第172回–2015年7月28日
紙袋10個に1つだけ五寸釘 手のひらで押しつぶす"ロシアンルーレット"の深夜番組について討論…など
7月28日に第172回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、6月16日から7月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。そのほか、7月の中高生モニター報告、新規の調査研究、今後の予定について話し合いました。
なお、委員会の前に、在京7局の関係者14人と"インターネット情報の取り扱いについて"をテーマに意見交換会・勉強会を開催しました。【概要はこちら】
8月の委員会は休会とし、次回は9月29日に定例委員会と福岡地区の放送局との意見交換会を開催します。
議事の詳細
- 日時
- 2015年7月28日(火) 午後6時30分~午後8時40分
- 場所
- 放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 視聴者意見について
中高生モニター報告について
調査研究について
今後の予定について
その他
- 出席者
- 汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員
視聴者意見について
●「"ロシアンルーレット"と称して、1つにだけ五寸釘が隠されている10個の紙袋を、1つずつ手のひらで勢いよく上から押し潰していくという企画でした。番組は"本気・真剣勝負"とうたっており、もし失敗しても怪我をすることのないようトリックが用意されていたとしても、視聴者には分かりません。小中高生などが真似したり、いじめに発展したりすることが想像される内容です。次回予告によれば、更に過激度を増し、釘をナイフに換えて挑戦するとのことでした」との視聴者意見があった男性グループが出演する深夜のバラエティー番組について2週分を視聴した上で討論しました。なお2週目では「予定していた内容とは変更してお送りしております」のスーパーが入りナイフでの挑戦は無く、「先週は種も仕掛けもある純粋なマジック」との説明が有りました。委員からは次のような意見が出ました。
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見る人が見れば仕掛けがあることは想像つくが、1週目の番組内では一切説明がなかった。真に受けた子どもたちもいたのではないか。
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なぜマジックであることの説明を1週目の番組内でしなかったのだろう。
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「次週はナイフで挑戦」と予告していながら、次の週は内容を変更して放送していた。その理由が知りたい。
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ゲーム自体に大きな危険性をはらんでいる。この番組を見て真似をしたり、いじめの手段に使われたりするかもしれないことを制作者はどれだけ意識していたのだろうか。
討論の結果、当該放送局に資料の提出をお願いすることとし、次回の委員会で引き続き討論することにしました。
中高生モニター報告について
7月の中高生モニターは、「この1か月程の間に見た番組の感想(バラエティー・クイズ・音楽)」というテーマで書いてもらいました。今回は24人から報告がありました。
人気の音楽番組に対して複数の意見が集まりました。『ミュージックステーション』(テレビ朝日)…「何十年と続いている番組だけあって、学校でも話題に上がることが多く、毎週楽しみにしているのは私だけではないはずだ。この番組は毎回生放送という強みもある」(岩手・高校2年女子)。「私自身、また、家族や友人も毎週楽しみにしています。音楽は人の気持ちを動かす素晴らしいものだと思います。これからも、舞台演出などを含めて視聴者がより臨場感を楽しめる音楽番組の制作を楽しみにしています」(山梨・高校2年男子)。『THE MUSIC DAY』(日本テレビ)…「見ていてとても楽しく、家族と一緒に歌ったり、踊ったりのパーティー状態にまでなりました。この番組では、データ放送によってできるゲームやスタンプラリー、番組内のクイズなど盛りだくさんで、視聴者が飽きないよう工夫されていました」(兵庫・中学1年女子)。
バラエティー番組に関しても熱い支持が寄せられました。『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)…「この番組は様々なジャンルをまんべんなく紹介し、VTRやその後のトークも、短かすぎず長すぎずの丁度いい長さでバランスがいい番組だと思います。トークの内容も毎回笑い転げるほど面白く今までの番組で一番笑った番組です」(滋賀・高校2年女子)。『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)…「この番組は芸能人が様々な企画で無茶ぶりをする番組です。特に私は森三中の<温泉同好会>のコーナーが好きです。体当たりする内容が、最近のスタジオでしゃべってばっかりの企画より面白いです。この番組はいわゆる"寝技"が得意で、中味を考えている人がすごいと思います」(富山・中学1年男子)。
一方で批判も寄せられました。「バラエティー番組では今年度に入ってから雑学番組が乱立している感じがします。『林先生が驚く初耳学』(毎日放送)、『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』(テレビ朝日)、『この差って何ですか?』(TBSテレビ)など。ゴールデンの時間帯のものはあたりさわりのないテーマが多くなってしまい、興味を引くような中身にはなりえません」(東京・中学3年男子)。
自由記述欄は、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」というテーマを設定しました。「視聴者が参加できる番組がもっと増えてほしいと思います。いつも決まった芸能人だけでなく視聴者自身が参加できる方法として、データ放送だけでなく番組に直接参加し、みんなで番組を作り上げていくことができるといいと思います」(岐阜・高校2年男子)。「最近よく視聴率が高かった、低かったと報道していますが、そこまでして視聴率にこだわる必要があるのか疑問に感じます。大事なのは番組の内容ではないでしょうか」(滋賀・高校2年女子)。「NHKの朝ドラが『あまちゃん』以来、僕たちのような中高生にも人気です。でも最近気になるのは民放各局が"朝ドラ役者"に頼りすぎることです。朝ドラの放送が終わるとすぐにバラエティーやドラマにひっぱりだこになります。話題性だけでなく、もっと中身にこだわった民放ならではのテレビ番組を期待しています」(東京・中学3年男子)。
■中高生モニターの意見と委員の感想
●【委員の感想】バラエティー番組の"いじり"の行き過ぎを憂慮する意見が複数寄せられた。
- (兵庫・中学1年女子)最近、リアクション芸人などの"いじり"がきつい。ドッキリなどの企画では命に危険がある場合もあり「これはやりすぎだろ」と思ったことも多々あった。
- (千葉・中学2年女子)テレビを見ていて、先輩芸人が後輩芸人に対して明らかに嫌っている態度をしているのが見られました。裏ではあるかもしれませんが、それを表に出すのはどうかと思いました。
- (愛知・高校2年男子)『笑点』(日本テレビ/中京テレビ)大喜利の中でメンバーを中傷する発言や公平ではない評価が行われたりするのが、ある意味この番組の良さで、見ている方にも"愛のあるイジメ"であることが伝わってくるのだけれど、初めて見る人には不快感を持たせるのかもしれない。ネタとして扱った後の事後処理やフォローをきちんとしてほしい。それが番組の印象向上につながると思うし子どもも気持ちよく見られるはずだ。
●【委員の感想】家族みんなで見られる番組を支持している意見が散見した。
- (神奈川・中学2年男子)『水曜歌謡祭』(フジテレビ)昔活躍していたアーティストと現役アーティストとの融合が素晴らしい。平成生まれの私には昭和の歌が大変興味深く、歌詞のギャップも刺激がある。老若男女、家族で見たい番組だ。
- (埼玉・中学2年女子)『ミュージックステーション』(テレビ朝日)最新の曲だけでなくいろんなテーマで昔の曲も紹介するので、母が私に曲を説明してくれたり、懐かしそうに口ずさんだりして会話が弾む。年齢が違う家族で見ても、全員が楽しめるのでいつも家族で見ている。
●【委員の感想】自由記述欄で、制作現場では当たり前に行われていることに問題意識をもつモニターがいた。
- (鹿児島・中学3年女子)ワイドショーで同じ内容を何度も放送し過ぎるのはどうかと思う。同じ映像、同じナレーション、同じテロップ。どの局でも、どの番組でも似たような内容だと飽きてしまうので、同じニュースでも違う映像にするなどの工夫をしてほしい。
- (神奈川・高校1年女子)今度始まるドラマの『デスノート』(日本テレビ)で登場人物の設定が原作と全く違うと聞いてとても不思議に思った。この番組は前に映画化されて、とても人気があったので、何でまたドラマ化するのかと疑問を抱いていたが、設定まで変えてしまうのは間違っていると思う。
●【委員の感想】人気番組を強く支持しながら一方で問題点を鋭く指摘している報告があった。
- (愛知・高校1年男子)『月曜から夜ふかし』(日本テレビ/中京テレビ)番組内の面白い"いじり"が癖になります。しかし、同じ人を何度も出演させて(スタジオだけでなく、VTR内やロケ場面などで)しまうことが多々あり、やめてほしいと思う。飽きがくるし一種の思考停止だ、とも思うからだ。もっと考えたキャスティングが必要だと思う。
調査研究について
- 調査担当の菅原委員の提案を基に、今後の調査について話し合いました。
今後の予定について
- 9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、「子どもが関わる事件・事故における放送上の配慮」「インターネット情報の取り扱いについて」などを中心テーマに話し合うことにしました。
- 10月30日に立命館守山中学校・高等学校(滋賀県守山市)で開催する高校生と青少年委員会委員と放送局の三者による意見交換会について、準備状況の報告が事務局からありました。この意見交換会は、青少年が視聴する番組の向上に資するため、青少年のテレビ・ラジオに対する日頃からの思いを放送局関係者や委員に直接話してもらおうという初の試みです。
その他
- 7月3日に愛媛県松山市で開催した意見交換会について、報告がありました。【概要はこちら】