放送人権委員会

放送人権委員会 委員会決定

2013年度 第50号

「大津いじめ事件報道に対する申立て」に関する委員会決定

2013年8月9日 放送局:株式会社フジテレビジョン

見解:放送倫理上問題あり
フジテレビが2012年7月5日と6日の『スーパーニュース』において、大津市でいじめを受けて自殺したとして中学生の両親が起した民事訴訟の原告側準備書面の内容を報道した際、加害者として訴訟を起こされている少年の実名部分がモザイク処理されずに放送され、少年と母親がプライバシーの侵害を訴え、申し立てたもの。

2013年8月9日 第50号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第50号

申立人
少年とその母親
被申立人
株式会社フジテレビジョン
苦情の対象となった番組
『スーパーニュース』(月―金 午後4時50分~5時54分)
放送日時
2012年7月5日(木)午後4時53分00秒頃~5時03分24秒頃
2012年7月6日(金)午後5時27分28秒頃~5時37分29秒頃

【決定の概要】

フジテレビは2012年7月5日と6日の『スーパーニュース』内で各1回、大津市の中学生いじめ事件の報道に際して、加害者として民事訴訟を起こされている少年の氏名を含む映像を放送した(以下、本件放送という)。委員会は少年と少年の母親(以下、申立人という)から本件放送によってプライバシーを侵害されたなどの申立てを受けて審理し、決定に至った。決定の概要は以下の通りである。
本件放送のうち少年の氏名を含む映像は、5日分が1秒未満、6日分が2秒弱と短く、画像内の氏名部分も微小で、通常のテレビ視聴形態では、氏名は判読できない。したがって、このテレビ映像に限れば、プライバシー侵害は生じていない。しかし、テレビ映像を録画した静止画像では少年の氏名を判読できる。これがインターネット上に流出した。この静止画像が申立人のプライバシーを侵害していることは明らかである。
テレビ映像を録画してインターネット上にアップロードする行為は著作権法に違反する。したがって、フジテレビに静止画像によるプライバシー侵害の責任は問えない。だが、録画機能の高度化やインターネット上に静止画像がアップロードされるといった新しいメディア状況を考慮したとき、静止画像にすれば氏名が判読できる映像を放送した点で、本件放送は人権への適切な配慮を欠き、放送倫理上問題がある。
この放送倫理上の問題はモザイク処理のない映像素材を使ったミスの結果である。委員会は、個人情報を含む等取り扱いに十分な配慮が必要な素材に関する十全な管理体制を整備するとともに人権意識の涵養に努め、こうしたミスがふたたび起きないようにすることをフジテレビに要望する。この点で、本件放送は少年の個人情報にかかわるものであり、少年法の趣旨に即して特段の配慮が必要だったことも付記する。

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.本件放送内容と申立てに至る経緯
  • 2.論点

II.委員会の判断

  • 1.はじめに
  • 2.放送倫理上の問題
  • 3.再発防止のための要望
  • 4.その他の判断
    • (1)誹謗中傷の加速・過熱化
    • (2)映像素材としての適否

III.結論

IV.申立てに至る経緯及び審理経過

V.申立人の主張と被申立人の答弁

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2013年8月9日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、放送局側(被申立人)には8月9日午後1時からBPO第1会議室で行われ、申立人側へは、申立人の都合がつかなかったため、放送局への通知と同時刻に京都市内にある申立人の代理人法律事務所で行われた。
また、その後、千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、「委員会決定」を公表した。午後1時40分から事務局による事案の説明、午後2時から三宅委員長、奥委員長代行が記者会見した。報道関係者は23社53人が出席。
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2013年11月19日 委員会決定に対するフジテレビの対応と取り組み

『大津いじめ事件報道に対する申立て』事案で、2013年8月9日に委員会決定を受けたフジテレビは、局としての対応と取り組みをまとめた報告書を11月5日放送人権委員会に提出した。11月19日に開催された委員会で報告書の内容が検討され了承された。

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目 次

  • 1.委員会決定後の対応
  • 2.社内での報告と周知
  • 3.再発防止に向けた取り組みについて