2010年11月に視聴者から寄せられた意見
尖閣ビデオ流出問題や北朝鮮による韓国延坪島砲撃など国内外の重要ニュースが相次いだ。衝突事件のビデオがインターネット上に流出し、数日後、海上保安庁職員が漏えいさせたことを名乗り出た件では、職員の行動に賛否両論あった。報道のありかたについても、「センセーショナルに扱いすぎる」「英雄視することはまずい」など様々な意見が寄せられた。
11月に電話・FAX・郵便・EメールでBPOに寄せられた意見は1,064件で、10月と比較して395件減少した。意見のアクセス方法の割合は、Eメール64%、電話32%、FAX2%、手紙ほか2%。
男女別では男性69%、女性28%、不明3%。
世代別では30歳代31%、40歳代25%、20歳代20%、50歳代12%、60歳以上9%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。11月の通知数は398件[34社]であった。
このほか放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、36件を会員社に送信している。
意見概要
人権等に関する苦情
11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・ 1件
(個人又は直接の関係人からの要請)
番組全般にわたる意見
11月の視聴者意見は1,064件と先月より395件少なかった。
尖閣ビデオ流出問題や北朝鮮による韓国延坪島砲撃など国内外の重要ニュースが相次いだ。国会での補正予算案審議をめぐる菅内閣の行き詰まり感など、政治・報道に関する意見や批判が多かった。衝突事件のビデオがインターネット上に流出し、数日後、海上保安庁職員が漏えいさせたことを名乗り出た件では、職員の行動に賛否両論あった。報道のありかたについても、「センセーショナルに扱いすぎる」「英雄視することはまずい」など様々な意見が100件近く寄せられた。国会は補正予算案の審議がすすめられたが、小沢氏招致問題や柳田法務大臣の失言による辞任、さらには仙谷官房長官らの参院での問責決議案可決などもあり、各種世論調査で菅内閣の支持率が大きく下がった。
耳かき店員ら2人殺害事件の裁判員裁判の報道では、裁判員に心理的影響を与えかねない発言があったなどの批判や、被害者の生前の映像を何度もテレビで出すのは好ましくないとの意見があった。
人気俳優の夫人が自殺した件で、テレビの取材陣が執拗に追いかけ回してインタビューしようというのはあまりにも不謹慎だという苦情意見が多かった。このほか占い師のやらせ疑惑や、「太った女性特集」「魔女」「セレブ」などという女性を貶める言葉や過剰な演出などにも批判があった。
ラジオに関する意見は41件、CMに関する意見は49件あった。
青少年に関する意見
放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は107件で、前月より約30件減少した。
今月は、低俗・モラルに反するとの意見が20件、性的表現に関する意見が19件と並び、次いで残虐シーンに関する意見が10件、いじめに関する意見が9件と続いた。「低俗・モラルに反する」および
「性的表現」については、いずれもバラエティーとアニメに対する批判的な意見が目立った。残虐シーンについては、夜9時放送の単発ドラマの番組宣伝スポットに対し、死体描写などが残虐で子どもの視聴する時間に相応しくないとの意見が寄せられた。
意見抜粋
番組全般
【取材・報道のあり方】
- 中国漁船衝突事件のビデオ流出問題だが、国民の感情は別にして、ユーチューブに流出したこと自体は違法だと思う。それをそのままテレビで放送することも違法取材ではないか。「既にネットでオープンになっている」ということは関係ないと思う。いずれにしても今回の告発がネットであるということは、現在の新聞・テレビへの国民の不信感を表していると感じる。テレビ報道のありかたを真剣に考えるべきではないか。
- 衝突の映像を漏えいさせた者を「英雄視」するような報道が目立つ。こうした姿勢は非常に危険である。政府決定が気に入らなければ、あるいは国民が望んでいれば、政府の決定を無視し、覆すような行動をとっても許されるべきだという報道だ。政府の対応が気に入らないことと、公務員が政府の決定に従わないこととはまったく別次元の話だ。「国民の後押しがあれば政府決定を待たずに行動したり、無視したりしてもかまわない」といったメッセージを公務員に与えてはいけない。
- 尖閣ビデオ流出事件の報道で、各局とも共通して「国民の知る権利」に応えてくれたとして、流出させた行為を評価していた。しかし、それを言うならなぜ放送局はビデオ非公開について、理由を明かすよう政治家に迫らなかったのか。自分たちは何もせず、海上保安庁の一職員の行為を正当化するのはおかしい。
- 尖閣ビデオ流出で海保職員が名乗り出たが、まだ容疑者の段階なのに、住まいに捜査員がなだれ込むように入り、カメラは家の中まで映していた。まだ犯人ではないし罪を問われているわけでもない。もし罪に問われない場合はどうやって責任をとるのか。視聴率をとるための過剰な報道だと思う。
- マスコミがこぞって世論調査を実施し、それを材料に政府批判を行っている。「小沢招致」「尖閣」「北朝鮮砲撃」などの世論調査結果を民意だと取り上げ、政府を批判している。国民の最大の関心事は、国民生活の安定だ。マスコミ権力が、偏向した世論調査で民意をねじ曲げ、国政を混乱させている。
- ワイドショーなどの情報番組で、世論をミスリードするような危うい報道が多い。例えば「政策に関する街頭アンケート」を実施しているが、この結果はあまり信用できない。通行人がわざわざ立ち止まってアンケートに応じるのは、もともと政治に不満があるからだ。逆に現政権に特に不満がないなら、立ち止まったりしないだろう。つまり、アンケートから得られる結果など大体予測できるものだ。回答者数が高々50人程度であることも合わせると、「街頭アンケート」をまるで世論調査結果のように大げさに扱うことは危険だ。
- 耳かき店店員殺害事件の裁判で、「無期懲役は納得できない」という遺族の主張を報道していた。裁判員が下した「無期懲役」は、議論を尽くした上でのもの。遺族に対する一連の取材を過度に報道することで、裁判員を傷つけることになるのではないか。視聴者に一方的な印象を与えたように思う。裁判員裁判の報道について慎重を期すようお願いしたい。
- 耳かき店の店員殺人事件について、被害者の生前のビデオを何度も流して視聴者の悲しみを煽ることはやめてほしい。許しがたい殺人事件であり、痛ましいことであるのに、何の必要があって生前の映像を流すのか。どの事件や事故の報道にも言えることだが、見ている側としてはいたたまれない気持ちになる。遺族の気持ちを考えているのか。
- 各局とも松平健さんの妻が亡くなったことについて報道していた。松平健さんに「奥様が亡くなられたことについてどう思われますか」「もうご対面なさったのですか」などとインタビューしていたが、彼の立場に立ってみればこのインタビューがどれほど下品なものかわかるだろう。家族を亡くした人の気持ちなど、わざわざ聞く必要はない。
- 民放各局で、「トラブルで重傷を負った市川海老蔵」の父・市川團十郎の緊急会見をこぞって放送している。32歳の大人が飲酒して殴られただけの事件だ。わざわざ父親が出て来て記者会見をする必要もなければ、テレビ局が騒ぐ必要もない。
- 他人の不幸は蜜の味。日本のメディア、特にテレビでは、政治、芸能、スポーツあらゆる分野の根底に、この”他人の不幸は蜜の味”的な考え方があるのではないか。何か不祥事や揉め事が起こると、水を得た魚のように追いかけ回し、コメンテーターなどは専門分野でないにもかかわらず、「世論では」や「世間では」といかにも大衆の意見として自説を披露している。きちんと精査して公平性を担保した情報を流してほしい。
【番組全般・その他】
- 開始時刻を定時ではなく、5分ほど早めてある番組がある。これが非常に不便だ。例えば7時台はこの局、8時台は別の局のこの番組などと、局をまたいで「予約」しようとすると、たった数分オーバーラップしているだけで、「すでに予約されている番組があるので予約を取り消しますか」などと拒否されてしまう。せっかくデジタル放送で便利になったのに、視聴者の利便性をまったく無視しており、時代に逆行している。これは一つの放送局だけでは解決できない問題だと思う。是非、放送界全体で話し合って解決していただきたい。
- 完全地デジ化に向けて、視聴者は高額のテレビを買わされている。しかし、地デジになって情報量が増え高画質になったのに、放送される番組はお粗末なバラエティー番組ばかりだ。いくら高画質になっても、お笑い芸人や不細工タレントばかりが出演しているのでは意味がない。視聴者に高額の出費を強要したのなら、それに見合う番組作りをすべきだ。
- 話し方がとても「早口」になっている。昔のアナウンサーは、男女とも美しく話す方が多く、そのような発声、発話技術を持つ方だけが、アナウンサーになれるものだと思っていた。ところが、最近の番組では、ニュースからバラエティー、スポーツ解説などに至るまで、ひどい早口で、滑舌も悪く、言葉を聞き取れないことが多い。文法的に間違えている日本語や文脈に沿わない日本語の使い方も多く、日本語がこのまま衰退していくのかと思うと残念だ。正しい日本語で落ち着いて話してほしい。
- バレーボールや野球など、スポーツ番組を延長する場合があるが、デジタル放送になったので延長部分はサブチャンネルで放送するべきだ。そのためのデジタル放送だと思う。バレーボールでいろいろと延長があり、録画などに苦労した。
- ニュースなどでよく耳にするが「イノシシやクマが畑などを荒らすので困る」という。しかしよく考えてもらいたい。動物たちが山から降りてくるのは、我々人間たちが勝手に動物たちの住み家を壊しているからではないのか。クマたちだって、できれば山を降りたくはないはずだ。彼らも食べていかないといけない。それなのに、勝手な人間は「クマだ!イノシシだ!」と大騒ぎした挙句、殺している。少しは動物たちのことを考えてほしい。
【ラジオ】
- 私は緑内障で片目が見えないのでラジオが貴重な情報源になっている。最近、私が聞いている放送では「近畿地方イコール関西」という意味で使われることが多く、「『逢坂の関』より西を関西」とする本来の意味とは違うと思い放送局に電話をした。すると電話口に出た担当者に「そんなことどうでもいいのだ」と非常に失礼な態度で怒鳴りつけられた。これほどまでに横柄な態度をとることが許されて良いのか。非常に腹立たしい。
- 夕方の早い時間からエロをテーマに放送している。卑猥な内容を連呼していて聴くに堪えない。許せないことは「おっぱい検定」といって、女性の胸のサイズを延々と話していた。女性をモノ扱いされているようで大変不快だった。放送局に苦情を入れようと思ったが、個人情報を登録しないと意見を送れない。
【CM】
- 本編が始まった後で、スポンサー名を画面中央に表示し、同時に提供クレジットも流している。時間にして17秒ほどだが、その間もドラマは進行する。スポンサー名のアナウンスに隠れて、せりふが非常に聞き取りにくい。ストーリーそのものへの影響は小さいのかも知れないが、しっかり見たい人には大変迷惑だ。他の番組でも本編の間、画面の隅に予告編やCMなどを表示することがよくあるが、この番組の場合は明らかに行き過ぎだ。
青少年に関する意見
【低俗、モラルに反する】
- バラエティー番組で、ある芸人が「小学生にお金を渡して少年誌を買いに行かせる」と話していた。知らない大人に話しかけられても無視するように子どもに教育しているのに、「お金をあげるから」と言われていうことを聞いてしまう話をされると教育上困る。芸人だから面白く話すことはよくあるだろうが、子どもの好奇心をいたずらに煽ることはいかがなものか。
- 子ども向け番組で、おませな小中学生のファッション事情として高価なブーツなどの派手なファッションを紹介していた。これを見た地方の子どもが「東京の女の子はこんなにかわいい格好をしている。私もそうなりたい」と思い、過度に高価なものを欲しがっては困る。このようなくだらない企画はやめてほしい。
【性的表現に関する意見】
- 深夜のアニメで、過激な性描写が多く見られる。原作は18禁アダルトゲームのようだが、今後のストーリー展開では主人公が実の妹と恋愛関係になる近親相姦の話のようだ。このような番組を放送するのは問題ではないか。
- 夕方のアニメ番組だが、放送時間上内容を再考すべきだ。不必要なキスシーンや性的表現に結び付けるような内容が多々あり、子どもが見る時間に放送するのはいかがなものか。同局の過去の同時間帯の作品は人気の高い物が多いが、どれも性的表現が含まれている。このような状況はあまり良いとは思えない。放送局は問題を軽視しているのではないか。
【残虐シーンに関する意見】
- これから放送されるドラマの番組宣伝を見た。バットを振り回す殺人シーンや無抵抗な人間を殴るシーンなど、暴力的な場面が強調されており不愉快だ。子どもが帰って来る時間帯にも流されているので悪影響も懸念される。番組と違い、番組宣伝はいつ放送されるかわからないので避けようがない。過激なシーンを放送するのであれば、深夜の時間帯にするなど考慮するべきだ。
【いじめに関する意見】
- 芸人が大勢でその場にいないタレントの悪口をクイズにして笑うという内容で、気分が悪くなった。番組に関係のない人を勝手に巻き込み、しかも馬鹿にするのは許せない。いじめ以外の何ものでもない。子どもに「いじめをするな」と言いながら、大人が平気で人の悪口を言っていじめる。これでは世の中からいじめがなくなるわけがない。
- お年寄りの言動を笑い物にするバラエティー番組。面白くも何ともなくただ不快だ。他には面白い企画もあるので大変残念である。同局は別の番組でも同様にお年寄りにクイズを出し、的外れな回答を笑い物にしている。人を傷つけても笑いさえ取れればそれでいいのか。子どもはこういう内容を見て人をいじめることを覚えるのだろう。
【動物に関する意見 】
- ペットランキングの紹介コーナーで、モモンガが威嚇する姿がかわいいということでわざと何度も脅して威嚇させていた。その他にも、安易に珍しいペットをすすめており大変憤りを感じた。子どもにも悪影響だ。動物のことを扱うなら、出演者は動物に関してもっと勉強するべきではないか。見ていて本当に動物が可哀想だった。
- バラエティー番組で、生き物を殺したり食べたりするなど非常に凄惨な内容だった。うつぼを槍で突き刺しゲラゲラ笑っている場面で、私の娘は「かわいそうだ」と泣き怯えていた。魚などを獲っては「とったどー!」等と満足げに話しているが、もっと生き物を大事に扱うべきではないか。テレビ局にとっては視聴率アップが狙いなのだろうが、視聴者の立場に立った内容で番組を制作してほしい。
【報道に関する意見 】
- 自殺報道、特に子どもの自殺に関する報道はやめるべきだ。自殺が多くなっているのは、報道によって連鎖が発生しているからだと思う。放送局は受け手に何を期待しているのか。報じるのであれば、少なくとも全国放送ではなくローカルで十分である。報道は自殺を誘発しかねないこととその責任を自覚すべきである。
【推奨番組に関する意見】
- アメリカの同性愛事情について取り上げていた。私も同性愛者だが、世界の状況を知る機会があまりないのでこのような番組はありがたい。番組中に「君たちは一人じゃない」という言葉が出てきた。同性愛者は自分が周りと違うと気付いた時から誰にも相談できずにいることが多いため、このような言葉は救いになる。「性に関する番組=青少年に不適切」ではなく、悩んでいる人に対して情報発信することも大事だ。
【言葉に関する意見】
- 平仮名を漢字に直すクイズで、問題は「うちゅう人」だった。回答者が「宇宙人」と答え、書き順は違っていたが正解とされた。小学生の子どもから「書き順が違うのにどうして正解なのか」と問われ説明に困った。ちょうど学校で漢字の書き順を習っているところだ。細かいことだが、こういう点は補足コメントを入れるなどして配慮してほしい。
【危険行為に関する意見】
- タレントが足の指の間にダーツを落とすという危険行為をしており、それを見た他のタレントは「すごい」とほめたたえていた。その後、家で子どもが真似しようとしてびっくりして止めた。何気なくつけていた番組だったので今後は見ないよう気をつけるが、多くの人が見る時間帯に放送されている以上、このような内容は困る。笑いは何でもありではない。お笑いは好きなので、今後こういうことがないよう注意していただきたい。
【視聴者意見への反論・同意】
- 「子どもに悪影響」という意見が目につくが、自分たちも子ども時代があったはず。昔はもっときわどい描写が蔓延していたが、そうした番組を見て大人になり、犯罪者にもなっていない方々が意見を述べているのではないか。もっと自分や周りの子どもたちを信じてほしい。それでも心配ならば、子どもの見るテレビ番組をきちんと管理し、家族団らんの時はテレビをつけないなどの努力をしたらいかがか。
- 何か事件があるたびにメディアを有害とする風潮が目立つが、昔のテレビは現在では放送できないものが多かった。「子どもに悪影響だからやめろ」といった意見により放送内容が変わることがあるが、子どもに影響があるならその番組を見せないという判断はできないのだろうか。子どもが見た時は、「これは悪いことだ。普通の人は真似してはいけない」と注意した方が子どもの判断の教育にもなる。
【CMに関する意見】
- 「ゲームが無料」と謳っているSNSのサイトのCMが多い。実際に性被害や詐欺、騙しなども起きており、実質的には出会い系サイトだ。知らない人同士の連絡についてCMで注意を促している訳でもない。CMで紹介しているゲームの内容も、恋愛ゲームやタレントを起用しての関係のない話などで、見ていて不愉快極まりない。こういったCMをかなりの回数放送していること自体が問題だ。