放送人権委員会

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2014年12月16日

「大喜利・バラエティー番組への申立て」審理入り決定

放送人権委員会は12月16日の第215回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、フジテレビジョンが2014年5月24日に放送した大喜利・バラエティー番組『IPPONグランプリ』。番組では冒頭、「幻想音楽家 田村河内さんの隠し事を教えてください」という「お題」を出し、出演したお笑い芸人たちが次々に回答する模様を放送した。
この放送に対し、かつて「全聾の作曲家」として話題を呼び、その後楽曲が別人による代作だったことを認めて謝罪した佐村河内守氏が11月4日付で申立書を委員会に提出。お笑い芸人から、申立人の身体的特徴や生理的特徴(聴覚障害)および音楽的才能を揶揄する回答が出され、「一音楽家であったにすぎない申立人を『お笑いのネタ』として、一般視聴者を巻き込んで笑い物にするもので、申立人の名誉感情を侵害する侮辱に当たることが明らか」として、当該番組内での謝罪を求めた。
また申立書は「本件番組の内容は、一個人への侮辱にとどまらず、現代社会に蔓延する『児童・青少年に対する集団いじめ』を容認・助長するおそれがある点で、非常に重大な放送倫理上の問題点を含んでいる。特に、本件番組が申立人の心情はもちろんのこと、同じく聴覚その他の障害を背負って生活している多くの人々の心情をも踏みにじることになるのであり、非常に悪質である」と訴えた。
これに対しフジテレビは11月28日に「経緯と見解」書面を委員会に提出し、本件出題が申立人を想定したものであることを認めたうえで、「大喜利という回答者の知的な発想力を求めるコーナーの1つの出題として取り扱うこと自体が申立人を侮辱し、名誉感情を著しく侵害することなどあり得ない」と主張。また、「自らの楽曲として(髪型を含めた独自の装いを演出して)公表しながら、実際には第三者の創作による部分が極めて大きいものであったことに関して申立人が社会的に批判されることは、やむを得ないことであり、且つ、表現行為として許容(保障)されるべきである」と述べている。
さらに同局は、「児童・青少年への影響を問題視するのであれば、障害の程度を過剰に演出し、なおかつ、別人の作曲であるにもかかわらず自分自身の作曲として公表していたことこそ問題視されるべきである」と、申立人の主張に反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。