第148回–2013年8月
「27時間テレビ」で男性タレントが女性アイドルグループのメンバーに対し、頭を蹴るなどの行為があった企画について、審議入りを決定
第148回青少年委員会は、9月3日に7人の委員全員が出席して名古屋の中部日本放送の会議室で開催しました。まず、7月16日から8月15日までに寄せられた視聴者意見の中から、『生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!』(フジテレビ)に対して「爆烈お父さんのコーナーは、いくら演出とはいえ、暴力的過ぎる」など、多数の意見があった件について討論し、審議入りすることを決めました。また、「子ども向けアニメ番組で男女の恋愛描写が必要なのか」という意見があった女児向けアニメ番組と、地方の銭湯を取り上げたドキュメンタリー番組の中で男児の性器が映った件について、討論の結果、いずれも審議入りしないことを決めました。また、地方局で放送されている深夜のお色気番組については、次回の委員会で討論することになりました。その他、8月の中高生モニター報告、調査・研究企画、10月4日に札幌で開く意見交換会について話し合われました。
委員会終了後、名古屋地区のテレビ6局の番組制作者・編成関係者と、青少年委員との意見交換会が行われました。内容については後日報告します。
次回委員会は9月24日に開催する予定です。
議事の詳細
- 日時
- 2013年9月3日(火)正午~午後2時00分
- 場所
- 中部日本放送(名古屋)第三集会室D
- 議題
- 視聴者意見について
中高生モニターについて
今年度の青少年委員会活動について - 出席者
- 汐見委員長、加藤副委員長、小田桐委員、川端委員、最相委員、萩原委員、渡邊委員
視聴者意見について
・『FNS27時間テレビ女子力全開2013』(フジテレビ)の「生爆烈お父さん27時間テレビスペシャル!!」のコーナー(8月3日放送)に対し、「男性タレントがAKB48のメンバーに対し蹴ったり、叩いたり、ジャイアントスイングしたり、抱え上げて投げ落としたりしていた。いくら演出とはいえ、暴力的過ぎる」「女性アイドルにプロレス技を掛け、両足を開閉したり顔を蹴ったりしていた。制作サイドはまともな判断力を失ったのか」など多数の視聴者意見があり、委員全員が番組のコーナーを視聴した上で討論し、審議入りしました。委員の主な意見は次の通りです。
- たとえ相手が了解していても、見ている側を不愉快にさせる。生放送だが台本があったのかどうか、現場でディレクターが監督し止めることは出来なかったのか。フジテレビの現場がどうなっているのか知りたい
- バラエティーには意外性の面白さがあることは理解しているが、頭を蹴る・踏みつけるという行為は許容しがたい。このようなシーンを外国人が見た時に、日本人はこんなことをやっているのか、日本の文化水準はこんなものかと思ってしまう。最低限のモラルを逸脱している
- いくら下着の上に見えても良いウエアーをはいているとはいえ、きわどい姿をカメラにさらすのは問題だ。どういう意図で局側がやったのか聞いてみたい
- 足を持って振り回す行為は、力の弱い子どもたちが真似をすれば危険性が高い。しかし力を誇示して嫌がらせや、いじめをするようには見えなかった
- 27時間テレビでは、他にも芸人が下着で出てきたり、"ヌーブラ"をしている女性を当てるクイズ等、視聴者も含めた女性に対する扱いがひどい
- 今どきのバラエティー番組のモラルは、行き着くところまで行ってしまったのか。現在のバラエティー番組の制作現場の状況を聞いてみたい
討論の結果、審議入りを決め、次回の委員会で、当該放送局の制作責任者等を招いて制作意図などについて意見交換を行うことにしました。
・「幼児向けアニメ番組で男女の恋愛描写が必要なのか」「あまり男女の関係が目立つ番組にしてほしくない」という視聴者意見があった日曜日朝の女児向けアニメ番組について、委員全員が視聴した上で討論しました。委員からは「アニメで表現されたものに対しての子どもの反応は大人の反応と全く異なるものであるので、アニメによる表現の場合、子どもを意識した十分な配慮が必要」との意見も出ましたが、「大人が少し過敏になりすぎているのかも知れない」という趣旨の発言もあり、審議入りしないと決めました。
・「男児の全裸を公共の電波で流すのは人権的配慮に欠ける。一度放送された映像はインターネットで世界に拡散して消すことができない」という視聴者意見があった、地方の銭湯を取り上げたドキュメンタリー番組について、委員全員が視聴した上で討論しました。委員からは、「男児の裸の映像を流すことについて、最近は批判的見方が強まっている。この10年でスタンダードが変わった事を考えてほしい」「子どもの裸に関して、そんなに窮屈に考える必要があるのだろうか。男児の性器が映りこむのはいけないが、入浴シーン程度は良いのではないか」などの意見が出ました。青少年委員会は、2008年4月11日に「児童の裸、特に男児の性器を写すことについて」という注意喚起※を行っています。各放送局がこの注意喚起の内容を再度確認して、それぞれで時代と意識の変化を考えてほしい旨をBPO報告等に付記することとしました。そのうえで、今回は当該放送局が事後の対応を速やかにしたこともあり、審議入りはしないことになりました。
※注意喚起「児童の裸、特に男児の性器を写すことについて」は、こちらに掲載しています。
中高生モニターについて
8月の中高生モニターは、BPO青少年委員会の「青少年へのおすすめ番組」を視聴して、その番組の良かった点や、こうしたら良いのに、など率直な意見を書いてもらいました。
23人から報告が寄せられました。なるべくそれぞれの地域の番組を視聴してくださいという依頼をしたせいか、地方テレビ局の制作番組に関する報告も多く集まりました。仙台放送が制作した『東日本大震災特別企画「ともに」』に関しては、地元の宮城県のモニター2人から、「被災地域に対しもっと真剣に考えねばと考えさせられた」とか「自分ももっと頑張らねば。これからもこういう番組を作ってほしい」という意見が寄せられました。山形放送の『笑顔かがやくカンボジア』と名古屋テレビ放送の『どまつりLIVE2013』などについても地元のモニターが大変好意的な意見を書いてくれました。
全国放送番組の中では、NHKEテレの『考えるカラス』に3件の意見が寄せられ、「小・中学生向けの番組だが、高校生の私が見ても面白いと感じた」とか、「初めて見たが、とても面白いし、科学の興味深さを再確認できる番組でもある」などの意見が寄せられました。
戦争に関係する番組の中ではテレビ朝日の『二十四の瞳』に3件、テレビ東京の『池上彰の戦争を考えるスペシャル第4弾』に1件、NHK-BSプレミアムの『零戦~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争~』に1件報告が寄せられました。「ドラマで戦争を描くことはデリケートな部分があるとは思うが、当時の人たちの戦争に対するいろいろな想いを効果的に取り入れると、自分たち若者に戦争の悲惨さがより伝わると思った」「番組を見て日本人の視点のみでなく異なる国、異なる立場の人の見かたを知ることができて良かった」「戦争の事実を後世にもしっかり伝えるためにもこのような番組は必要不可欠だと思う」などの意見が寄せられました。
<自由記述欄>では、「ラジオ・テレビについて思ったことを自由に書いてください」と依頼しました。日本テレビ放送網の『24時間テレビ「愛は地球を救う」』について「24時間マラソンをしているが毎年、本当に必要なのか疑問に思う」というような意見が2名から寄せられました。また、「最近、二匹目のドジョウを狙うような、似たような番組が多い」とか、「視聴者を不愉快にさせる下品な番組など誰も望んでいない。今すぐにでもやめてほしい」など、テレビ番組に対する批判の意見も寄せられました。
【中高生モニターリポートの主な意見と委員の感想】
●【委員の感想]中高生モニターが「おすすめ番組」をきっちり見ているという印象を受けた。番組制作者の思いが届いていると思った。
●【委員の感想】番組内容に刺激を受けた、というモニターの声が多く寄せられた。
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(山形・中学2年女子)『笑顔かがやくカンボジア』(山形放送)はじめは、高校生の旅行気分の番組かなと思ってみました。でも、実際は、日本赤十字山形県支部の一生懸命な活動の様子を紹介したもので、高校生の真剣な表情や目つきを見ていてカッコイイ大人だなと思いました。
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(埼玉・高校1年女子)私は『ヤマザキマリのアジアで花咲け!なでしこたち「タイでコスプレを広めたい!~雑誌編集長滋野真琴~」』(NHK-BS1)を視聴しました。この番組を視聴して、取材されていた「なでしこ」の滋野さんの「自分らしく生きても問題ない」ということを教えてくれたタイの地で、今度は自分が若者たちにそのことを伝えていきたい、という考え方がとても素敵だと思いました。
●【委員の感想】自由記述欄を見ると、「同じような番組が多い」、「オリジナリティがない」など、中高生も番組のマンネリ化を厳しく見ているようである。
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(東京・中学3年男子)最近、二匹目のドジョウを狙うような、似たような番組が多いのが目につきます。
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(北海道・高校1年男子)このところ、テレビ番組がどれも同じような企画を取り上げているように感じる。特に問題に感じるのが、「世界にいる日本人を訪ねる」というコンセプトの番組で、3つの放送局で3番組が放送されている。しかも、そのうち2番組の放送曜日が同じなのだ。各局、オリジナリティのある番組を創ろうとする気はないのだろうか?
●【委員の感想】『24時間テレビ』(日本テレビ放送網)に関して意見がいくつか寄せられた。マラソンに関して批判的な声がある。
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(兵庫・高校2年女子)24時間マラソンはほんとうにずっと走っているの?24時間にこだわらなくてもいいと思います。
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(埼玉・高校1年女子)毎年、『24時間テレビ』で24時間マラソンをしていますが、私は24時間も走っている姿に感動したことがないので本当に必要なのか毎年、疑問に思います。
●【委員の感想】地方の中高生がその地方局制作の番組を見て、とてもよい感想を送ってくれている。こういう地方発の番組が他の地方でも視聴できる仕組みができるとよいのですが。
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(愛知・中学3年女子)今回、私が見たのは、『どまつりLIVE2013』(名古屋テレビ放送)です。私は"どまつり"を見たことがないのですが、この番組を見ていて、"どまつり"の勢いに引き込まれていきました。この番組から"どまつり"の良さがすごく伝わってきました。来年の"どまつり"はぜひ行きたいと思いました。
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(仙台・中学2年女子)『東日本大震災特別企画「ともに」第29回』(仙台放送)を見ました。頑張っている姿を見ると、自分ももっと頑張らなければという思いと、自分が無力であるふがいなさを考えてしまいます。番組内で、被災した仮設住宅に住む子供たち30人を集めて野外サマーキャンプを催したNPO法人の方々がいました。これを企画したNPO法人の方々も、それを番組にした仙台放送の方も素晴らしいです。
●【委員の感想】Eテレ=幼稚というイメージがあった、という報告があったので、驚いた。しかし、科学を解析する番組を評価していたのが印象に残った。
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(鳥取・中学2年男子)『考えるカラス』(NHKEテレ)僕はこの番組を初めてみました。Eテレ=幼稚というイメージがあったので、あまり期待していなかったのですが、とても面白くて次回も見たくなりました。また科学の興味深さを再確認できる番組でもあるので、そんな番組を増やしていってほしい、と感じました。
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(岐阜・中学1年女子)『考えるカラス』(NHKEテレ)を見て、初めて知ることが沢山ありました。ナレーションで「ここからは自分で考えましょう」と、視聴者にも考えさせるという構成があり、とてもよいと思いました。この番組は10分間なのに、この短時間でこんなにも初めて知ることがあったり、頭を使えたりして、とても良い番組だと思います。
●委員の感想】8月だったので、戦争に関する番組への感想も多かった。「アカ」という言葉を知らないとか、沖縄戦についてほとんど知らないという中高生もいる実態を知った。
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(千葉・中学2年男子)『二十四の瞳』(テレビ朝日)この中でたびたび「アカ」ということばを耳にしました。しかし僕たち中学生には「アカ」の意味が分かる人は少ないと思います。戦争をしていた時代に使われていた言葉で、今の小中学生が分かりにくそうな言葉は物語の中で説明したり、字幕を使って説明をした方が良いと思います。
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(島根・中学3年男子)『テレビ未来遺産終戦特別企画報道ドラマ「生きろ」~戦場に残した伝言~』(TBSテレビ/山陰放送)。広島の原爆については、多く放送されているので見ていますが、沖縄戦は知らないことも多かったので、ドラマと実体験を交えた番組構成になっていて、分かりやすかったです。
●【委員の感想】スポーツ関連の番組についてより多く放送してほしいという意見があった。甲子園大会の放送に関しては、CMのことまで褒めているモニターがいて、丁寧に制作、放送すれば、ちゃんと見てくれるのだな、と思った。
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(千葉・中学2年男子)甲子園の野球大会で盛り上がっていますが、中学生や高校生がいろいろな競技で最後の闘いに頑張る時期なので、できれば野球だけでなく他の競技も、決勝戦だけでなく、地方大会や予選大会もテレビで放送してくれたらと思います。
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(岐阜・高校2年女子)私が良かったと思う番組は、『熱闘甲子園』(朝日放送・テレビ朝日/名古屋テレビ放送)です。単に一つの高校の試合というだけでなく、その県の代表として勝ち抜いてきたドラマがあることが見ていて感動させられます。また、選手の笑顔や汗、涙、スタンドのどよめきがストレートに伝わってくる放送の仕方には、毎回感動です。最後にCMが入りましたが、番組の雰囲気を壊すことなく素晴らしいCMだったと、私は思います。75歳のおばあさんが、目標を持ってあきらめずに水泳に挑戦する姿は、甲子園を超えるくらい感動しました。熱闘甲子園にぴったりのCMだと思いました。
今年度の青少年委員会活動について
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調査・研究の内容に関する議論が行われ、「子どもの視聴実態と子どもの言動へのテレビの影響について(仮)」について、質的、量的な調査を、2015年1月の完成を目指して行うことになりました。
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10月4日に札幌で行う意見交換会について、進捗状況の報告がありました。
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8月1日の事例研究会、8月16日のJAROとの意見交換についての報告がありました。