放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第92回

第92回–2015年4月

"出家詐欺"報道で「やらせ」疑惑が持たれているNHK総合の『クローズアップ現代』を討議…など

第92回放送倫理検証委員会は4月10日に開催された。
冒頭、BPO規約25条に従い、川端委員長が、退任した小町谷委員長代行の後任に升味委員を指名した。また、新たに中野委員が就任した。
"出家詐欺"の追跡報道をめぐって「やらせ」疑惑が持たれているNHK総合の『クローズアップ現代』について、当該局から報告書が提出され意見交換を行った。しかし、この報告書は「中間報告」であり、さらに調査を進めたうえで、まとまり次第最終報告をするということなので、それを待って本格的な議論をすることになった。

議事の詳細

日時
2015年4月10日(金)午後5時~7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、香山委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1."出家詐欺"の追跡報道をめぐって「やらせ」疑惑が持たれている、NHK総合の『クローズアップ現代』を討議

NHK総合の『クローズアップ現代』で2014年5月14日に放送された「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」は、寺で出家の儀式「得度」を受けると戸籍の下の名前を法名に変更できることを悪用して別人を装い、金融機関から融資をだまし取るケースが広がっていると紹介した。
番組では、宗教関係者や行政の担当者が対応に苦慮していることや、実際に「ブローカー」と「多重債務者」が相談している隠し撮りの現場などが紹介されたが、その「ブローカー」と「多重債務者」の相談シーンは「やらせ取材」だったと、ことし3月、週刊誌が告発した。
NHKは、放送で「ブローカー」とされた人物が「自分はブローカーではない」などと主張しているため、調査チームが記者や「ブローカー」「多重債務者」への聴き取りを行い、委員会に報告書を提出した。しかし、この報告書の内容は、これまでの聴き取り等の状況や検証のポイントをまとめた「中間報告」的なものであり、NHKは、副会長を委員長とし、3人の外部委員も加えた調査委員会を設置して、「やらせ」の有無、取材制作の進め方、表現の適切さなどについて調査したうえで、最終的な「調査報告書」をとりまとめて公表するという。
委員会では、NHKの最終報告書の提出を待って本格的な議論をすることになった。

【委員の主な意見】

  • 当該番組を視聴し、提出された報告書を読んだだけでも、放送倫理違反ではないかと感じられるところがあった。

  • 問題の場面は、映像も音声も処理されているが、調査報道は、モザイクの後ろに真実があると視聴者に信じてもらえるものでなければならないのではないのか。

  • もともと記者と「多重債務者」が知り合いだとすれば、記者が「多重債務者」を追いかけてインタビューするというのは、過剰演出や虚偽ではないのか。

  • 記者が2人にだまされた可能性もないとは言えないので、慎重できちんとした事実認定が不可欠だろう。

  • この放送の1か月前に、関西ローカルで放送された同じテーマの番組についても、その内容を見たいので、DVD映像と報告書を要請してほしい。

  • 当該局としては、これまでにないほどの態勢で迅速に調査をして、その結果を公表すると言っているのだから、まずはその結果を見て、委員会としてどのように臨むかを決めればいいのではないか。

  • 本当に「ブローカー」だったのかが問題になっているようだが、取材のディテールそのものに放送倫理上の問題が潜んでいるようにも思われるし、制作段階でどのようなチェックが行われていたかも、明確にしてほしい。

以上