放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第183回

第183回 – 2012年5月

審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定
放送倫理上の問題に関する判断…など

審理要請案件について審議し、審理入りを決定した。来月から実質審理に入る。放送倫理上の問題に関する判断について議論し、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化すること等を決定した。

議事の詳細

日時
2012年5月15日(火) 午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定

ストローなど身近な素材で作られた作品を紹介したフジテレビの番組で、作品の取り扱いや演出、出演者の発言によって人権を侵害されたという申立てがあり、審理を開始することが決まった。
番組は『情報プレゼンター とくダネ!』。本年1月9日(祝)放送の「ブーム発掘!エピソード・ゼロ② 身近なモノが…知られざる街の芸術家編」と題した企画で、ストロー、バナナ、海苔、それに石を素材とした4種類の作品と作者による制作の様子などを紹介した。
申立人は、ストローを素材にした作品(ストローアート)の作家。申立書によると、数本のストローで作り小瓶に活けた組作品の椰子を1本ずつに崩し、本来飲み物に挿すためのものではないにもかかわらず、飲み物に挿して喫茶店の客に出し反応を撮影・放送したこと、出演者に4作品の人気投票をさせた上、キャスターが「石以外は芸術ではなく趣味の域だ」とコメントしたことについて、「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」と訴えている。
放送後、メールでフジテレビと交渉を続けてきたが、フジ側から提示された謝罪放送の文案に承諾しかねるとし、やり取りを重ねても話が通じないとして4月3日、申立てに至った。視聴者への謝罪とイメージの回復、及び申立人への謝罪などを求めている。
これに対して、フジテレビは、「申立てに関する経緯および見解」の中で、「申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている。演出方法を事前に明確に伝えなかったという落ち度も認め、放送でのお詫び案を5回示して誠意をもって対応してきたつもりだが、理解を得られていない」、「現在に至るまで十分なコミュニケーションは取れていないが、実質的な話し合いに向けてメールでやり取りしている最中との認識でおり、引き続き誠心誠意話し合いを続けたいと考えている」としている。
委員会では、双方から提出された書面及び資料をもとに審議した結果、本件申立ては審理の対象となる苦情に該当し、かつ双方の話し合いは相容れない状況になっていると判断でき、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理に入ることを決定した。
次回委員会から実質審理に入る。

放送倫理上の問題に関する判断

前回に引き続いて、放送倫理上の問題に関する判断のグラデーションについて意見を交わした。
委員会は当初は、「放送倫理上問題あり」で統一されていたが、近年、個別事案ごとの性格の違いを踏まえた判断の微妙な差異を示すため、「重大な放送倫理違反」、「放送倫理違反」、「放送倫理上問題あり」というキメの細かなグラデーションを設けてきた経緯がある。しかし、昨年行われた放送局への聞き取り調査では、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」の違いが分かりにくい等の声が出された。こうした指摘を受け、申立人と放送局の双方にとってより分かりやすく理解しやすい決定とするため、本年2月以降、判断のグラデーションをよりシンプルにする方向で検討を重ねてきた。
この日の委員会では、グラデーションの見直し案について事務局から説明し、これを受けて詰めの議論を行った。この結果、従前の決定等をふまえつつ、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化することで最終的に意見がまとまった。表現については、放送倫理の内容が法規範とは異なり必ずしも確定的なものではないこと、放送倫理については放送局が定めた自主的倫理規範に反しているかどうかを判断の拠り所としていること、さらに放送倫理上の問題点を違反事例に限定することなくより広く具体的に捉えられるとの観点から、「違反」ではなく「問題あり」に統一することとした。これに伴い、わかりやすさという観点から、「重大な放送倫理違反」も「放送倫理上重大な問題あり」に修正されることとなった。
委員会決定における判断は下表の通りとなり、以後の事案から適用される。

「勧 告」 人権侵害
放送倫理上重大な問題あり
「見 解」 放送倫理上問題あり
要望
問題なし

なお、決定における判断内容をより簡単に把握してもらうため、決定文の表題に「勧告」もしくは「見解」という表示を付け加えることになった。「勧告」と「見解」の区別についてはさらに細かな区別も検討したが、わかりやすさという観点から従前のとおりとした。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6月19日(火)に開かれることになった。

以上