放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第192回

第192回 – 2012年12月

国家試験事案のヒアリングと審理
審理要請案件:「大阪市長選関連報道への申立て」~審理入り決定…など

「国家試験の元試験委員からの申立て」事案のヒアリングとヒアリング後の審理が行われ、「委員会決定」の作成に当たる起草委員会が発足した。大阪市長選挙関連報道をめぐる申立てについて審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2012年12月18日(火) 午後3時~8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「国家試験の元試験委員からの申立て」事案のヒアリングと審理

本事案はTBSテレビが今年2月25日に放送した報道特集「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」で、国家資格である社会福祉士の試験委員会副委員長を務めた大学教授が、過去問題の解説集を出版するなど、国家試験の公平・公正性に疑念を招く行為があったと放送され、名誉と信用を毀損されたと申し立てたもの。
この日の委員会では申立人、被申立人から個別にヒアリングを行い、詳しく事情を聞いた。
申立人側は申立人ら2人が出席した。
申立人は問題とされた著作について、「国家試験の過去問題のなかに社会福祉士が求められている法的な知識や見方が凝縮されていると考え、取り上げた。一般の受験対策本とは質、量ともに違う」とあらためて著作が問題視されたことに反論した。また著作で取り上げた問題と似た問題が翌年に国家試験で出題されたとされるなど、あたかも申立人が試験問題を漏えいしたかのような印象を与える番組の作りになっており、さらに顔写真を繰り返し使用するなど申立人への個人攻撃が行われたと主張した。
一方、被申立人側のTBSテレビは番組担当者ら4人が出席し、「申立人が『この程度のこと』で問題にされたという認識であることに驚いた。我々は申立人の行為が国家試験の根幹にかかわる公平・公正性に疑念を招くものだったと考えており、本当に『この程度』のことだったのかどうか委員会で判断してもらいたい」と述べた。さらに申立人が著作で取り上げた問題と似た問題が翌年の国家試験に出題された等としたことについて、一般の受験生からは、申立人が自ら教える大学の学生にヒントを出したという受け取り方をされかねないことを問題視したのであり、放送では、申立人が問題を漏えいしたのではないかという印象を与えることのないよう細心の注意を払ったと強調した。
ヒアリング後も審理を行い、申立人に試験委員としてふさわしくない行為があったかどうかや、番組が必要以上に申立人への個人攻撃になっていなかったかどうかなどについて議論した。また試験委員会の副委員長という立場がどこまで公人として批判を甘受すべきかなどについても意見が交わされた。
この結果、「委員会決定」の作成に当たる起草委員会を年明けに開き、来月の委員会では起草委員会から決定案の提出を受けてさらに議論を続けることになった。

審理要請案件:「大阪市長選関連報道への申立て」審理入り決定

上記申立てについて審理入りが決まった。
対象となった番組は、朝日放送が本年2月6日に放送した『ABCニュース』(午前11時台)。2011年11月の大阪市長選挙において、市交通局の労働組合が友人・知人紹介カードの回収リストを作成し、その中で「現職の平松市長の支援に協力しなければ不利益があると職員を脅すよう」指示していた疑いが独自取材で明らかになったと報道した。大阪維新の会の市議会議員に持ち込まれた内部告発に基づくスクープ報道だったが、約1か月後、市当局の調査により、この回収リストが内部告発者自身による捏造だったことが判明した。
この報道に対し、団体としての大阪交通労組と組合員が連名で申し立てた。申立書において申立人は、「報道は組合が当該リストに関与していた疑いを不当に強調し、組合の社会的信用と名誉を大きく傷つけた。申立人組合員らも悪辣で反社会的な存在とされ、人格否定の罵詈雑言を受けた」等とし、朝日放送にどのような裏付け取材をしたのかを問うとともに謝罪と訂正放送を求めている。
これに対し朝日放送は局の見解で、「当該回収リストは、大阪市政への調査権を持つ大阪維新の会の市議が、職員証による身元確認を経た内部告発者から入手したものだ。このリストの存在そのものが、国民の知る権利に応える高いニュース性を持つと判断し報道した。弊社同様、多くの報道機関が当日中に報じている。弊社はその後、リストが内部告発者による捏造だったと判明したこと等についても順次、報道している」等と反論している。
委員会では、双方から提出された文書と資料、及び番組同録DVD等をもとに検討した結果、本件団体からの申立ては委員会運営規則第5条1.(6)(※条文は下線部分をクリック)に該当し、要件を充たしているとして審理入りすることを決めた。
また、組合員個人からの申立てについても団体としての申立てを審理する一環で審理の対象に含めることとなった。
次回委員会以降、実質審理を行う。

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性や正確性、公正さに欠けた報道により人権を侵害されたと申立てがあったもの。フジテレビは、番組に人権侵害も放送倫理に抵触する部分もないと反論している。
この日の委員会では、12月6日に開かれた起草委員会を経て提出された「委員会決定」案をもとに審理が行われた。起草委員がポイントについて説明した後、各委員が意見を述べ、委員会が示す結論の方向性を中心に議論した。この結果、1月上旬に第2回起草委員会を開いて第2次案を作成し、次回委員会ではこれをもとに審理を重ねることになった。

その他

  1. 衆議院議員選挙の実施に伴い延期された放送人権委員会委員と東北地区BPO加盟放送事業者との意見交換会が、2013年2月20日に盛岡で開かれることが決まった。

  2. 次回委員会は2013年1月15日(火)に開かれることとなった。

以上