2012年1月に視聴者から寄せられた意見
東日本大震災から約10カ月が過ぎ、原発事故や被災地からの報道の数が減ったが、継続的できめ細かな報道を求める意見が多かった。暴力団との交際で、芸能界を引退した元タレントに対し、吉本興業社長が”復帰”を望んだ件で、厳しい意見が多かった。
2012年1月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,343件で、昨年12月と比較して246件増加した。
意見のアクセス方法の割合はメール74%、電話22%、FAX2%、手紙ほか2%。性別は男性73%、女性22%、不明5%。年代は30歳代33%、40歳代25%、20歳代16%、50歳代14%、60歳以上7%、10歳代5%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。1月の通知数は608件【37局】であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、21件を会員社に送信した。
意見概要
番組全般にわたる意見
1月の視聴者意見は1,343件と昨年12月より246件増えた。
東日本大震災から約10カ月が過ぎ、テレビ・ラジオの放送からも、原発事故や被災地からの報道の数が減った。視聴者からは、継続的できめ細かな報道を求める意見や、東北3県だけでなく、茨城、千葉などの沿岸被災地のことも報道し続けてほしいなどの意見があった。暴力団との交際で、芸能界を引退した元タレントに対し、吉本興業社長が”復帰”を望んだことについては、厳しい意見が多かった。
正月の長時間の特番に対する不満も多く、特にバラエティー番組では、芸人たちが騒いで遊んでいるだけ、下品で、ばかばかしいことをいつまで続けるのかといった批判があった。出演者らの言葉の乱れや、ものを食べるときの食べ方の汚さを指摘する声もあった。
ラジオに関する意見は25件、CMに関する意見は55件あった。
青少年に関する意見
放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は194件で、前月より100件以上増加した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が53件、次いで性的表現に関する意見が33件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見については、複数のバラエティー番組やアニメに対し「子どもに悪影響を与える」「未成年の描写として不適切だ」などの批判意見が寄せられた。性的表現に関する意見については、ゴールデンタイムのバラエティー番組に対し「子どもも見る時間帯なのにあからさますぎる」との意見が寄せられた。
意見抜粋
番組全般
【取材・報道のあり方】
- 広島刑務所の脱走犯は52時間も逃げ続けた。この間、脱走犯についての報道機関からの警告案内が少ない。刑務所の服装だから、すぐに分かるという報道だった。しかし、似ても似つかないニット帽姿で確保された。報道の使命を再認識してもらいたい。「いつもの様子と違った感じの人を見かけたら110番通報してください」や「逃走犯が隠れる可能性のある場所を思いついたら、通報を」等の犯人逮捕に結びつく、呼びかけの報道を期待する。
- オウム事件の平田容疑者をかくまっていた斎藤容疑者が逮捕された際の報道に関して。斎藤容疑者の自宅が捜索されている映像で「布団は一組だけあった」や「愛の逃避行」などという言葉を使った報道はあまりに品がない。主婦層が多く見る時間帯だからといってこのような番組の制作をすればいいんだと考えているとしたら、それは視聴者を馬鹿にしすぎだ。容疑者にも人権はあり、事件に関係のない、知られたくないことはある。オウム関連ならば何でもやっていいというような報道姿勢にはあきれる。
- 暴力団幹部との親密交際が発覚し、芸能界を引退した元タレントに対して、吉本興業の社長が「戻ってきてほしい」と声明を発表した。この意見は吉本興業の”会社として”の総意だという。つまり吉本興業は「暴力団排除条例」を軽く見ているということだ。どの放送局の番組を見ても、吉本興業の芸人達がたくさん出演している。聞くところによると、吉本興業は各テレビ局が大株主らしい。”芸能界は何でも許される”という甘い風潮を切り捨てる時ではないか。
- 津波の映像が流れていた。撮影する人のうめき声が聞こえる中、建物や船がどんどん流されていった。驚きながら見ていたら、突然悲鳴のような叫び声が聞こえた。その声はそのままロック調の曲になり、津波の映像を背景にしばらく流れていた。震災から一年も経っておらず、トラウマになっている人もいる津波の映像に、曲をのせて軽々しく流すという行為は不快だ。「震災に捧ぐ鎮魂」とあるが、どこがそうなのか理解できない。津波の映像が、非常にデリケートなものだということが分からないのだろうか。
- “古代の秘宝を発掘”という外国の遺跡発掘の現場からの生中継だった。番組では「遺跡から馬の骨が出た」と大騒ぎしていたが、明らかに偽装とわかるものだった。「今発掘している」というのに、掘っている砂が、通常では考えられない程サラサラと柔らかかった。あれは一回掘った後に砂をかぶせ、放送中に何食わぬ顔で掘り返したに違いない。捏造は不愉快だ。検証して放送局に厳罰を処すべきだ。
- 選抜高校野球の出場校が決まったが、あの推薦枠の高校に対するマスコミの扱いにはうんざりだ。高校生に媚を売るようなものを、なぜ大人が嬉しそうに報道するのか。批判する目が失われていないか。野球をやっている高校生はみんな甲子園に行きたいと練習している。勝負の世界だ。推薦された高校に高野連から電話が入る。校長が感謝の言葉を発し、監督が胴上げされる映像が流れる。どこかおかしくないか。全国の高校生に納得してもらう説明ができるのか。高校生をバカにしてはいけない。
- アイドルや芸人がワイドショーのコメンテーターをしているが、知識も経験もない人にコメントされても共感できない。特に関西地区は吉本興業の芸人が多い。ベースになる知識が視聴者以下の人の発言は聞いても意味がない。10代のアイドルが何かを食べて「うまい」とほめるが、どれだけ美味しいものを食べた上の「うまい」なのか疑問だ。経験値の低い人間を重用する安価な番組作りはやめてほしい。
【番組全般・その他】
- 後輩芸人に500万円を超える自動車を買わせていた。本人も印鑑を所持していたので、台本ありきのやらせだとは思うが、パワハラ以外の何ものでもない。不満を漏らす後輩に対し、バインダーで殴る行為など、暴力シーンやパワハラシーンを平然と放送することに疑問を感じる。それがバラエティー番組だと言うなら、なにをか言わんや。
- 洗濯機の中に人を入れて回転させ、その中で熱いラーメンを食べさせたり、熱いものを素手で食べさせたりという馬鹿なことをやっていた。我慢勝負みたいなもので、一歩間違えれば大変危険なものだった。とても下品な言動もあった。このような番組を大晦日のゴールデンタイムにやってもよいのか?生きることそのものと言える「食べる」ことを冒涜するような番組は作ってほしくない。
- ワザと笑わせてお尻をおもいっきり叩く。平気でお尻を見せ、アダルト要素を含むものを番組内で見せる。危険な行為を平気で放送している。叩く、汚い言葉を使う。罵る。毎年、大晦日にこんな馬鹿なことをして何故、問題にならないのか不思議で仕方がない。これは駄目な番組だ。
- 「森三中vs女子アナ」のコーナーは、ひどかった。嫌がる「森三中大島」を皆で押さえつけ、着物の裾がはだけるほど暴れている姿を笑いものにしていた。下劣で下品極まりないものだった。お笑い芸人の女性はここまでやらなければならないのかと、見ていて情けなくなった。日本人として本当に恥ずかしい。こんな番組は二度と制作するべきではない。
- 自分の嫌いな芸能人を公表するとして、タレントや著名人が”気に入らない人”を、実名やイニシャルで明かすという実にくだらない番組であった。タレントの好き嫌いだけをとりあげるという安易な番組づくり、数字取りだけに走り、下品でもなんでもいいといった局の姿勢も疑問だ。強力な裏番組の対策もあるだろうが、もっと練った企画の番組で勝負してほしい。ただでさえ、昨今のおしゃべりばかりのバラエティーには辟易しているのだから。
- 汚らしい食べ方、オーバーな味の表現。アナウンサーもこのごろはだじゃれ芸人顔負けのオーバーな仕草をしている。女子アナウンサーなどは大口をあけて食べ物を口に入れる。そして無理に口を閉じて食べようとして上唇から鼻の下にかけて放射状にしわがよる。中には鶏が水を飲むように顔を上に向けて鼻の穴丸見えの状態で食べ物を入れようとする。口に入れたとたんに、例によって「うん!」が出てくる。オーバーに「うまい」を演出する。およそ日本の女性には似つかわしくない。こんな場面をいつも映していると、つくづく放送関係者というのは品がない者ばかり集まっているのだと思える。
- 芸能ニュースを見ていると不思議なことを感じる。週刊誌などで話題になっている芸能ニュースがテレビでは全く取り上げられないことがある。たとえば最近では、キャスターの隠し子騒動。司会者なので、より倫理や道徳観が求められるが、どの局も取り上げない。ジャニーズの不祥事の時などもテレビでは取り上げない。大きな芸能ニュースがあるのに、あえて報道しないように見える。この人は取り上げるこの人は取り上げないなど、何かルールや「しがらみ」でもあるのか。
- いまに始まったことではないが、バラエティー番組などでCM前に「この後…××!」といったような告知をし、CMがあけてみれば「次週…××!」と次回の内容であるケースが非常に多い。視聴者からすれば「この後」とあおっているので、番組内で放送されると期待してしまう。このようなあおりは視聴者に「騙された」という印象を与え、不快にさせる。
【CM】
- 映画を放送する時に、新しく公開する映画の告知CMをいれるようになった。映画を見たくて見ているのに、他の映画の告知をするのは困る。日本人の集中力や学問の低下は、すべてテレビ局のCMのやり方がひどいからだ。若者のテレビばなれもCMが多いからだ。映画が見たいのに、CMや告知のせいで集中力が半減する。昔は、そんなにCMはなかった気がする。
- アナログから地デジに切り替わったことと関係があるのか無いのか、とにかくCMが多くなった。せっかくドラマを見ていても、始まったと思うと「ハイ、CM」、又ほんの少し話が進むと「ハイ、CM」という具合に寸断されるので、直前のストーリーを忘れてしまう。何とかしてほしい。
青少年に関する意見
【低俗、モラルに反する】
- バラエティー番組にある兄弟が出てくるが不快だ。食べ物を粗末にしたり全裸で街を走り回ったりしている。いくら子どもでもやっていいことと悪いことがあります。どこが面白いのか全くわかりません。あんなものは元気でもワイルドでもありません。ただの異常な行動としか思えません。しかもそれを全国にテレビで晒して金儲けする親も許せません。
- アニメで、修学旅行なのにナイトクラブやラブホテルを連想させる店に未成年が入店するシーンがあった。深夜の放送とはいえ、この表現はいかがなものか。常識的に考えて、未成年がこのような店に入ることは条例などにより不可能だろう。製作者や放送局の倫理観の欠如の象徴か。
- 最近の番組は全体的に低俗なものが多い。出演者も、口の中に食べ物を入れたまま大きな口を開けて話したり、滅茶苦茶な日本語を平然と使っていたりと、モラルに欠ける人間が多すぎる。”受けること”や”視聴率”ばかりが優先された結果ではないか。テレビが青少年に与える影響を考え、視聴者の”ためになる”番組を作って頂きたい。
【性的表現に関する意見】
- ゴールデンタイムのバラエティー番組を小・中学生の子どもと一緒に楽しく見ていた。20時過ぎ頃から、「浮気の真相を暴く」という内容が始まった。はじめは腹を抱えながら見ていたが、進むにつれて子どもに悪影響を及ぼす恐れのある性的な言葉や、モザイクはかかっていたものの、いかにも性行為を行っている映像が流れた。バラエティー番組とはいえ、この時間帯に放送することはいかがなものか。
- ドラマの告知(番宣)の内容について。子どもに見せたくない番組は親として選択できるが、番宣は途中に入ってくるので否応なく子どもの耳に入る。性行為を連想させるセリフを次回放送のCMでわざわざセレクトして流す必要があるのだろうか。制作者らが事前にチェック出来ないのか。
- ドラマで強姦を匂わせるシーンや女性の体を映しているシーンがあり、未成年にとってこれらのシーンは非常に好ましくない。売春や児童ポルノなどの犯罪にもつながりかねない。今後はこのようなシーンをなくして、大人も子どももみんなが楽しめるようなドラマにしてほしい。また、再放送などではこのようなシーンをできる限りカットしてほしい。
【虐待に関する意見】
- バラエティー番組だが、再婚した夫婦の間で親の我儘に付き合わされ、親の顔色を覗いながら怯えて生活しているような子ども達の姿に、精神的な虐待を見せられたように感じた。母親の連れ子に対する父親の態度は教育ではなく虐待のように見えた。長い間家族の成長を追って撮影をしているテレビ局のスタッフは、視聴者よりもこの姿に疑問を感じているはずだ。
【危険行為に関する意見】
- バラエティー番組などで多く見られる「危険なので決してマネをしないでください」というテロップがあるが、それなら最初から放送しないでもらいたい。子どもは好奇心旺盛なので、するなといえば余計したがる。危険行為を煽るような演出はやめてほしい。
【殺人シーンに関する意見】
- 小さい子どもも見られる時間帯に、アニメとはいえ人が殺されるシーンを生々しく演出している。とてもではないが自分の子どもには見せたくない。とかく今のご時世に大きく叫ばれている「命の大切さ」「人の命の重さ」などをあまりにも軽視しすぎている。教育上非常に好ましくない番組を放送している局の神経が知れない。
【残虐シーンに関する意見】
- 残虐なシーンが多いドラマだが、子どもが見た可能性があるのではと思うとゾッとした。犯罪心理学の観点から見ると、子どもの頃見た映像は大人になってからもフラッシュバックし、その行動に影響を与えるものらしい。この番組は、視聴者を将来”犯罪者”へと導く危惧さえ感じる。即刻放送中止にするべきだ。今後は、子ども達に生きる喜びを与えるような番組を作ってもらいたい。
【暴力シーンに関する意見】
- バラエティー番組で拷問のシーンがあったが、子どもがすごく気持ちが悪いと言って今でも怯えている。常軌を逸したひどすぎる暴力、性描写、死者への侮辱行為など、ゴールデンタイムの番組とは思えない内容だった。
【視聴者意見への反論・同意】
- 最近、アニメのみならずドラマに対する視聴者意見が多いが、どれもアニメやドラマの規制に賛成する意見ばかりだ。確かに、ある程度の規制は必要かもしれないが、表現規制が行き過ぎてしまうと本来の面白さが薄れてしまう危険性もある。
- 毎月「視聴者からの意見」を読んでいるが、どれも放送倫理、権利侵害、名誉棄損など、BPOが取り組むべき事案とは無関係な意見が多い。「暴力・性的シーンが目障り」「戦闘シーンの言葉が不快」などといったことで、これらが子どもに悪影響を与えるとは到底思えない。視聴者からの意見は吟味すべきだ。
【CMに関する意見】
- モンスターを電子レンジなどに入れて合成するという内容のゲームのCM。大人が見れば演出と理解できるが、子どもが「電子レンジや鍋に動物を入れれば新たな生物に合成できる」と受け止めてしまったらどうするのか。他国であった「ペットを電子レンジに入れてしまった」なんてことになったらと思うと恐ろしい。ゲームであれ現実と仮想を区別できる演出にするべきだし、ましてやそれを広い年齢層が無差別に見るテレビなどで放送するべきではない。