第79回–2014年2月>
鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」に関する意見の
通知・公表
弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が実は被害者ではなかった、日本テレビの『スッキリ!!』についての審議
「対決内容が編集で偽造された」ことが判明したフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議
第79回放送倫理検証委員会は2月14日に開催された。
2月10日に意見を通知・公表した鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」事案について、記者会見での質疑や当日の報道などが報告され、意見交換を行った。
ネット詐欺の被害者として放送された人物が、実はネット詐欺専門の弁護士から紹介された、当時の所属事務所の事務員だったことが問題になった日本テレビの『スッキリ!!』について、担当委員から最終的な「意見書案」が提出された。意見交換の結果、全員の一致が得られたため、3月上旬に当該局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
「対決内容が編集で偽造された」と出演者が告発し、番組が打ち切られたフジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(2013年10月20日放送など3本)について、関係者へのヒアリングを踏まえた意見書の原案が、担当委員から提出された。
毎日放送の情報番組『せやねん!』で紹介したダイヤモンド詐欺が、2日前に讀賣テレビの報道番組で放送された特集の内容の一部を、無断で引用したものと判明した。他社の取材成果を無断で使うのは問題だが、映像や音声をそのまま使用したわけではないこと、当該局がすみやかに謝罪・お詫び放送を行い、相手局側も謝罪を受け入れていることなどから、審議の対象としないことになった。
“全聾で被爆2世の作曲家”とされている佐村河内守氏の作品が、別人の作品だったことが発覚した問題について意見を交換した。その結果、まず各局でどんな番組が放送されていたかを把握するため、NHKおよび在京民放キー局に佐村河内氏を扱った番組のデータを求めるとともに、NHKに対しては、去年3月に放送されたNHKスペシャルの映像提供と放送に至る経緯の報告を要請することになった。
議事の詳細
- 日時
- 2014年2月14日(金)午後5時~8時10分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」に関する意見の通知・公表
2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が実は被害者ではなかった、日本テレビの『スッキリ!!』についての審議
3.「対決内容が編集で偽造された」ことが判明したフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議
4.他局番組の内容の一部を無断で引用していた毎日放送の『せやねん!』についての討議
5.「全聾で被爆2世の作曲家」とされている佐村河内守氏の作品が別人の作品と発覚した問題についての討議 - 出席者
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川端委員長、小町谷委員長代行、水島委員長代行、香山委員、是枝委員、渋谷委員、升味委員、森委員
1.鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」に関する意見を通知・公表
鹿児島テレビは、夕方の情報番組『ゆうテレ』(2013年6月19日、8月7日放送)と週末の番組『チャンネル8』(同6月29日放送)で、高校総体に出場した鹿児島市内の高校の男子新体操部の活躍ぶりを、選手を激励する監督の声を交えて放送したが、監督の声は他局の取材音声を無断で受信・録音したものだったという事案。
2月10日、当該局に対して、委員会決定第18号の意見を通知し、続いて公表の記者会見を行った。当日夜のテレビニュースの報道などを視聴したあと、委員長や担当委員から記者会見での質疑などが報告され、意見交換が行われた。
2.弁護士から詐欺事件の被害者として紹介された人物が、実は被害者ではなかった日本テレビの『スッキリ!!』についての審議
日本テレビの朝の情報番組『スッキリ!!』で、インターネット詐欺の被害者として出演した男女2人が実は被害者ではなく、同じ番組に出演したネット詐欺専門の弁護士から紹介された当時の所属法律事務所の事務員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案(2012年の2月29日と6月1日放送)。
担当委員から、最終的な「意見書案」が提出され、さらなる意見交換を行った。その結果、放送倫理違反とまでは言えないという判断を意見として公表することで、全員の一致が得られ、表現の細部の修正は委員長に一任された。当該局への通知と公表の記者会見は、3月5日に行われる予定。
3.「対決内容が編集で偽造された」ことが明らかになったフジテレビの『ほこ×たて 2時間スペシャル』についての審議
フジテレビのバラエティー番組『ほこ×たて 2時間スペシャル』(10月20日放送)に出演していたラジコンカーの操作者が、「対決内容を偽造して編集したものが放送された」と告発したことから問題が発覚、当該局は社内調査の結果ほぼ指摘どおりであるとして、番組を打ち切った事案。
上記番組のほか、同じような問題があったと当該局が認めた2011年10月16日と2012年10月21日放送の『ほこ×たて スペシャル』についても審議の対象とすることになり、1月中旬には関係者に対するヒアリングが行われた。
委員会では、ヒアリングを踏まえて、担当委員から意見書の原案が示され、取材・制作の過程で何が起きたのか、その背景にはどんな課題や問題点が潜んでいたのかなどについて、説明も行われた。意見交換の結果、ほぼ論点は整理できたとして、担当委員が委員会の審議をふまえて意見書の修正案を作成し、次回委員会での意見の集約を目指すことになった。
4.他局番組の内容の一部を無断で引用していた毎日放送の『せやねん!』についての討議
毎日放送の情報番組『せやねん!』(2013年12月7日放送)は、「今週の気になるお金」のコーナーで最近被害が急増している特殊な詐欺について特集した。その中で取り上げたダイヤモンド詐欺は、2日前に讀賣テレビの報道番組『かんさい情報ねっとten.』で放送された特集「モクゲキ~ダイヤモンド劇場型詐欺」の詐欺手口や被害金額などの情報を、無断で引用していたことが判明した。
担当した構成作家やチーフ・ディレクターは、讀賣テレビの特集がすでに多くのメディアで報道された「周知のもの」と思い込み、またチェック役のチーフ・プロデューサーらも、その情報源を確認していなかった。
鹿児島テレビの「他局取材音声の無断使用」事案との比較検討を含めて、意見が交わされたが、他局が取材した映像や音声をそのまま放送したわけではないこと、当該局は速やかに相手局とその取材協力者に謝罪してお詫び放送を行い、その了解を得ていること、さらにチェック体制の見直しや研修会の開催などの再発防止策を講じていることなどから、委員会は、この事案は審議の対象としないと決めた。
[委員の主な意見]
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相当に具体的で詳細な情報であるのに、これが広く知られている周知の事実だと思い込んで、問題意識もなくそのまま使ったという弁明は、成り立たないのではないか。
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他局の取材成果を無断で使ったという点では、鹿児島テレビの事案に似ているが、映像や音声そのものを使用したわけではないことや、電波法違反という公法違反ではないので、無断で使われた局が謝罪を受け入れて問題にしないとしていることの法的な意味が違うことは、考慮するべきである。
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最近の情報番組では、スタジオ内のボードなどに、どこまで裏付け取材ができているか分からない情報やアイデアが、安易に使われたり引用されたりしているように感じる。この問題の根底や背景には、そのような現実があるのではないか。
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審議入りの必要はないと思うが、他局の取材成果を無断で使うケースが相次いで起きたことはホームページやBPO報告に記載して、放送局に警鐘を鳴らすべきだろう。
5.「全聾で被爆2世の作曲家」とされている佐村河内守氏の作品が別人の作品と判明した問題の放送責任などについて討議
全聾で被爆2世の作曲家とされている佐村河内守氏の作品が、別人の作品だったことが発覚した問題について、関連する報道なども参考にしながら佐村河内氏を取り上げた番組の放送責任について議論した。その結果、番組を見ないまま議論をしても具体性に欠けるため、まずNHKおよび在京民放キー局に、佐村河内氏を扱った番組のデータの提出を求めることを決めた。
そのうえで、NHKに対しては、NHKスペシャル『魂の旋律~音を失った作曲家』(2013年3月31日放送)の映像の提供と、放送に至る経緯の報告を要請することになった。
以上