放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第161回

第161回 – 2010年5月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

審理要請案件「機能訓練士からの訴え」~審理入り決定 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案のヒアリングと審理が行われた。障害を持つ少女の中学入学問題を取り上げたTBSテレビの報道番組について、機能訓練士から肖像権や名誉権等の侵害を訴える申立てがあり、審議の結果、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2010年 5月18日(火) 午後3時~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者遺族が申し立てたもの。
今月の委員会では、まず申立人とテレビ朝日に対するヒアリングを実施した。
申立人側は本人と姉とが出席し、「放送内容は、被害者が加害者に嫌がらせともとれる行為をしていたかのように受け取れるものばかりで、事実でない内容もあった。番組のためなら、だれが傷ついても、たとえ多少の虚偽があっても、それは関係ないことだと言えるのか。今回の事件は、番組で取り上げた境界線問題とは何の関係もなく、ましてや明治時代に作られた公図などは無縁のものである。なぜ私たちの両親が悪者のようにストーリーを作られ、全国的に否定されなければならないのか」と述べた。
一方、テレビ朝日からは『報道ステーション』の担当者ら3人が出席し、「刑事裁判の判決は、被害者が被告人の車の通行妨害をしていたと認め、嫌がらせ行為と言われても仕方がないものだったと指摘している。その点で、放送内容の真実性はある程度裏付けられたと考える。境界トラブルは明治時代に測量された精度の低い公図に一因があるが、放送では相談に応じる第3者機関があることを提示した。ご遺族が精神的苦痛をさらに患ったというのであれば申し訳なく思うが、境界トラブルはあらゆるところで起きていて、悩んでいる人には多少なりとも一助になりえた内容だったと考える」と述べた。
ヒアリングを受けて審理を行い、「委員会決定」の方向性を決めた。起草委員会を開いて決定案を検討し、6月の委員会に諮ることになった。

審理要請案件「機能訓練士からの訴え」~審理入り決定

TBSテレビ(以下、TBS)は2009年4月11日の『報道特集NEXT』で、「車イスの少女が入学できない訳」を放送した。この放送に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士から申立てがあった。
番組は、脳性まひの少女が様々な困難を乗り越えながら普通小学校を卒業したものの、普通中学校への入学を拒否されたことに対し問題提起を行ったもの。
申立人は、「少女の機能訓練の様子を紹介したビデオ映像は、申立人に無断で使用されたもので、肖像権の侵害である。また、リハビリという用語を使ったことで申立人らが医師法違反にも問われかねない。さらに、悪意のある編集により今後の活動に障害を生じ、精神的苦痛や誹謗中傷を受け、名誉を毀損された」と主張している。放送後、局との数回にわたるやり取りを経ても解決しないとして今年3月に申立てを行った。
TBS側も話し合いの余地はないとしたため、委員会は、TBSに対し「交渉の経緯と局の見解」および番組同録DVDの提出を要請し、双方から提出された文書および資料、番組DVDをもとに審理入りするかどうかについて審議した。その結果、本案件は運営規則に定められた要件を満たしているとして審理入りすることを決めた。6月の委員会から実質審理を開始する。
申立人の主張に対し、TBSは「機能訓練のビデオ映像は少女の両親が申立人の了解を得て撮影したもので、放送に際しては両親の許諾を得た。申立人に断りなく使った点については、放送直後に配慮が足りなかったことを謝罪し、表記や表現については、少女の普通中学校への入学が実現した過程を追跡した2009年11月の放送で訂正している。これらの点については申立人も了解しており、解決済みであると理解している。また、悪意ある編集との主張は、主張の内容自体が判然としない」と反論している。

4 月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・47件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6 月15 日(火)に開かれることになった。

以上