放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第211回

第211回 – 2014年7月

デモ行進報道への申立て
放送人権委員会 判断ガイド2014…など

「デモ行進報道への申立て」を審理要請案件として検討し、審理対象外と判断した。
2014年度中に刊行予定の「放送人権委員会 判断ガイド2014」について、編集方針等をめぐり各委員がさらに意見を交わした。

議事の詳細

日時
2014年7月15日(火)午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、林委員 (田中委員は欠席)

1.審理要請案件: デモ行進報道への申立て

デモ行進をめぐる報道に対し市民団体代表から提出された申立書について、審理要請案件として検討し、以下のとおり審理対象外と判断した。
申立ての対象となったのは、A社が2014年3月に放送したローカルニュース番組。申立ては、申立人が会長を務める市民団体が2月に行われたデモ行進について、主催でも共催団体でもないにもかかわらず、あたかもこの市民団体がデモ行進を主催したかのように本番組で報道され、団体会員らの名誉を著しく傷つけたなどとして、番組内での訂正と謝罪等を求めた。また番組はそのデモ行進の中で「ヘイトスピーチ」を行ったと、事実に反する報道をして、会員に対する著しい人権侵害になっていると主張した。
これに対し局側は、委員会に提出した「経緯と局の見解」書面の中で、「本件放送はヘイトスピーチという社会問題を幅広く視聴者に理解してもらう材料を提供するという専ら公益を図る目的で企画・放送したもの」と説明。同社の取材活動は正当に行われ、「本件放送は名誉毀損または人権侵害の余地はない」と述べた。
この日の委員会では、本件申立ての審理入りの可否について、委員会運営規則第5条の苦情の取り扱い基準に照らして、慎重に検討した。
申立ては、申立人の個人名で提出されている。しかしながら、番組では申立人個人を具体的に取り上げておらず、同個人の名誉等人権侵害に関わる内容は含まれていない。また、申立ての中でも、本件放送が同団体の「会員の名誉を著しく傷つけた」等と書かれており、本件申立ては、団体の会長として、団体を代表して提出されたと受け取ることができる。
委員会は、放送により権利の侵害を受けた個人からの苦情申立てを原則としている。団体からの苦情申立てについては、例外的に「団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるとき」は取り扱うことができることになっている。
同団体のウェブページによると、この団体は明確な会則のもと、1万4,500人余りの会員を擁し、さらに相当程度の情報発信力も備えているものと認められる。こうした団体としての規模、組織、社会的性格等に鑑み、上記運営規則に照らして、本件申立ては、委員会が例外的に救済する必要性が高い事案とは認められないとの判断に至った。
このため委員会では、本件申立てについては、委員会の審理対象外と判断した。

委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)1.(6)において、「苦情を申し立てることができる者は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする。ただし、団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる。」と定めています。

2.『放送人権委員会 判断ガイド2014』について

2014年度中に刊行予定の『放送人権委員会 判断ガイド2014』について、事務局からゲラが配布され、それを基に目次、全体の構成、デザイン・レイアウト、各項目の内容・表現等について各委員がさらに意見を述べた。

3.その他

判断のグラデーションについて、放送人権委員会は、従前「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」の違いが分かりにくいという声があったため、2012年5月の第183回委員会において、放送倫理に関する判断を「放送倫理上問題あり」、「放送倫理上重大な問題あり」に一本化し、判断のグラデーションを表にして公表した。また、BPOホームページにおいては、この表にグラデーションの説明を加えたものを掲載してきた。
この日の委員会で検討の結果、これらグラデーションの表記を以下のとおり統一することを決めた。

「勧告」 人権侵害(名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害等)
放送倫理上重大な問題あり
「見解」 放送倫理上問題あり
「見解」 要望(放送表現、放送後の対応等について局に要望)
問題なし
  • 10月7日に名古屋で開催予定の地区別意見交換会(中部地区)について、事務局から主な議題等概要を説明した。

  • 8月の委員会は休会とし、次回委員会は9月16日に開かれる。

以上