第164回–2014年11月25日
「深夜番組とは言え"限度"を超えている」と意見があった音楽バラエティー番組は継続討論に…など
第164回青少年委員会を、11月25日に7人の委員全員が出席してBPO第1会議室で開催しました。10月16日から11月15日までに寄せられた視聴者意見から、2案件について討論しました。その他、11月の中高生モニター報告、調査研究の現状報告、当日委員会後開催の在京放送局との意見交換会・勉強会、2015年2月の山梨での意見交換会などについて話し合いました。
次回は12月16日に定例委員会を開催します。
議事の詳細
- 日時
- 2014年11月25日(火) 午後2時00分~午後4時00分
- 場所
- 放送倫理・番組向上機構 [BPO] 第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 視聴者意見について
中高生モニター報告について
調査・研究について
在京局担当者との「意見交換会・勉強会」について
今後の予定について
その他
- 出席者
- 汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員
視聴者意見について
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「ゴキブリの交尾の模様をAV俳優に演じさせた映像を流していた。深夜の放送ではあるが下品この上ない」などの視聴者意見があった近畿圏で深夜に放送されたローカル番組について、委員が3回分の放送を視聴した上で討論しました。委員からは、「深夜枠でのチャレンジングな企画だろうが、AV俳優を使った映像など、切り口が上品さに欠けている」「下ネタ、わい談が多く品がない。制作者は自社の番組基準を意識しながらギリギリの線で作っているのだろうが、少しも面白いとは感じなかった」「番組基準ギリギリの線で作れば見てくれると誤解しているのではないか」という意見がありました。また「性的な表現については見る側の主観的要素がかなり関わってくる。判断の難しいところだ」「視聴者からの反応はそれほど多くなかった。視聴者は時間帯を考えて見ているのではないか」「意図的に裸を見せているのではないので嫌悪感はなかった」「深夜帯の性的表現については委員会のテーマとして考える必要があるが、この番組そのものを特に取り上げる必要はない」などの意見が出て、結局審議入りしないことにしました。しかし「過剰な表現によってテレビの信頼性が損なわれてしまうことを危惧する」という意見があったことを付け加えることにしました。
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「若手男性芸人が裸で抱き合ったりわいせつな行為を繰り返していた。深夜番組とはいえ"限度"を超えている」などの視聴者意見があった関東圏の独立局などで深夜に放送している音楽バラエティー番組について、委員が2回分の放送を視聴した上で討論しました。委員からは「男同士の悪ふざけで、特に何も感じなかった」という意見もありましたが、「こういった映像を流して何が面白いのだろうか。番組の意図が分からない」「男同士でかなり不快な行為を行っている。別の部屋では女性二人がモニターで修正のない映像を見ている。ある種のセクハラではないか。悪ふざけの範囲を超えていて許容できない」「ロックな音楽バラエティーと称していて、異色な音楽番組で面白いと思って見ていたが"ロックな入浴"はロックがなめられている気がして残念だ」「映像表現が下劣、下品だ。別の部屋で見ている女性の反応を見て楽しむというのはハラスメント的要素がある」などの意見があり、"ロックな入浴"の残り2回分とそれ以外の放送分も視聴した上で、次回も引き続き討論することにしました。
中高生モニター報告について
11月の中高生モニターは、「この1か月程の間に見た番組(ドラマ・アニメ)の感想」というテーマで書いてもらいました。今回は22人から報告がありました。
いくつかの人気のドラマ番組に対して、意見が集中して寄せられました。まず、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)「非常に面白いドラマであるが、同時に訴えかけてくるメッセージに影響される人が多いので、視聴率が高いのだろうなと思った」(東京・中学3年男子)、「このドラマの主人公は、自ら厳しい環境で経験を積んだことによって個の力を手に入れたと思うので、僕も何事にも主体的に取り組んで経験を積んでいきたいと思います」(沖縄・中学2年男子)など、自分自身の生き方と比べて考えさせられるという意見が多く見られました。『ごめんね青春!』(TBSテレビ)については、「毎回とても元気をもらっています。面白いだけでなく、感動シーンも多くあり、自分の生活や考え方を見直すことがあります。このように、明日も頑張ろう!と思えるドラマがもっと増えたら良いのになと思います」(宮崎・高校2年女子)、「脚本の宮藤さんは三島市出身ではないのに地元でしか知らないことも、よく調べあげていて、すごいと思います。これからも、テレビは、地方を舞台にした魅力ある内容のドラマを作り、その地方について教えてほしいです」(神奈川・高校1年女子)など、中高生に強い人気があることが分かります。『相棒』(テレビ朝日)に関しては「今回のseason13は、前のseason12よりパワーアップしてさらに面白くなりました。これからも楽しい『相棒』に期待しています」(宮城・中学2年男子)、「この番組を再放送することが多いが、昔のもの、season1とかいい話ばっかりだ。最近の話でなく昔のものも再放送してほしい」(愛媛・高校2年男子)などの意見が寄せられました。
アニメ番組に関しては強く支持する意見が複数ありました。『七つの大罪』(毎日放送)「このアニメは、映像が他のアニメと違い独特な世界観を出しています。一度見ただけでとても印象に残ります。また、次週も見させる工夫をうまく考えていて、自分もその作戦にまんまと引っかかっていると思うと悔しいです」(東京・高校2年男子)。『団地ともお』(NHK)「ともおたちがやること、話すことに共感できます。視聴者がその番組に共感できることは良いと思います。また、主役のともおは、小さい命も大切にする人で、考えさせられるアニメです」(神奈川・中学1年男子)。『寄生獣 セイの格率』(日本テレビ)「原作漫画と差があるのでは、と心配でしたが、いざ見てみるとあまり違和感はなく、自分は人なのか化け物なのかといった主人公の苦悩が丹念に描かれていてとても面白いです。特に規制表現も入らず、見ていてとても引き込まれます。物語は中盤に入ったころなので、今後の展開が楽しみです」(東京・中学3年男子)。
■中高生モニターの意見と委員の感想
●【委員の感想】中高生は、自分の好きなコミックがテレビでどう展開され、演出されるか強く期待と興味を持っているようだ。
- (広島・中学2年女子)『ワンピース』(フジテレビ/テレビ新広島)アニメになるとコミックより、動きや会話が分かりやすくなる。主人公が常に仲間と一緒に協力して強い敵を倒していったり、生きていくのに苦しまない人間はいないということもよく表現できていて良いと思った。
- (岡山・高校1年女子)『きょうは会社休みます。』(日本テレビ/西日本放送)漫画ファンにとっては実写化されたドラマの内容がどれだけ原作と変わっているか、誰がどの役をしているのかは本当に大切なところだ。このドラマの人気が出るのも、キャストや演出が良いからだと思う。
●【委員の感想】テレビ番組に関して、評論家さながら、鋭い視点を持って評価している報告があった。
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(東京・高校2年女子)『世にも奇妙な物語’14秋の特別編』(フジテレビ)今回のドラマはどれも斬新かつ印象的で、ラストまで目が離せなかった。まず、5本のオムニバスドラマ+5本の超短編という構成が良い。間延び感が全くなかった。超短編には数分ながらスパイスの効いたアイディアが光っていた。また、結末もハッピーエンドとバッドエンドが半々だったため、視聴者側に判断が委ねられ、おしつけがましくなく良かった。
●【委員の感想】本編と予告の内容の乖離に疑問を述べたモニターがいた。
- (青森・中学1年女子)次回予告はどのドラマもうまく作られていますが、実際に番組を見ると映像や音声が異なっていることがあります。それはやって良いことなのですか?期待と異なりがっかりしてしまいます。
●【委員の感想】身構えず、のんびり楽しく安心してドラマを見たい、また学校での話題作りとしてドラマを見ている、という意見が散見した。
- (滋賀・中学1年女子)『ごめんね青春!』(TBSテレビ/毎日放送)中学生にとっては、理想郷のような学園生活が描かれていて、いつも学校ではその話で盛り上がっています。金持ちとか、不登校の子がいない、ごくごく普通な生徒の話で気軽に見られます。閉塞感が漂うこともないので、良いと思います。
- (東京・中学2年女子)『今日は会社休みます。』(日本テレビ)主人公が30代ということで私たちより年上ですが、多くの胸キュンシーンがあり、友達と毎回盛り上がります。『素敵な選TAXI』(関西テレビ/フジテレビ)も、1話完結で毎回スッキリして終わるので見やすいです。現実ではありえないストーリーが多いのですが、夢を見させてくれるところが良と思います。
●【委員の感想】自由記述欄を読むと、中高生はスタジオセットなど番組演出の細かい点をいろいろよく見ているなと感心した。
- (佐賀・中学1年女子)番組でVTRが流れているときに、小さい画面で出演者の顔が出てくるのが嫌だなと思います。わざとらしく驚いたり、無理に笑ったり、映された瞬間作った顔になるので、嫌な気持になります。気になってVTRに集中できません。
- (宮崎・高校2年女子)最近少し気になるのが、バラエティーなどのスタジオがカラフルすぎて見ていて目が疲れるということです。例えば『VS嵐』(フジテレビ/テレビ宮崎)はとても好きな番組なのですが、見続けられません。両親も目が疲れると言います。若者以外の視聴者がバラエティー離れをしないよう、是非スタジオの雰囲気について考えてほしいです。
調査・研究について
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「中高生の生活とテレビに関する調査(仮)」について、中高生のアンケート調査の集計作業が終了し、担当の萩原委員から鋭意分析作業を進めているとの報告がありました。
在京局担当者との「意見交換会・勉強会」について
- 委員会のあと開催される、NHKを含めた在京7局の報道関係者との「意見交換会・勉強会」について担当の渡邊委員から説明がありました。
(「意見交換会・勉強会」の概要は、下記掲載)
今後の予定について
- 2015年2月の山梨での意見交換会の準備状況が事務局から報告されました。
- 北陸地方で放送されている青少年向け番組の視察に小田桐委員が行くことに関して、準備状況が事務局から報告されました。
その他
- 「青少年へのおすすめ番組」から、山梨放送制作『おいでよ!あおぞら共和国』、岩手朝日テレビ制作『ある母親の決意~震災の教訓を後世に~』、新潟テレビ21制作『UX報道スペシャル 中越地震から10年 ともに未来へ』を加藤副委員長が視聴し、各局へ感想を送ったとの報告がありました。
◆在京局担当者との「意見交換会・勉強会」概要◆
青少年委員会は11月25日、「報道における青少年の扱いについて」をテーマに、在京テレビ各局(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、東京MXテレビ)との「意見交換会・勉強会」を千代田放送会館で開催しました。各局からは、報道・情報番組の担当者など23人、青少年委員会からは汐見委員長ら7人の委員全員が参加し、論議が交わされました。また、高木光太郎・青山学院大学社会情報学部教授をお招きし、ご講演いただきました。
司会役は渡邊委員が務め、まず、事件関係者である青少年にインタビューする際に留意している点などについて、各局から説明がありました。各局からは、「原則として、中学生以下の場合は保護者の了解を必要条件としている。それ以上の未成年者についても必要な配慮をしている」「近年、SNSが社会に浸透していることなどから、取材する側、される側の想像を超えて情報が拡散することもあり得るので、さらなる配慮をしている」「青少年が被害者や目撃者である場合は、事件の全体像などを視聴者に伝えるために必要不可欠な場合のみ行うこととしている」などの発言がありました。
続いて、高木光太郎・青山学院大学社会情報学部教授から、「子どもへのインタビューをめぐって~法心理学の視点~」と題する講演がありました。高木教授からは、刑事事件裁判での供述の信用性を心理学的に評価してきた立場から、「十分な知識がない人が子どもに話を聞いた場合、子どもの記憶が変わってしまうことがあることから、イギリスでは全警察官が子どもから適切に話を聞くための訓練を受けている」「小さい子どもは、自分の記憶、伝聞情報、空想を明確に区別していないと言われており、思い込みや大人の意見への迎合性が強いため、聴き取りに際しては一定の技法を用いることが重要である」など、子どもから話を聞くための技法や事例などについて説明がありました。また、「スピーディーかつ的確に子どもを取材する方法について、各局の現場における研究を進めてほしい」との提言がありました。
その後の意見交換では、各局から、青少年へのインタビュー取材に細心の注意を持って臨むのは当然のこととしたうえで、「青少年が事件・事故の被害にあった際、当該被害者の人物をよく知る同級生などにインタビューを行うことがあるが、具体的な事件・事故の輪郭について視聴者に関心を持ってもらうための1つの材料と考えて実施している」「青少年への取材に限らず、少しでも多くの事実を集め、客観的に判断して報道することが基本姿勢である」などの考えが示されました。そのうえで、「取材時以上に、テレビで放送する際の影響は大きいので、その段階でもあらためて、当該インタビュー映像の使用について検討する必要があろう」「記者やデスクとの意思疎通を日常的に図っておきたい」「記者などへの事前教育を行ったうえで、取材をしっかりさせたい」など、青少年への配慮についての意識をより高めていきたい旨の発言もありました。
一方、委員からは、被取材者の年齢を考慮したPTSDへのさらなる配慮や、取材後のケアの充実を求める意見がありました。
汐見委員長からは、「取材する側には視聴者に事実を伝える義務があるが、一方で取材される側にも様々な権利がある。真実の追及に取材は不可欠だが、取材される側の論理も念頭に置いて行うことが、ますます求められていることを認識してほしい。また、高木教授の講演を聞いて、取材する側には一定のスキルが必要だと実感した。今回の意見交換会・勉強会が、放送局の若い人たちへの教育を行う上でのきっかけとなってくれれば幸いだ。これからも放送局と青少年委員会が議論しながら、より良い放送のあり方を探っていきたい」との、まとめの言葉があり、2時間30分にわたる会合を終了しました。