第163回 – 2010年7月
「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理
「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理 ……など
「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理が行われ、「委員会決定」の方向が固まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の「委員会決定」修正案について審理し、大筋で了承を得た。このほか、審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。
議事の詳細
- 日時
- 2010年 7 月20日(火) 午後3時~8時15分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理
「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理
審理要請案件、審理入り決定
6月の苦情概要
その他 - 出席者
- 堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員
「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理
本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士が肖像権の侵害等を申立てたもの。
今月の委員会では、申立人および被申立人であるTBSに対するヒアリングと、ヒアリングを受けての審理を行った。
申立人は、最も訴えたいこととして「TBSは1回目の放送では申立人らに無断で、申立人らが登場する少女の機能訓練の映像を長々と使用した。2回目の放送では、申立人らにとっては不本意な字幕表記を映像に加えただけだった。しかも、そのように多くの映像を使用しながら、申立人らに対し何ら取材も行わないなど、番組に登場した他の人物と比較すると扱いが軽んじられた」と述べた。
一方、TBSへのヒアリングには報道局の番組担当者ら計4名が出席し、「番組の目的や趣旨から機能訓練の映像は欠かせないものであり、少女の親が撮影した映像であること等から、申立人らが登場しても特に問題はないと判断した。とは言え、申立人からの苦情を受けて、やはり配慮が足りなかった面もあったことは認めて謝罪した。その後のやり取りでは、報道番組である当番組において申立人らの活動の宣伝にならないよう、その点に特に注意して対応した」などと述べた。
ヒアリングの後の審理では、本件報道において申立人が主張している肖像権の侵害があったかどうかを中心に議論した。その結果、「委員会決定」の方向性がほぼ固まり、起草委員が決定案をまとめることになった。
次回8月の委員会で、起草委員会を経て提出される「委員会決定」案の審理を行う。
「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理
この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者の遺族が申し立てたもの。
今月の委員会では、2回目の起草委員会を経て修正された決定案が審理され、大筋で了承された。若干の手直しのうえ、持ち回り委員会により最終了承される運びとなった。また、一部の委員は決定案を支持する立場で「意見」を書く意向を示した。 本事案で申立人は、事実に反する放送内容によって両親に対する敬愛追慕の情や名誉を侵害されたなどとして、謝罪と訂正を求めている。
これに対し、テレビ朝日は、放送内容は虚偽ではなく名誉侵害などの不法行為はないと反論している。
審理要請案件「大学病院教授からの訴え」、審理入り決定
テレビ朝日・朝日放送は2010年2月28日の『サンデープロジェクト』の特集コーナーで「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」を放送した。この番組に対して大学病院の教授から人権侵害等の申立てがあった。
番組は、医療をめぐる裁判では、原告側(患者側)が勝つ割合が一般の民事裁判に比べてはるかに少ないが、これは医療界に根強い隠蔽体質にも原因があるとして、これを告発し続けるある大学病院医師の活動を通して医療界の現状を浮き彫りにしようとするものであった。そして、医師の勤める大学でも、かつて患者が薬の臨床試験をめぐって起こした裁判で、医師の探し出した記録がもとで患者側が勝訴したことや、こうしたことがもとで医師が上司である教授からパワーハラスメントを受けたことを取り上げ、教授に対して直撃インタビューを行っている。
これに対して教授は「拒否したにも関わらず、自宅前でいきなりインタビューされたのは自分に対する著しい人権侵害であり、番組自体も一方的な偏向報道である」として3月にテレビ朝日に対して抗議した。
抗議の後、テレビ朝日と教授との間で2回にわたり文書や電話によるやり取りが交わされたが、話し合いは進展せず、教授は5月末に申立てを行った。直接交渉は申立て後も継続されたものの、結局、解決には至らなかった。
このため、委員会は今月の委員会で双方から提出された文書や番組DVDを基に審議した結果、本案件は運営規則に定められた要件を満たしているとして審理入りすることを決めた。実質審理は8月の委員会から開始される。
申立人の主張に対して、テレビ朝日・朝日放送は「教授は裁判や医師に対するパワーハラスメントの当事者であり、取材に応じるべき立場にあった。また番組は多角的な取材に基づいた中立・公正なもので、医療界の体質改善に資する方策を提示する目的だった」と主張している。
6月の苦情概要
6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
(個人又は直接の関係人からの要請) - 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・35件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
次回委員会は8 月17 日(火)に開かれることになった。
以上