休会 – 2011年3月
休会
3月29日に予定されていた第121回青少年委員会は、東日本大震災の影響により中止した。また、3月20日に予定されていた中高生モニター会議も同様に中止した。
中高生モニターについて
3月は、1年間中高生モニターを体験して「今のテレビやラジオについて思ったこと、感じたこと」について29人から率直な感想が寄せられた。モニターの中には、「東日本大震災」で被災されたり、”帰宅難民”として一晩学校などで過ごされたりした方の体験談もあった。
【モニターの主な意見】
今回、寄せられたモニター報告には3つの特徴があった。1つは、他のモニターの意見を読んで、「テレビの見方にはさまざまあるのだと感じて勉強になった」というもの。
「1年間、モニターをして本当によかったと思います。テレビを見たりラジオを聴いたりするときも、一視聴者としてではなく、モニターとして見るようになりました。毎月のモニターリポートでは、自分の書いたリポートについて取り上げていただいたり、自分と同じ意見の人がいたりすること、また、自分とは異なる角度から見ている人のリポートなどを知ることができ、よかったと思います」。
「今まで何気なく見ていたアニメ、ドラマ、ニュース等が、もっともっと深く考えて見るようになりました。単純につまらないと思っていても、それを作るスタッフも、何十人、何百人といて、大変だったんだと思うようになりました。でも、視聴率のみで判断されるのは、どうかと思います。20%でも何となく見ているだけよりも、10%でも面白く見ている方が良いのでは?これからは、私たちがテレビ番組をジャッジすることになりますね」。
「最初はリポートを書くのが大変だったけれど、慣れてくると楽しかったです。毎回、自分が『これは面白い!』と感じたものが、他の人にしたらつまらなかったり、ましてや怒りまでも覚えたりする人がいることに驚きました。たった1つの番組でも、いろんな意見や、真逆な意見があることを知り、大変勉強になりました。また、プロの方に企画を見てもらえるなんて、夢のような事も経験できました。ふだんテレビ番組は食事など何かをしながら見たりして、どちらかというと時間をつぶすものという感じでしたが、モニター活動をしてみて、受ける一方の姿勢から、番組内容を吟味し作り手の想いについて深く考えるようになりました」。
「毎月のテーマの中で最も頭を抱えたのは、企画書作りであった。自由に番組を作れるというのは楽しくて仕方なかったが、幅広い年代の人に面白く見てもらえる番組を作るのはかなりの時間と努力と想像力が必要だった。番組制作者の苦労が少し分かったような気がした。毎月選ばれる『キラ★報告』のようなリポートを作ろうと、自分も目指してがんばったが、結局最後まで『キラ★』に選ばれずに終わってしまったことが心残りだ。しかし、こうやってリポートを作り続けることで国語の成績が上がったことは嬉しいことだった」。
「私は中学時代からドラマやアニメ、本などのオリジナル企画書を趣味で書いていて、20冊以上になっています。中には”パクリ”もありますが、こういうドラマを作りたい、こういうアニメを作りたい、こういうバラエティーを作りたいと考え、暇なときに書いていたら、もう20冊以上です。モニターを通して改めて表現の難しさや、いかに同年代の人が考えているのかなども分かってきました。今のテレビは、いかに視聴率を取るかの争いです。ですので中身がつまらないものになっていると感じます。”空振り”番組ばかりです。どうか、家族みんなで楽しめる良い番組を作っていってください」。
「私がモニターに応募する時に書いた番組は『めちゃ×2イケてるッ!』でした。書いた理由は、”めちゃイケらしさ”を追求するスタッフさん、キャストの皆さんが素晴らしいと思ったからです。いつも放送ギリギリのネタをする『めちゃイケ!』ですが、私は、”やらない”めちゃイケよりも、”やる”めちゃイケが好きなんです。これからも『めちゃイケ!』は教育委員会とかBPOもあまり気にせずに、”めちゃイケらしく”番組を作り続けてほしいと思います」。
「今まではテレビやラジオ放送をただ何となく見たり聴いたりしていましたが、モニターをさせていただいて自分から積極的にそこから何か情報や教養を得ようとする姿勢に変わっていったように思います。放送局に望むことは、視聴者に事実を正しく伝えてほしいということです。そして決して不快感を与えないでほしい。『この放送を見て聴いて良かった!』と思えるような番組を作っていただきたいです」。
もう1つの特徴は、「不快だと感じたことなどがあまり変わっていない」、「自分たちの意見がテレビ局に本当に届いているのか疑問」というもの。
「中高生モニターを体験させていただき、本当に貴重な経験をさせていただいたことを感謝しています。しかしながら、率直なことを言えばこのモニター報告で、僕たち中高生から指摘されたことが何にも生かされていないと感じました。毎月送られてくるリポートのまとめの委員の感想には、『意欲がよく読み取れました』や『想像力をたくましくして本物を見つけ出してほしい』などと書かれていますが、そのようなことだけでは具体的に何が変わるのか。また、僕たちの考えた番組企画をテレビ局の方に感想をいただいた中に、『中高生の率直な感想の鋭さに驚いた。改めてその指摘を生かせるようにしたい』という内容があったが、具体的に何がどんなことに生かされたのかが分からない」。
「とにかく中高生モニターをしてみて、コマーシャルが多すぎる…と思いました。部活・勉強の合い間に、モニターとしてテレビを見よう!となった時に、コマーシャルばかりだと嫌気が差して『今夜は見るのをやめておこう』と思うことが多々ありました。不況のあおり(?)なのか分かりませんが、どんどん番組にCMをはさむのではなく、フィギュアスケートの壁にあるようなスポンサー広告のように、動画じゃなくてもずっと貼っておくなど、方法はあると思うので、改善すべきだと思います!」。
「今のテレビは何かどの番組も同じ雰囲気になっている気がします。バラエティーでは、司会が島田紳助さんに独占され、大物タレントがゲストとして番組に出演すると、その人がうまくなくても、うまいみたいに持ち上げなければいけないという暗黙の了解があるように感じました。しかも紳助さんは自分がプロデュースしたグループを、他局の番組でも出させたり、自分がかわいがっているタレントを自分がMCの番組のレギュラーとしてたくさん登用したり…。若手でもっと面白い人がいるのではないでしょうか?こういうのをやめてほしいと思います。そうしないと、今のテレビ業界が進化しないと思います」。
「今のテレビやラジオは視聴率や聴取率のためだったら何でもやっていいという風潮だと思います。見ていると、『そんなことをして意味があるのか?』『危ないことをするんだな』と思っています。心の底から笑ったり、感動したりするというテレビ番組が少なくなっています。作り手の情熱が欠けているからでしょうか。この1年、中高生モニターをしたことは、僕のこれからのテレビを見るうえでの財産になります。放送局の皆さん、より良い番組をこれからも作り続けてください」。
「自分は意志疎通が下手で、自分の本当の思いを文章にうまくまとめることができず大変な時もありましたが、皆さんに感謝します。今のテレビやラジオについて思ったことは、アナウンサーは芸能人ではありません。勘違いしてチャラチャラしている方が多い。放送局に伝えたいことは、視聴者の声をしっかりと受け止めてほしい。視聴者センターのサービス向上をしてほしい」。
「最近、学校でテレビの話題で問題視されるのは『政治』についてです。テレビは政治と国民をつなぐにあたってかなり大きな役割を果たしており、同時にかなり大きな影響力を持っています。与党と野党の”あげあし取り”が続き、重要な国事がおざなりにされつつある今、テレビ業界まで与野党の”あげあし取り”を面白がってしまっては、国民の政治不信を煽るだけで、現在政治が行われる上で重要なことは何なのかを国民が考えることなく、ただ与党の支持率が下降して解散して…を繰り返すだけだと思います。私は現在の日本は政治家も国民も政治を甘く考えすぎていると思います。テレビはその他のメディアがそのような負の風潮に流されることなく、適切な報道をしていってほしいと思います」。
「新聞に載っていたモニター募集の広告を母に見せられ、『大嫌いなテレビとやらに文句言ってやろう!』と応募し、選ばれたのはいいですが…。最後にもの申します。ひとりだけ、番組を見ていてどうしても不快に感じる芸能人がいます。島田紳助氏です。彼は番組をあまりに自分のものにしすぎているように見えます。そして特定の芸能人を贔屓しているのが見え見えなのです。あれでは視聴者はあまり楽しめないのではないかと思います。ある雑誌のインタビューで、放送作家の鮫肌文殊氏が言っていました。バブル崩壊後、”オモシロイこと”だけを追求していればそれで良かったノリは現場から完全に消えた。ニッポンのTVバラエティーは『見ていてとてもためになる明日役に立つ雑学番組』だらけになっている、と。私もその通りだと思います。時代ごとに視聴者のニーズは変わりますが、いつの時代も変わらない、普遍的なおもしろさ、楽しさが、テレビにあると信じたいです」。
さらにもう一つ、今回の大震災に関する意見も数多く寄せられた。
「先日発生した東日本大震災で、メディアの大切さを改めて感じました。CMが消え、全ての時間において地震に関する詳しい情報を知ることができました。テレビというものは私の中では近年、『人々を楽しませるもの』『人々を喜ばせるもの』だと断定していましたが、今回の地震で改めて『人々に正しい情報を与えるもの』のあり方を感じました」。
「私は高校で放送部に所属しています。一年間BPOのモニターをさせていただいて、更に放送というものに対して深く興味を持つようになりました。この度の東日本大震災のことを、西日本に住む私も、放送という伝達手段のおかげでタイムリーに知ることができました。ただ、ヘリコプターからの映像を見た時、『どうして早く助けにいってあげないの!?』という焦燥感を感じました。浸水して孤立した病院の屋上で『SOS』や『食料』とビニールテープらしきもので記し、白い布を振って助けを求めておられた職員の姿を、報道ヘリのカメラが捉えていました。放送を見た救助隊の方がきっと救助に向かって下さるに違いないと、私は祈りました」。
「11日の地震のとき僕は生徒会の仕事で学校にいたため”帰宅難民”として、約300人の生徒と一緒に学校で1泊しました。非常用の水や乾パンをもらい、椅子をつなげて眠ろうとしましたが、余震や携帯が何度も鳴り響き一睡もすることができませんでした。そして次の日、テレビで運転再開の報道があった後、1時間も時間をつぶしてから向かったのに駅は人であふれていたので、とても驚きました。テレビの地デジ化の最大の売りは、データ放送のはずです。もっと、きちんとした列車の運行状況を、テレビがリアルタイムでできたら、混乱を防げたと僕は強く思いました」。
「私は地震の時、学校にいました。学校では直ちに全員グラウンドに避難しました。震度5の揺れも、避難も人生初めてなのでパニックになりました。地震の影響で電車もストップしてしまったので、2時間近く歩いて家まで帰り、停電していたのでラジオを聴き、初めて東日本でのM8.8の地震だったのかと気づきました。そこからは約15時間という長い停電が続き、夜も本当に真っ暗で、ラジオという存在は唯一の情報を得ることができる貴重な存在でした。長い夜をずっとラジオの地震速報に耳を傾け、乗り越えました。停電になったからこそ気づけた『情報』という存在のありがたさ。今、こうしていつもの生活を送れるのは、テレビ、ラジオなどの情報網があるからかもしれません」。
「ラジオについては東日本大震災で大いに役立っているのではないでしょうか?毎朝ラジオを聴いていた僕はラジオへの抵抗もないので、夜間の余震や停電など心細い時、大変役に立っています。テレビが『映像で被災地の現状を発信している』のに対し、ラジオが『声でリスナーの気持ちを代弁している』ということを感じ、ラジオはそれによってリスナーの「自分は1人じゃない」意識を高めてくれたのではないか、とも思いました」。
【委員の所感】
- 皆さんが届けてくれる毎月のリポートは、まるで隣の若い友人が語りかけてくるようでした。「自分とは違う意見があることを発見できた」「新しい見方を教えられた」「同じ番組でも異なる感想があり参考になった」「考えながらテレビを見るようになった」「放送の問題を深く考えるようになった」。これらの意見は、皆さんがいかに注意深く賢明に放送番組と接してきたかを物語ります。皆さんの声に放送の明日を見ることができました。
- 今回の大震災は、日本史にはもちろん世界史にも刻まれるでしょう。その影響が、日本だけではなく、世界に広がっているからです。複数の原子炉が大きな事故に見舞われるのは世界で初めてのことです。NHK・民放各局の放送は、そのことに出来る限りの想像力を働かせているだろうか、と思いつつラジオを聴きテレビを視聴しています。ケータイやツイッターなどのソーシャルメディアがなかったら、情報の受発信はどうなっていただろうかとも考えています。モニターの皆さんも、そのことに思いをいたしながらテレビやラジオに接していただければ幸いです。
- 中高生モニターのみなさん、一年間お疲れさまでした。1000年に一度といわれる大震災報道を連日みなさんも目にしていることと思います。歴史的な大震災を中高生のみなさんがどのように感じ、どのように行動し、どのように考えていくのか。1年間のモニター体験を生かしながら、ぜひ報道のあり方やテレビが持つ力についてさまざまな角度からテレビをご覧ください。みなさんの柔軟な思考と感性に希望を託したいと思います。
- 一年間ご苦労さまでした。私が皆さんに最後のメッセージとして贈りたいのは、政府の発表と、原子力安全・保安院(経済産業省)、そして東京電力の発表をどう見るか、ということです。基本的には、官房長官は「安全だ、安全だ」と言いながら、事態はここまで深刻になってきました。保安院、東京電力も「わからない」とか「大丈夫だ」と言いながら事態をここまでこじらせてしまっています。私の情報源の人たちは、3月11日、12日の時点で、現在の事態を予測していました。「原子力がキチンとわかる人なら、こうなることは最初からわかっている筈です」と口をそろえます。その意味は、今回のような、国家、あるいは地域、そして人間が滅亡するかどうかという時に、権力側の嘘、まやかし、メディアのいい加減さ、権力への迎合などをどう判断するか。それを若いうちから、皆さんに養っていただきたいと思っているからです。みなさんの若い感性と柔軟な頭脳に期待します。
- 皆さんが1年間本当に真剣にモニター報告に取り組んでくださったということがとてもよく分かりました。たくさんの人が、それまでのダラダラ視聴から意識的な視聴に変わったと書いてくださいました。毎月文章にするのは大変だったことでしょう。私は企画書を作成するのは大変だろうと思っていたのですが、大変だったけれど面白かったと書いてくださった方が多く、とても意外でした。「企画書作成」企画が当たったということですね!!「大変だけど面白い」というのは、とってもいいですね。みなさんの意見が番組に反映されていないという厳しい意見をくださった方もいましたが、私も同感です。私たち青少年委員も、中高生モニターの意見が番組に反映されるように、智恵を出し合っているところです。でも何事も一気に成果は現われません。続けていくことが重要だと思っています。皆さんも1年間のモニター経験を生かして、違うところでも「番組に物申す」姿勢を続けて下さい。
2011年度中高生モニターについて
2月25日から募集を開始した、「2011年度中高生モニター」には全国から197人の応募があり、その中から中学生22人、高校生12人の合計34人を選び、4月からの1年間モニターリポートを送ってもらう。4月のテーマは、「東日本大震災」報道について、率直な意見や感想を書いてもらうこととした。