2011年12月に視聴者から寄せられた意見
年末特番編成に対する不満意見が多く、特に長時間化するバラエティー番組に対しては、芸人たちの内輪話が多いなどの批判が集中した。歌番組やスポーツ番組での”生番組風”演出についての疑問も多く寄せられた。
12月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,097件で、11月と比較して30件減少した。
意見のアクセス方法の割合はメール73%、電話23%、FAX2%、手紙ほか2%。性別は男性72%、女性24%、不明4%。年代は30歳代33%、40歳代26%、20歳代16%、50歳代14%、60歳以上7%、10歳代4%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。12月の通知数は508件【30局】であった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、20件を会員社に送信した。
意見概要
番組全般にわたる意見
12月の視聴者意見は1,097件と前月より30件減った。昨年同時期と比べると意見数に大きな変化はないが、ここ3ヵ月で見ると減少傾向にある。電話によるアクセスが減って、メールが増えた。
意見内容では、年末特番編成に対する不満意見が多く、特に長時間化するバラエティー番組に対しては、面白くもない芸人たちの内輪話が多いなどの批判が集中した。歌番組やスポーツ番組での”生番組風”演出についての疑問も多く寄せられた。金正日総書記死去のニュースには、報道の姿勢を質す意見があった。福島第一原発事故関連では、政府の”収束宣言”に対する批判意見があった。放射線による食品への影響を調べた食卓調査番組への関心も高かった。ドラマでは長く続いた時代劇の終了を惜しむ声があった。ラジオに関する意見は18件、CMに関する意見は14件あった。
青少年に関する意見
放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は81件で、前月より40件ほど減少した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が26件、次いで視聴者意見への反論・同意が10件、いじめに関する意見が8件と続いた。
低俗・モラルに反するとの意見については、複数のバラエティー番組に対し「青少年の教育上良くない」「子どもへの配慮が足りない」といった批判意見が寄せられた。視聴者意見への反論・同意については、「青少年の教育上悪影響だ」とする意見や、主にアニメに対する批判意見への反論が寄せられた。いじめに関する意見については、バラエティー番組におけるお笑い芸人やタレントの言動に対する批判意見が寄せられた。
意見抜粋
番組全般
【取材・報道のあり方】
- 北朝鮮の金総書記死去という大ニュースがあったのに、民放各局は、普通にお笑い番組などを続け、合間に報道のアナウンサーが出てくるという対応だった。ある局はドラマの宣伝ばかりで、ある局はいつもどおりの馬鹿笑い番組。ふざけた姿勢は報道機関なのかどうか疑う。みんな公式発表的なものばかりが見たいわけではない。様々な伝え方があり、そこに民間放送の意味がある。報道機関の使命を放棄して、目先の視聴率稼ぎに走った放送局は、恥を知るべきだ。
- “ものまね紅白”と銘打ったコーナーで、明らかにブータン国王夫妻を侮辱する物真似が堂々と放送されていた。普通なら仕方ないと苦笑いで済ませられる内容だが、今回の放送はあまりにひどく、とても見過ごせる内容ではない。ブータンの国王夫妻、またブータン国民を馬鹿にする行動だ。わざわざ被災地に来て励ましてくれたブータン国王に対して、侮辱するような物真似をするとは腹立たしい。面白さを追求するにしても、節度というものがあるはずだ。
- 朝の各民放局の番組では、芸能ネタが多い。ニュースは合間に少しだけ伝えている。朝はこれから出掛けなくてはいけない人が多い。それなのに芸能ネタばかりとはどうかと思う。芸能はもうちょっと遅い時間帯でワイドショーという形で十分だ。芸能に時間を使うならもう少しニュースや全国各地の話題に時間を使ってほしい。
- メディアは個人情報をどういう風に考えているのか。浅田選手のお母さんが亡くなったことで、空港にまで押しかけたり、実家にまで行ったりしている。今に始まったことではないが、人の不幸であれニュースになるのなら個人情報は乱用してもいいのだろうか。「取材活動は自粛してください」と出ているにもかかわらず、強引に押しかけるのはどうかと思う。
- 柔道オリンピックの金メダリストが、教え子の10代の女性に対する準強姦容疑で逮捕された。本人はあくまでも「合意だった」と弁明し、容疑を否認している。被害者が訴えなければ事件は闇に葬られていた可能性もある。そもそも指導者が未成年者に酒を飲ませること自体、違法行為ではないのか。被疑者の言い分だけを一方的に重視し、「過去の栄光」ばかりをクローズアップするよりも被害者の心情に配慮することがメディアの責任ではないのか。
- 試合終了後、歓喜の輪に加わっているバルセロナのメッシ選手を特設ブースに強引に呼びつけ、明石家さんまが、「老後はどうする?」などという、侮辱的な質問をして、選手を怒らせていた。大変不愉快で、日本人として顔から火が出るほど恥ずかしい気持ちになった。選手を呼び出す局の傲慢さにも呆れる。選手に謝罪すべきだ。
- 最近のスポーツ中継は、ライブのふりをして録画編集し、流していることが多い。視聴者を欺いている。放送時間やCMの入れ方、インタビュー等を自分たちでいいように流したいのかもしれないが、それはライブ放送ではない。2、3元中継でもなく明らかに録画放送である。スポーツ中継をバラエティー化したり、関係ない芸能人を出演させたりすることは、やめてほしい。ただ自局の視聴率のためだけに行われているとしか思えない。
- 情報番組などで、ボードに貼った新聞の記事を読み上げながらニュースを伝えるコーナーがある。その際、記事のほとんどを紙で隠し、少し読むごとにペラッ、また少し読んではペラッというふうに、いちいち紙をはがしながら読みすすめることが多い。ここぞという箇所であればそれも効果的であろうが、ほぼ全面に紙が貼られている場合が多いため、かえってニュースのポイントが分かりにくくなっている。「紙はがし」が悪いとは言わないが、使う箇所を絞り、メリハリのあるニュース解説を心がけてもらいたい。
- 各局の情報番組で多用されている手法だが、紙をめくる時に「ジャーン」、ボードを指す時に「チャリーン」という具合に、地震速報と紛らわしい擬音が流れる。私はこの音を聞いた瞬間、神経も体も硬直してしまい、とても疲れる。私だけかと思っていたが、様々な年齢の知人も同じことを言っており、私だけが過敏というわけではないようだ。震災後、皆が警報や速報にぴりぴりしているのだから、少なくともしばらくの間はこうした演出はやめてほしい。
【番組全般・その他】
- 生放送のように見せかけたやらせの件。これは明らかに問題がある。放送局側では通常の演出の範囲内と考えているようだが、屁理屈にすぎない。「生放送でお送りしています。Gスタジオの○○さーん」の呼びかけに答えたのは、録画なのだ。「演出の範囲内」「録画部分にはLIVE」等、指摘のあった部分を正当化し、問題とも思わない感覚がすでに異常だ。マスコミは偽情報を一般視聴者に信じこませることができる。これは危険なことだ。
- 新聞各紙でも取り上げられている、擬似生中継の問題について。収録映像を使ったことについては、どうしても出てほしい出演者のスケジュール上仕方のないことだとは思う。ただ、それをあたかも生中継の一部として放送したこと、またこれを演出の一部とコメントを出したテレビ局の姿勢は問題がある。当該アーティストは同時刻に自らのコンサートを開いている。調べればすぐわかることにもかかわらず、収録時に参加者に口止めまでしていることは問題ではないか。収録なら収録で、そう伝えればいいだろう。わざわざ嘘をつく理由がわからない。これを演出の一部と認めるなら、テレビ制作とは何でもありになってしまう。
- 「王国アメリカを脅かす2大おバカ国登場!」のコーナーでロシアの悪戯投稿ビデオが放送されていた。悪戯内容があまりにもひどく、「面白い」の一言で片づけてしまうには、見る側からすれば気分が悪くなる内容だった。「面白い」の一言で、何でも放送していいという風潮があるようだが、テレビ局には放送倫理という概念はないのか。このような不快な放送を垂れ流すだけの放送局に、放送差し止め等の厳しい処罰がないことも、何をやっても許される的な発想になっているのではないか。
- 番組終了直前のCMの前に「この後お買い物対決」とテロップが出てCMに入った。しかしCMが明けると番組のエンドロールが流れ番組は終わってしまった。「お買い物対決」は次回の放送内容だったらしい。この番組に限ったことではないが、視聴者を引っ張るために紛らわしいテロップを出す手法にはウンザリだ。やめてほしい。
- 音楽番組と銘打っていることが信じ難いほどの音響の悪さで、がっかりした。番組の途中までは、環境が悪い中でどのアーティストも一生懸命歌っていて、好感を持って視聴していたが、嵐の方々が2回目にパフォーマンスした際の明らかな音響トラブルに関して、子ども達は「これは公開イジメか」とまで言っていた。音楽番組で音響が機能しないということは、歌手が歌える環境ではなかったということだ。制作に責任を負うはずの番組側が、視聴者に対して何の説明もしないことはおかしい。
- 同じような場面で、まったく同じ音楽を耳にすることが多い。たとえば家などをリフォームしたり、掃除したりした後には「劇的ビフォーアフター」の曲。空港や飛行機が映ったときや航空会社の話などはドラマ「GOODLUCK」の曲がほとんどだ。それだけ印象が強いのだろうが、あまりに同じ曲を使いすぎではないか。最近ではここでこの曲が流れるなと想像できてしまうし、ほとんどその通りになる。それが番組制作者の狙いなのだろうか。こんな小さなことにこだわることがくだらないのか、それともこれほどまでに印象に残る曲を作った作曲家をすばらしいと言うべきなのか。
- 民放のバラエティー番組で、芸人同士が裏話で盛り上がると、話のあちらこちらに「ピー音」がかぶせられることがある。芸能人の個人名を消すためだと思うが、視聴者をかやの外に置いて内輪だけで騒ぐとは失礼だ。視聴者に聞かせたくないのであればプライベートな場で盛り上がれば済むことだ。
【CM】
- CMに日本人宇宙飛行士の映像が使われているが、企業のCMにJAXA職員が出るのは問題がある。出演料などが今後の宇宙開発に役立てられるというプラス面は理解できるが、問題はお金の行方ではない。宇宙飛行士の滞在実現のためには、これまで莫大な国家予算が投じられている。いわば国を代表してプロジェクトに参加している人物が、一私企業のイメージアップに貢献することが、果たして公正なことと言えるのか。
【ラジオ】
- 放送された内容は犯罪だ。女性はいつでも強姦されたいと思っているという趣旨の発言は看過できない。「『信じている』と女性が言う理由は、『性交がしたいという意味なんだ!』」という発言は、公共の放送でするべきではない。直ちに、このコーナーは廃止すべきだ。これは犯罪を助長、肯定しているようなものだ。柔道の金メダル選手が「合意だった」と言っていることと同じだ。これで自分の娘が強姦されても文句は言わないのか。被害者を出したらどうするのか。性犯罪を肯定する発言をしたのだから放送は直ちに中止すべきだ。
青少年に関する意見
【低俗、モラルに反する】
- バラエティー番組で双子の兄弟をとりあげているが、最初に出てきた時は家の中でやんちゃしているというレベルだったが、外やスーパーなど他の人がいる場所で服を脱いだり、周囲の客や店に迷惑をかけている。それをネタにするのは不愉快だ。何にせよ子どもの度が過ぎた行為をネタにすることは良くない。
- ある男性タレントが年上の芸人の頭を叩いていた。芸歴も浅い若手なのに、先輩の方々を叩いていた。彼は以前放送された別の番組でも、目上の女性の頭を叩いていた。どういう神経で、事務所はどういう教育をしているのかと憤慨した。若い子達の礼儀の悪さを助長するような行為はやめていただきたい。
- 深夜のバラエティー番組の視聴者プレゼント企画に10歳の子どもが参加していた。「電話なのでOK」としていたが、小学生が夜中の時間帯に起きて、番組に電話とはいえ出演することはどうかと思う。生放送だ。番組スタッフが判断するべきだったのではないか。その子が今回商品を獲得したことを友達に話し、友達も夜中に起きれば商品がもらえると思うかもしれない。テレビは大きな影響力をもっているので、大人がしっかりと子どもを守ってあげてほしい。
【いじめに関する意見】
- 芸人の顔の特徴を他の出演者が言っていたことで、私の娘が同様の顔の特徴でいじめを受けている。最近のテレビは、そういうことを言いっぱなしにする所があり、子ども達もそれを見ることにより人の欠点を言っても罪悪感にとらわれず、平気で言うようになってきている。大人はスルーできることでも、できなくて悩んでいる子ども達がたくさんいることを心にとめて番組作りをしてほしい。
- バラエティー特番の終盤の罰ゲームに心底あきれた。湯を張った大鍋の上からしゃぶしゃぶ肉を持ったタレントをワイヤーで吊り下げ、肉だけでなく人間ごと湯につけたり吊り上げたりを繰り返すいじめそのものの企画だった。小学生の子どもも一緒に見ていたが嫌がって泣き出した。今年は震災があって絆の大切さがしっかり認識されたはずだが、一部のテレビ関係者にはそれが分かっていないのだろうか。
【性的表現に関する意見】
- 子どもが見られる時間帯であるにもかかわらず、ラブホテルでの性行為のシーンが放送されていた。この回のみならずDVシーンや性行為を匂わせるシーンが何度もある。ドラマは放送時間帯を深夜にするなど青少年への配慮をしてほしい。
- バラエティー番組のコントで女性芸人が下品な言葉をつかっていた。小さな子は分からないかもしれないが、アニメ映画終了後の土曜の23時といえば子どもが夜更かししていてもおかしくない時間帯だ。この番組はほとんど見たことがなく、この時初めて見た。ネットで検索すると下ネタが多いとのこと。18禁か何かに指定しても良いのではないか。
【要望・提案】
- かつて、ドラマの小道具に使われたバタフライナイフに刺激され、少年が中学校で教師を殺害するという事件があった。当時は大きく問題になったが、最近はそのことも忘れられ、暴力的表現の多いドラマが増えているようだ。こうしたドラマは子どもたちのいる日中にも再放送されるなど問題が多いので、「残虐表現の排除」「日中は放送しない」「冒頭で『暴力的な表現が含まれています』等表示する」「ドラマと類似した犯罪の被害者に配慮する」等の対策が必要ではないか。
【暴力シーンに関する意見】
- ドラマの番組宣伝の中に、登場人物がナイフを振り回す場面があった。小学生の孫が見てしまい、「ナイフって怖いね」と漏らしていた。このような場面を含むドラマ自体どうかと思うが、番組宣伝用にわざわざそうした場面を選ぶのも非常識だ。
【殺人シーンに関する意見】
- 殺人事件を扱うドラマだが、殺人シーンがリアルで生々しい。先週は包丁が死体に突き立てられていた。生々しいシーンは子どもの潜在意識に刻まれてしまうし、ドラマで殺人を見慣れてしまうことも恐ろしい。そうしたシーンが過激にならないようにしてほしい。
【虐待に関する意見】
- バラエティー番組で、ゲストの元プロレスラーが「息子を叩くことがある。あくまで脳みそを揺らさないように。その加減は私は得意だ」と語っていた。冗談っぽかったが、本当なら由々しきことだ。そもそも子どもへの虐待は犯罪だし、話のネタにしても我が子を叩いている等の言説は看過しがたい。彼女に限らず我が子への体罰をネタにして話すタレントは多く、それを平気で流すテレビ局も疑問だ。
【差別に関する意見】
- 健常者と障がい者の壁をなくして一緒に笑おうというバラエティー番組の企画らしいが、ステージには健常者と障がい者が立ち、健常者が障害のある人を馬鹿にするような場面は不快である。番組に出演している障がい者は状況を理解した上で出演しているからいいだろうが、この番組を見た子どもが、近くにいる障がい者をバカにするようなことをしたら、それは差別になる。障害をネタにした笑いは必要ない。
【視聴者意見への反論・同意】
- 猟奇的なシーンの多かった深夜アニメに対し「不愉快」「一般向けではない」という批判があったが、一般向けでないからこそ深夜に放送されていることを理解すべきではないか。日中やゴールデンタイムに放送されているものなら、たまたまそれを目にして不快な思いをすることもあるだろうが、深夜番組に関しては”そういうもの”だと割り切るべき。
【CMに関する意見】
- スマートフォンのCMで、爪が長い女性が出てくるがちゃんと爪を切ってほしい。学校で子どもに爪を切るように指導しているが、ああいう人を出すと子どもが長い爪にあこがれるのではないか?長い爪は衛生的にもよくない。