放送人権委員会

放送人権委員会 委員会決定

2015年度 第54号

「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)に関する委員会決定

2015年4月14日 放送局:TBSラジオ&コミュニケーションズ

見解:問題なし
TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』のオープニングトークで、お笑いタレント「おぎやはぎ」が、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通信アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯など一連の事態について語った。これに対し、山本府議が番組での「思いついたことはキモイだね。完全に」などの発言は「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」として申し立てたもの。
放送人権委員会は審理の結果、4月14日に「委員会決定」を通知・公表し、「見解」として本件放送は申立人の名誉を毀損したり名誉感情を侵害するものではなく、取り上げるべき放送倫理上の問題もないとの判断を示した。

【決定の概要】

本件申立ては、TBSラジオ&コミュニケーションズ(以下「TBSラジオ」という)が2014年8月22日(金)に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』で、お笑いタレント「おぎやはぎ」が展開したオープニングトークでの発言を対象としたものである。このトークでは、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員(以下「申立人」という)が無料通信アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった経緯や、それに関連してテレビの情報番組でコメンテーターが「こいつキモイもん」と発言したことに対し申立人が放送人権委員会に人権侵害であると申し立てた一連の事態について語られた。
本事案は、おぎやはぎの小木氏らが「思いついたことはキモイだね。完全に」などと発言したことに対して申立人が「全人格を否定し侮辱罪にあたる可能性が高い」等として放送人権委員会に申し立てたもの。
委員会は申立てを受けて審理し、決定に至った。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送における「キモイ」等の発言は、申立人の社会的評価を低下させ、申立人の名誉感情に不快の念を覚えさせる論評である。しかし、その種の論評であっても、公共の利害に関わる事項について公益を図る目的でなされたものであるときは、表現の自由の行使として尊重されるべきものであり、論評の基礎となった事実の主要な点に誤りがなく、人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱したものでない限り、その論評は権利侵害として評価されるべきではない。
本件放送が論評の対象とした事象は、府議会議員である申立人自身が議員活動の一環として行っていたと説明している、中学生とのLINEでのやりとりと、テレビの情報番組内でのコメントに対する放送人権委員会への申立てである。これらの事象について、その議員に対する評価を含めて論評することは、市民の正当な関心事にこたえるものであり、本件放送には、公共性・公益性がある。これに対して、本件放送の論評によって新たに申立人の社会的評価の低下があったとしても、それはわずかなものと考えられる。
また、本件放送は申立人の名誉感情に不快の念を持たせるものではあるが、「キモイ」という言葉は、申立人と中学生のLINEでのやりとりの中で中学生が使った言葉として、本件放送の題材におけるキーワードの一つでもあり、本件放送は申立人の人格をことさら誹謗中傷するものとまではいえない。
以上に鑑みれば、本件放送は、地方議会議員の行動に関わる事実に対する論評として公共性・公益性が認められ、他方で本件放送による社会的評価の低下や名誉感情の不快の念の程度を考慮すると、本件放送の論評については、申立人は地方議会議員として、これを受忍すべきものと考える。
また、申立人は、2014年8月に申立人の中学生グループとのやりとりが報道されるようになったのは、同年9月に実施された交野市長選挙にかかわる政治的背景があったと主張するが、その主張と本件放送による人権侵害の有無の問題は関係を持たない。また、本件放送のタイミングにも特段の不自然さはないため、放送倫理上の問題もない。
なお、「キモイ」という言葉は、それが使われる相手や場面によっては、相手の人格を傷つけ、深いダメージを与えうるものであるが、委員会は、これを無限定に使うことを是とするものではないことを付言する

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2015年4月14日 第54号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第54号

申立人
山本 景
被申立人
株式会社TBSラジオ&コミュニケーションズ
苦情の対象となった番組
『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』
放送日時
2014年8月22日(金)午前1時00分~3時00分
(本件放送は冒頭の約7分)

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件放送の内容と申立人の名誉・名誉感情の侵害の有無について
    • (1) 問題の所在
    • (2) 本件放送の論評の対象と地方議会議員の名誉権、名誉感情
    • (3) 本件放送と権利侵害の有無
    • (4) 小括
  • 2.本件放送と市長選との関係について

III.結論

補足意見

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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2015年4月14日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、4月14日午後1時からBPO会議室で行われ、申立人本人と放送局側(被申立人)に対して委員会決定を通知した。
その後、午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、「委員会決定」を公表した。報道関係者は23社46人が取材し、テレビカメラ5台が入った。
詳細はこちら。

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの