放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第195回

第195回 – 2013年3月

イレッサ報道事案の審理
国家試験事案の審理…など

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の「委員会決定」案を了承し、本事案の決定に関する通知・公表を3月28日に行うことになった。「国家試験の元試験委員からの申立て」事案の「委員会決定」案を了承し、本事案の決定に関する通知・公表を3月29日に行うことになった。

議事の詳細

日時
2013(平成25)年3月19日(火)午後4時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員
オブザーバー出席:曽我部真裕氏(4月度就任新委員)

1.「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が2011年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性や正確性、公正さに欠けた報道により人権を侵害されたと申立てがあったもの。
この日の委員会では「委員会決定」の最終案を検討した。事務局が本文を読み上げながら内容を確認するとともに一部表現や字句の修正等を行い、決定案を了承した。
これにより、本事案の「委員会決定」に関する通知と公表は3月28日に行われることになった。なお、一部委員が、多数意見とは結論の異なる少数意見を書くことになった。

2.「国家試験の元試験委員からの申立て」事案の審理

本事案は、TBSテレビが2012年2月25日に放送した『報道特集~「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」』で、国家資格である社会福祉士の試験委員だった大学教授が、過去問題の解説集を出版するなど国家試験の公平・公正性に疑念を招く行為があったと放送され、名誉と信用を毀損されたと申し立てたもの。
この日の委員会では「委員会決定」最終案を検討した。事務局が本文を読み上げながら内容の確認と一部字句の修正を行い、最終的に決定案を了承した。
これにより、本事案の「委員会決定」に関する通知と公表は3月29日に行われることになった。なお、一部委員が、多数意見とは結論の異なる少数意見を書くことになった。

3.審理要請案件~審理対象外と決定

原爆による放射線被曝の調査・研究機関からの申立てについて、審理対象外とすることを決定した。
申立ての対象となったのは在京テレビ局が2012年7月に放送した番組で、当該研究所の知られざる実態を初取材したとしてその活動について報道した。
番組では、原爆投下による放射線の人体への影響に関する世界的権威である研究所が、これまで内部被曝に関する取り組みを軽視してきたとし、福島第一原発の事故でも福島の人の不安に応えられず、内部被曝のデータが欠落している研究所に今後もリスクの解明ができるか疑問である等と伝えた。
この放送に対し研究所は、「研究所が内部被曝調査を実施して来なかったとの重大な事実誤認をもとにした構成であり、憤りを禁じえない」等と局に抗議、放送による名誉毀損を訴え、局に対し謝罪等を求めて委員会に申し立てた。
申立てに対し局は、「番組は、放射線調査において世界的な権威を持つ研究所でさえ、予期せぬ福島の被災者の、内部被曝への不安に応えられない現実と、その現実を生んだ背景を伝えたものである」とし、「極めて公的な性格と社会的意義や影響を有する事業内容・成果に対する報道」の是非については「公の言論の場で批判検討されるべき」と主張した。
委員会は、委員会運営規則第5条(1).6「団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる」に照らし、審理入りするかどうかについて慎重に検討した。
この結果、本件申立てに係る団体については、原爆被爆者に対する放射線の影響調査を重点として、放射線の人に及ぼす医学的影響およびこれによる疾病の調査研究等を行ってきたこと等、その沿革や研究内容、また、日米両政府が経費を分担して共同で管理運営していることなどから、その組織や活動に高い公共性を有し、かつ、一定程度の情報発信力も備えていると認められるとし、「委員会による救済の必要性が高いなど相当」とみなすことはできないとして審理対象外とすることを決定した。

4.大津いじめ事件報道への申立て事案の審理

本事案は、フジテレビが2012年7月5日と6日の『スーパーニュース』において、大津市でいじめを受けて自殺した中学生の両親が起した民事訴訟の口頭弁論を前に、原告側準備書面の内容を報道した際、加害者とされる少年の実名部分にモザイク処理の施されていない映像が放送され、少年の名前を読み取れる静止画像がインターネット上に流出したとして、少年と母親が放送によるプライバシーの侵害を訴え、局に謝罪等を求めて申し立てたもの。
この日の委員会では、双方から提出された文書・資料に基づく各々の主張内容と本事案の論点について、事務局がまとめた資料により説明した。
次回も審理を続行する。

5.大阪市長選関連報道への申立て事案の審理

本事案は、朝日放送が2012年2月6日に放送した『ABCニュース』(午前11時台)において、2011年11月の大阪市長選挙で市交通局の労働組合が、「現職市長の支援に協力しなければ不利益があると職員を脅すよう指示していた疑いが独自取材で明らかになった」と報道したことに対し、交通労組と組合員が名誉や信用を毀損されたとし、局に謝罪等を求めて連名で申し立てたもの。内部告発情報に基づくスクープ報道だったが、約1か月後、この情報は内部告発者自身による捏造であることが分かった。
この日の委員会では、双方から提出された文書・資料に基づく各々の主張内容と本事案の論点について、事務局がまとめた資料により説明した。
次回も審理を続行する。

6.テレビ神奈川より対応報告書

昨年11月、『無許可スナック摘発報道への申立て』事案で「勧告」を受けたテレビ神奈川より、「委員会決定」の通知を受けて後の対応と取り組みをまとめた報告書が2月26日付で提出された。
この日の委員会で基本的に了承されたものの、放送倫理の向上に向けた今後の取り組みとして記載された事項に関しては、その具体的な実施状況や成果について、委員会として今後さらに報告を要請することとなった。

7.その他

次回委員会は4月16日(火)に開かれることとなった。

以上