解できないことはあるか。
  • △ 政治、マイナンバー制度、安全保障制度を含む憲法改正論議などが難しい。
  • ○ 高齢者などには配慮しているが、中高生をあまり意識した番組作りをしていないかもしれない。
  • ● 学生が自由に使える時間が少ないことが分かった。ニュースには簡潔さを求めているようだ。
  • ● 家族と一緒に番組を見ているという人が8割ほどいたのが驚きだった。
  • ○ テレビのニュースは「先生の話を聞いているようだ」との意見もあった。偉そうに言っているように思われているのだろうか。考えたい。
  • ● 取材にあたり、取材対象に無神経な行動をしていると感じることはあるか。
  • ○ 犯罪であれ事故であれ、被害者への取材はつらい。放送局の都合を優先して取材してしまうこともあることは否めない。
  • ○ ひとりひとりの記者がしっかりとした取材や対応をしていても、取材する放送局が多くなってしまうと過熱感が出てしまう。近年は各局で調整することもあるが、難しい課題だ。
  • ● 特ダネ争いはあるのか。
  • ○ 報道は、いわゆるやじうま根性に支えられている面もある。これが無理な取材が生じてしまう要素になっているとも言える。
  • ● 視聴者は特ダネ争いにはそれほど興味がないのではないか。
  • ○ 世の中の人が知らない大事なニュースや、隠されたニュースなどを発掘するきっかけになっている場合も多い。

【汐見委員長の言葉】

まず、第一線で番組を作っている放送局の人が、第一線で番組を見ている若い人たちと話をする機会を持てたことを感謝したい。
ラジオが私の予想よりも若い人たちに聴かれていなかったが、とてももったいないと思う。意見交換では、ネットは会話しているような雰囲気がいいとの意見が生徒からあったが、ラジオは品を保ちつつ会話しているように感じる媒体である。声と音だけで想像する喜びはラジオならではであり、暖かさが伝わってくる。ぜひ、ラジオを聴く機会を確保してほしい。
生徒のみなさんはインターネットと放送を上手に使い分けしているようだ。テレビやラジオは公共性を大事にしながら、たくさんの人が関わり、責任を持って放送している。インターネットは様々な個人の意見が出ているのだと理解して、これからも上手に使い分けてほしい。
これから、18歳で参政権を持つ時代になる。テレビのニュースを政治のことなどを議論するきっかけにも使ってほしい。海外の学生は政治について常に議論している。テレビを活用して、政治についてもバラエティー的に気楽に議論をしてほしい。
BPOは視聴者と放送局をつなぐ役割をしている。みなさんには、批判をするだけではなく、一緒にいい番組を作っていく応援団になってほしいと考えている。

以上