青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第170回

第170回–2015年5月26日

ネットの"キス動画"を紹介した番組について討論、審議入りせず…など

5月26日に第170回青少年委員会を、BPO第1会議室で開催しました。7人の委員全員が出席しました。まず、4月16日から5月15日までに寄せられた視聴者意見から、1案件について討論しました。そのほか、5月の中高生モニター報告、新規の調査研究について、今後の予定について話し合いました。
次回は6月23日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2015年5月26日(火) 午後4時30分~午後7時50分
場所
放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
汐見稔幸委員長、最相葉月副委員長、稲増龍夫委員、大平健委員、川端裕人委員、菅原ますみ委員、緑川由香委員

視聴者意見について

●「日曜夜の情報番組で、中高生の間で、キス動画をネット上に公開することが人気を集めているという話題を取り上げていたが、ネットの怖さや問題点に深く触れることなく興味本位に扱った内容で、未成年への悪影響が心配だ」などの視聴者意見があった番組について、全委員が番組を視聴した上で討論しました。
委員からは次のような意見が出ました。

  • 若い人たちの生態を好意的に紹介しようと思ったのだろうが、興味本位に流れていて、映像を公開することの危険性など、ネットリテラシー的視点が欠けている中で番組を作っているのが問題だ。映像もしつこく不愉快なコーナーであると感じた。
  • 映像をアップした後、ずっと残ってしまうなどの問題にあまり触れられていないのが気になった。若者たちはテレビを信頼しているので、この放送を見てアップ数が増えるのが心配だ。番組を作る側の良識を問いたい。
  • ネットについてあまりに無知で無防備だと思った。映像のアップに対する危険性を伝えないで放送することにより、さらに危険が拡散することに思いが至らないのだろうか。ネットの世界が、使い方によってはどれほどの恐ろしさを秘めているか、親の世代も認識できていないのではないか。
  • 投稿した女性の父親が映像を見て理解を示すシーンがあったが、カメラで収録している前では、なかなか本音は言えないものだ。世の中の父親はあれだけ理解を示すだろうか。
  • 世の中の一部の変わった部分を拡大して見せているだけで、なぜこれを紹介する必要があるのかが説明されていない。
  • 例えば、「NHK放送ガイドライン 2015」の"6.インターネット"には「インターネットの世界には、さまざまなリスクや問題も潜んでいる。いったんネット上に情報が流出すれば、複製されて一気に広がり、不適切な内容や誤った情報であっても完全に消すことはできない。こうしたインターネットの特性を十分に理解したうえで利用しなければならない」とあるが、投稿した若者がそこまで理解しているとは思えないし、制作側もあまりに無邪気に作ってしまっているのではないか。
  • 動画投稿する若者は、自己承認欲求が満たされるのだろうが、リスクをどれだけ認識しているのか。ああいった行動に出る若者はごく一部で、それが若者を代表する姿ではない。
  • このコーナーはコンテンツをネットに求めていて、ネット動画ありきで構成されている。テレビの作り方が逆転している。

討論の結果、審議入りについて全員一致の判断には至らず、この件に関して審議に入らないことにしました。しかし汐見委員長は「公共性の強い放送局のあり方として、ネット情報の取り扱いについてどのような問題があるのか、放送局の人たちと一緒に話し合ってみたい」と述べ、近いうちに勉強会を開きたい意向を示しました。

中高生モニター報告について

5月の中高生モニターは、「最近見た番組の感想(報道・情報・ドキュメンタリー)」というテーマでリポートを書いてもらいました。今回は29人から報告がありました。
毎日見ている情報番組に対する賛辞がたくさん寄せられました。『ZIP!』(日本テレビ)。「この番組を見たら元気が出て今日も頑張ろうという気持ちになる。面白いコーナーがいっぱいあるし、学校で友達とその日の放送について話すことができるからだ」(宮崎・高校1年女子)。『す・またん!』(読売テレビ)。「とてもゆるい会話のやりとりが、朝のせわしい感じとかけ離れていてほっこりします。わかりやすい解説が聞けるので、新聞を読まなくても情報がとれます。このゆる~い番組がもっとゆる~く続いてほしいです」(兵庫・中学1年女子)。ドキュメンタリーに関する報告も多くありました。『クローズアップ現代』(NHK)。「毎回取り上げる問題の要因をあらゆる面から見られるのが好きなところです。ピックアップされる問題が高校生の私にも、親の世代にも、興味が持てるような内容なのでいつも家族で自分の考えを言い合いながら見ています。選挙権が18歳からになるので、このように家族で社会問題を共有できる番組が増えたらいいなと思います」(神奈川・高校2年女子)。『情熱大陸』(毎日放送)。「番組の構成が、そのジャンルについて何も知らない人でも分かるように工夫されている。また、その道を極めた人にかなり長い期間にわたり密着しているので、とても内容の濃い30分だと思った」(埼玉・中学3年男子)。『歴史秘話ヒストリア』(NHK)。「再現ドラマが分かりやすく、扱っているテーマの知名度も高いため、多くの人が楽しめると思う。この番組は歴史の"根拠"がしっかり放送されている。歴史に限らず情報を伝えることを目的としたジャンルの番組では、根拠をしっかりと確認し、根拠と共にその情報を伝えてほしい」(岐阜・高校2年男子)。報道番組に対しての提言がありました。『週刊ニュース深読み』(NHK)。「若者は報道番組に対して真面目とか、つまらないというイメージを強く持っている人が多いようだ。若い世代も参加しやすく、分かりやすく、見ていて興味を持つことができる報道があれば、若者の社会に対する意識は向上するのではないか。この番組をはじめ報道番組には、もっと若い世代に見てもらえるような工夫をしてほしいと思う」(愛知・高校2年男子)。
<自由記述欄>では、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」と依頼しました。英語の勉強を目的にラジオやテレビの英語番組に接しているモニターが複数いました。『基礎英語』(NHKラジオ第2放送)。「中学生になってから英語のラジオを聞き始めました。15分の短い時間だから忙しくても簡単に聞けるし、発音練習や書く練習をするので楽しく勉強ができます」(東京・中学1年女子)。『ワールドニュース』(NHK  BS1)。「日本だけでなく他国のニュースが見られるところ、日本語の吹き替えも合わせて聞けるところが良い。NHKならではの番組だと思うので、これからも是非続けてほしい」(滋賀・高校2年女子)。

■中高生モニターの意見と委員の感想

●【委員の感想】中高生ながら、しっかりした意見を述べている報告が目立った。番組内容について様々な危惧を中高生なりに抱いていることを制作現場は意識してほしい。

  • (富山・中学1年男子)『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ/富山テレビ)の中のデブエットというコーナーで、映画の宣伝をしたいタレントに無理やり食べさせ続ける内容がありました。この番組に限らず、バラエティーは下品でくだらない番組が多くゲストに対して失礼な扱いをしています。MCにも、ちゃんと勉強して作法を分かっていて正しい日本語が話せる人を起用してください。
  • (千葉・中学3年女子)『ヒルナンデス』(日本テレビ)には幅広い年代の人が楽しめるコーナーや企画が多く、内容も充実し、昼休みにふさわしいくつろぎながら見られる構成だ。しかし、東京近郊の店に関する「食レポ」が多すぎる。全国放送なのだから、もっと全国各地のグルメを紹介すべきではないか。

●【委員の感想】家族が一緒に見て時間を共有する手段としてのテレビの役割を強調している報告があった。

  • (兵庫・中学2年女子)家でテレビを家族みんなで見る機会が減ってきています。でも私は番組の内容について父や母の意見も聞きたいです。なので、私は家族みんなで見ることができる番組が増えるといいなと思っています。

●【委員の感想】テレビ番組には純粋に真実を教えてほしい、偏らない報道をしてほしいと訴えている報告があった。

  • (神奈川・中学1年女子)報道番組での「やらせ」を疑わせる出来事がニュースで取り上げられていました。色々なことを発信するテレビには、嘘でなく本当のことを知らせてほしいと思いました。私だったら、まだ子どもなのですべてのことを信じてしまいそうです。
  • (滋賀・高校2年女子)最近、ニュースの報じ方が偏っているように感じます。黙々と政府が行っていることを紹介していてそのことに対する反論があまりなく、まるで政府の言いなりになっているように見えます。もう一度報道のありかたを見直すべきだと思います。

●【委員の感想】手早く簡単にわかりやすい情報をとりたい、と述べているモニターが複数いた。

  • (東京・中学3年男子)私はTBSの情報番組が好きでよく見ています。なぜなら誰にでもわかりやすくかつ政治的や思想的に偏りなく伝える努力をしているからです。『Nスタ』(TBSテレビ)のコーナー「3コマ・ニュース」はその代表です。3コマのパネルにまとめることでコンパクトに最新のニュースが把握できていいと思います。

●【委員の感想】自由記述欄に鋭い指摘が多く見られた。

  • (埼玉・高校1年男子)最近様々なジャンルの番組が全部トーク番組に近づいているように思う。野球を見たくて見る野球中継で、解説者の解説よりジャニーズの人の思い出話の方が長いとか、音楽番組なのに歌手がほとんど歌わないとか、旅番組で美しい景色が見たいのにタレントのおしゃべりばかりとか、それぞれの番組が全部トーク番組に近づいている気がして違和感がある。

調査研究について

  • 2014年度の「中高生の生活とテレビに関する調査」について、報告書の完成はデータ部分の微調整があり6月初旬になると事務局から報告がありました。

  • 調査担当の菅原委員から、今後の調査の企画、目的、仮説の立て方や実施方法、結果の発信方法についての提案があり、制作者と青少年をつなぐ視点の調査や、中高生モニターを含めた調査などについて意見を交わしました。

今後の予定について

  • 7月3日に愛媛県松山市で開催する意見交換会について、事前打ち合わせの概要が事務局から報告されました。9月29日に福岡市で開催する意見交換会について、また中高生との意見交換会についての準備状況が報告されました。

その他

  • 「青少年へのおすすめ番組」の活用について、汐見委員長から提案がありました。

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