鹿児島テレビ「他局取材音声の無断使用」に関する意見の
通知・公表
委員会決定第18号の通知は、2月10日午後1時から千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、斎藤貴男委員、升味佐江子委員の3人が出席し、鹿児島テレビからは取締役ら2人が出席した。
まず川端委員長が、この問題についてはすでに総務省から、電波法59条違反で行政処分が出されているが、それが即放送倫理違反になると判断したのではないと指摘し、それを含めて取材・制作の過程が適正でなかったことが、放送倫理違反と判断した理由であると次のように説明した。「国民の知る権利にとって非常に重大な事案で他に方法がないときに、電波を傍受してスクープとして使うことはありうると思う。今回の事案はそうではなく、他局の取材成果を自局の放送に使ってはいけないという常識的なことをディレクターが認識しておらず、離れた場所の映像なのになぜクリアな音声がとれたのかという疑問が社内チェックで問題にされることもなかった」。
これに対して鹿児島テレビ側は「なぜこんなことになったのか、なぜ事前に気づかなかったのか、背後にどんな問題点があったのかを、社をあげて考え続けてきた。視聴者に向き合う仕事をしているという誇りを全員が共有して、再生をはかりたい」と述べた。
この後、午後1時45分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には26社50人が出席し、テレビカメラ7台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。このなかで川端委員長は、放送倫理に違反すると判断した理由について「電波法59条に違反していると同時に、適正な取材・放送ではなかった」と説明した。そして、総務省の判断を優先して視聴者への説明が遅れたことについても、問題がなかったわけではないと述べた。
続いて斎藤委員が「同じ高校で新体操をしていた女性リポーターがいるのだから、どうして独自の切り口で番組をつくろうとしなかったのか、もったいないと感じた。放送局は、発表などに頼らない独自取材をもっと大切にしてほしい」と述べた。
また升味委員は「番組は、制作者が面白がってつくり、放送を見て周囲とあれこれ言い合うものであってほしい。1年契約を10年も20年も更新してきた派遣スタッフに制作の現場が委ねられ、そのような体制がモチベーションを低下させ番組への関心の希薄化につながったようにもみえた。このような状況が改善されるよう、鹿児島テレビには"放送人養成プロジェクト"を成功させてほしい」と述べた。
記者との質疑応答では「取材クルーが正社員ではなく派遣スタッフだから、放送倫理に対する認識が不足しているとか、モチベーションがあがらないというような書きぶりになっていると感じられる」との質問に対して、川端委員長が「ダイレクトな因果関係として書いたつもりはない。委員会はこれまでの意見書でも、社員だけしか対象にしていない社内研修を改善することなどを要望してきたが、この事案を契機に鹿児島テレビは、処遇の区別をしない新しい取り組みを始めている。クリエーターとしての誇りを持って、いい番組をつくってほしいと期待している」と答えた。
また、聴き取りをした派遣スタッフらから、待遇への不満や仕事への意欲がわかないという声が聞かれたのかと質問されると、斎藤委員が「ディテールを申し上げるのは差し控えるが、私は、派遣のしくみが十分に機能しておらず、仕事に対する執着が薄らいでいるように感じた」と答えた。升味委員は「取材の際に一歩踏み込んだ取材をしてみよう、いい番組にするためにあれこれ議論しようという気持ちになれないということは、聴き取りから伝わってきた」と答えた。