青少年委員会

青少年委員会 意見交換会

2013年10月4日

意見交換会(札幌)概要

BPO・放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)は、「視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての機能」を果たす役割を担っています。今回その活動の一環として、札幌地区の放送局との相互理解を深め番組向上に役立てるため、10月4日に北海道放送会議室で意見交換会を行いました。参加したのは、青少年委員会から、加藤理副委員長(東京成徳大学教授)と渡邊淳子委員(弁護士)、放送局側からは、NHKと、札幌に拠点を置く北海道放送・札幌テレビ放送・北海道テレビ放送・テレビ北海道・北海道文化放送・STVラジオの7社からプロデューサー、ディレクター、広報関係者など43人です。
まず青少年委員会から、これまでに公表した「見解」などを説明し、続いて番組制作上の悩み、現場での課題等について意見交換しました。

意見交換の内容

  • 【委員】子どもにかかわる事件で、遺体で発見された中学生のいたましい様子を初めは赤裸々に報道したものの、その後詳しい表現を控えた。報道する際の表現方法に配慮はしているのか?
  • 【放送局側】当然人権に配慮することを常に念頭におきつつ報道しているが、やはり犯罪報道には情報を明らかにする使命があり、それは犯人逮捕につながることもあると思われる。
  • 【委員】少年事件を担当している弁護士の立場から言えば、報道現場は、いじめで自殺した子の友達にインタビューをしても、モザイクをかければいいじゃないか、という安易な考え方をしているように思う。撮れるものは撮ろうというような「いけいけどんどん」的なエスカレートした報道が多いのではないか。
  • 【放送局側】詳細情報を視聴者に伝えるという報道の原点を守ったものではあるが、常日頃から、人権の問題と報道の使命のせめぎあいの中で現場は苦しみつつ、悩みつつ、報道に向きあっているのが現状である。
  • 【委員】「暴風雪で父親をなくした少女」(注1)の報道に関して、直接被害者少女へのインタビューなしでは、事件が報道できなかったのか、疑問に思う。
  • 【放送局側】
    • 子どもの人権への配慮と必要な情報をとりたいという狭間で現場の記者は日々悩んでいる。
    • 少女への社会的同情が集まり、保護者からお礼を言いたいという申し出があったため取材した。
    • 現場で取材した記者は長い時間をかけて当事者の少女の信頼を受けるようになり、その記者になら答えていいということで対応してくれた。取材者と取材される側の信頼関係が重要と思う。
    • この暴風雪の報道を受けて、気象台でも天候に関する警報を「外出を避けてください」という強い文言を使うようになり、通信会社も消防からの要請があれば、携帯のGPS位置情報を教えるという体制が整うなど、その後の類似被害を防ぐ防災体制整備にこの報道が役に立った。
  • 【委員】子どもがたとえ事件直後にハイテンションになってインタビューに答えたとしても、その後極端にパニックに陥ることがあるので、やはり、子どもへのインタビューには賛成できない。また、少年犯罪で、すでに拘束された加害者の防犯カメラ映像が公開され、モザイクをかけてもかばんやスニーカーから個人が特定できる可能性があった事例について、その少年の更生のためには、既に身柄を確保された少年の映像を放送する必要性があったのか、疑問に思う。
  • 【放送局側】
    • 報道する側の立場として必要な情報を視聴者に提供する意味では、人権に配慮することは当然考えても、伝えるべきことは伝える姿勢は保っていきたい。
    • 入社4年目ではあるが、報道取材の現場で、いつも考え、悩みながら、日々、取材を行っている。

まとめ

「意見交換会」は、青少年委員会の活動の理解促進と、委員が制作現場の生の意見を聞くことを目的の一つにしています。閉会にあたって加藤副委員長は、「本日は忌憚のない意見が聞け、現場の悩みも率直に話していただいたと思う。我々委員も、取材の現場の状況や、取材側の立場や日々の葛藤を直接お聞きできて、大変勉強になった。今後とも積極的にこういう機会を持ちたい」と2時間半ほどにわたる意見交換会をしめくくりました。

(注1)
2013年3月2日から3日にかけて、北海道や東北を暴風雪が襲い、あわせて9人の命が奪われた。紋別郡湧別町では53歳の父親が9歳の長女を守って凍死した。2日の午後4時ころ、父親は親戚に電話をかけ、「燃料が少なくなってきた。近くの知人宅へ避難する。先方に、そう伝えておいてほしい」と頼んできたという。父親は地吹雪の中、娘を連れて歩いて知人宅を目指したが、途中で激しい地吹雪に行く手を阻まれた。発見された時、父親は娘を風から守るように、娘に覆いかぶさった状態で亡くなっていたという。娘は、奇跡的に無事だった。少女は、その後、『吹雪に襲われた時の様子』、『父親への思い』、『現在の心境』、などについて、各放送局のインタビューを受け、その内容が全国に放送された。

以上