「宗教団体会員からの申立て」審理入り決定
放送人権委員会は4月16日の第196回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組はテレビ東京が2012年12月30日に放送した『あの声が聞こえる~麻原回帰するオウム~』。番組は、オウム真理教の後継団体アレフが「麻原回帰」を鮮明にし、新たな信者獲得に動く中、なぜ多くの若者が入信するのかを主なテーマに、元最高幹部のインタビューや現役信者や家族らを取材した映像等を中心に放送した。
この放送に対し、番組で紹介された男性が、個人情報を公開されたうえ、「何の断りもなく、公道で盗撮された私の容貌・姿態を放送され、自宅アパートの所在・外観を特定可能なかたちで放送され、容易に判別可能な顔写真数枚を放送された」等と抗議する文書をテレビ東京に送ったうえで、20日以上回答がなかったため、プライバシーの侵害を訴える申立書を委員会に提出した。また男性はテレビ東京に対し、番組を制作、放送したことについて、非を認めて直接謝罪し、番組を二度と放送しないと誓約するよう求めた。
これに対しテレビ東京は、「番組はオウム真理教の後継団体アレフの現状を伝えることなどを目的とした公益にかなうもので、取材も両親などから承諾を得てすすめている」として、申立人の求めには応じかねると回答。このため男性は、「当事者間の解決は極めて困難だと思われる」として最終的に委員会の審理に委ねる文書を提出した。
テレビ東京はその後委員会に提出した「見解」書面で、「公安調査庁の観察処分の対象となっている団体の実態を明らかにするには、私たちのとった取材手法以外に方法はなかった。編集に際しては、男性の映像や音声、写真には加工を施すなど人権の保護に配慮して放送し、問題はないと判断している」等と、反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。
放送人権委員会の審理入りとは?
「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を充たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。
* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。