放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2014年3月5日

日本テレビ『スッキリ!!』「弁護士の"ニセ被害者"紹介」に
関する意見の通知・公表

委員会決定第19号の通知は、3月5日午後1時から千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、小町谷育子委員長代行の2人が出席し、日本テレビからは取締役専務執行役員ら3人が出席した。
まず川端委員長が「『放送倫理違反があるとまでは言えない』という結論になったが、問題がなかったと言っているわけではないことに注目してほしい」と指摘したうえで、「実質的にまったく裏取りをしないで放送してしまったという点では、放送倫理違反を認めるのが適当ではないかという意見もあった。インターネット詐欺を専門とする弁護士が紹介・同席しての取材であり、取材者に客観的な証拠の確認まで厳密に求めるのは無理があるのでは、ということでこのような結論になったが、もう少しきちんと調べてほしかったという思いはある」と述べた。
小町谷委員長代行は「今回の決定を刑事裁判に例えるなら、結果だけ見ると無罪判決のようだが、無罪にもいろいろあり今回の事案は相当グレーの色が濃いものだと思う。1回だけでなく2回も真実でない放送がされたことにも、ぜひ留意していただきたい」と述べた。
これに対して日本テレビ側は「意見書のご指摘を真摯に受け止める。この意見書を持ち帰り、今後の番組作りに最大限の努力をしていきたい」と述べた。

この後、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定文を公表した。会見には17社37人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が、『スッキリ!!』の2回の放送について「放送倫理違反とまでは言えない」と結論付けた意見の概要を紹介した。今回の事案は、インターネット詐欺被害を専門に扱っている弁護士が「被害者」を紹介し、しかも取材に立ち会っていたことをどう見るかについて審議を重ねてきたと説明したうえで、「被害者と、彼らが語る被害内容の真実性について、弁護士の保証があると見ることができ、それを信じたのも相応の合理的な理由があると考えた。また、インターネット詐欺という新しい問題に取り組んだ意欲を評価し、それを委縮させてはいけないことも考慮した」と述べた。
続いて小町谷代行が「裏付け取材が問題になった事案は今回が6件目なのだが、そのうち4件が日本テレビのものだった。日本テレビがこうした類似事案を再発させないよう取り組んでいくのを、今後も見守りたい」と述べた。
記者との質疑応答のうち、主なものは以下のとおりである。

Q:放送倫理違反とまでは言えないという判断が下されたのは、今回が初めてか?
A:これまでも第1号事案と第9号事案では、部分的に「放送倫理違反は認められない」としているが、審議の対象とした番組全体について放送倫理違反を認めなかったのは、今回が初めてのケースとなる。(小町谷代行)
Q:「放送倫理違反とまでは言えない」という意見にしては、結論の部分の記述が厳しいように感じるのだが?
A:現実に委員会の中では、放送倫理違反を指摘する意見と放送倫理違反とまでは言えないという2つの意見があり、客観的な裏付け取材をほとんど実質的にしていなかったことも指摘することになった。結論は「放送倫理違反とまでは言えない」だが、バンキシャなどの苦い経験がありながら、日本テレビではその教訓が生かされていると言えないので、厳しめの意見も入っている。(川端委員長)
Q:この弁護士が、ニセの被害者を紹介した理由をどう考えるのか?
A:われわれのヒアリングの対象は放送関係者が原則で、この事案で弁護士本人の聴き取りをしなければならない特別の理由もないので、動機について聞いていない。インターネット詐欺の被害回復はきわめて新しい分野で、たくさんの被害者が相談に来るのが前提条件になる。この弁護士はおそらく、テレビで専門家として紹介されることに大きな魅力を感じ、協力しようということになったのではないか。(川端委員長)