第109回 – 2010年2月
在京2社アニメ番組制作担当者との意見交換
視聴者意見について …など
2月23日に開催した第109回青少年委員会では、在京2社のアニメ番組制作担当者が出席し、アニメ番組制作の現状と、青少年への配慮等について意見交換を行った。また、1月16日~2月15日までに青少年委員会に寄せられた視聴者意見をもとに、ドラマ1番組、バラエティー1番組を視聴し審議した。
議事の詳細
- 日時
- 2010年 2月23日(火) 午後4時30分~7時
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 在京2社アニメ番組制作担当者との意見交換
視聴者意見について
中学生モニター報告について
「青少年へのおすすめ番組」について - 出席者
- 汐見委員長、境副委員長、小田桐委員、加藤委員、軍司委員、萩原委員、渡邊委員
在京2社アニメ番組制作担当者との意見交換
青少年委員会では、昨年4月の委員の交代以降、委員会と各放送局との意見交換の場を積極的に設定する方針としてきた。今委員会では、テレビ朝日およびテレビ東京のアニメ番組制作担当者が出席し、青少年の視聴が多いとされるアニメ番組の制作の現状と青少年への配慮などについて、幅広く意見交換を行い、実態に関する理解を深めた。
視聴者意見について
1.日本テレビ『左目探偵EYE』
「人気アイドルが出演し、子どもが多く見ているドラマであるのに、暴力的なシーンが多く、青少年に悪影響を与える」という意見が寄せられ、番組を視聴の上審議し、委員からは以下の意見が出された。
【委員の主な意見】
- 劇中で歌われる「殺せ、殺せ、皆殺し」という扇情的な歌詞は、極めて視聴者へのインパクトが強く、全体的にもドラマの筋立てから断ち切られた不必要な暴力シーンや凄惨なシーンが見られ、テレビで放送すべきではない。
- 主役や出演者が青少年に人気のあるアイドルグループのメンバーであり、主役の年齢設定も中学生で、子どもたちが視聴対象の多数をしめている。青少年への配慮がなされていない。
以上の意見を踏まえ、委員会としては番組内容に関する局の考えについて回答を求めることとなった。「局からの回答」を受けて、改めて次回委員会で審議する。
2.フジテレビ『はねるのトびら』
当該番組のコーナーの中で、罰ゲームとして大量の水を飲ませたことについて、「水を大量に飲むことは危険で、時には死に至ることもある。水中毒の知識のない小中学生に危険な影響を与える」といった意見が寄せられ、番組を視聴の上審議し、委員からは以下の意見が出された。
【委員の主な意見】
- 水を飲ませるという安易に真似できる罰ゲームは、子どもが真似をする危険性が大きく、少しでもリスクがあるのであれば注意喚起が必要。
- 制作スタッフに水中毒に関する知識はあったのか。どれくらいの量の水を飲むとどうなるのか、どんな危険性があるのか理解した上で、テロップなどで危険表示すべきだ。
以上の意見を踏まえ、委員会としてはリスクがある場合、放送内で何らかの注意喚起が必要であるとの意見をBPO報告およびホームページに掲載することとした。
中学生モニター報告について
2月のテーマは、「集中して見ようと思った番組」「偶然テレビをつけたら思わず引き込まれて見てしまった番組」で、その理由や感想を報告してもらい、29人からリポートが寄せられた。
【主なモニター意見】
まず「集中して見る番組」としてドラマに多くの意見が寄せられた。「”見る前から集中して見るぞ”と思って見る番組はドラマです。最近のドラマは展開が早いので、集中して見ないとストーリーが分からなくなってしまうからです」「『JIN~仁』は構成、演出、出演者の演技などすべてがとてもよく、3分前くらいから椅子に座って準備万端整えて見ます」「毎週欠かさず大河ドラマ『龍馬伝』をテレビの前に座って見ています。大河ドラマは歴史的な背景などに気をつけて見ていないとだんだん内容が分からなくなってしまうからです」「いつも『コード・ブルー~ドクターヘリ救命救急season2』を集中して見ています。前作を見た時に救命救急医療にあこがれを抱き、そのシーズン2と知り、初めから集中して見ています。人の命を救う時の緊迫感がすごく伝わり、救命救急医へのあこがれはどんどん増えていきます」。また、『泣かないと決めた日』や『相棒』など連続ドラマを毎週欠かさず見ているという意見も数多く寄せられた。
また、女子を中心に人気グループ嵐の『ひみつの嵐ちゃん』『VS嵐』、イモトアヤコの『世界の果てまでイッテQ!』を集中して見ているという意見が寄せられた。一方、男子からは『爆笑レッドシアター』『爆笑レッドカーペット』『ネプリーグ』など、笑って日常の疲れを癒やしたいという声が多く届いた。「集中して見ようと思った番組は『アメトーーク!』です。理由はとにかく毎回面白いからです。宿題をしながら見ていると、いいところを見逃したり聞き逃したりするので集中して見ています」「集中して見ている番組は『ザ!鉄腕!DASH!!』です。午後7時~8時という時間帯が見やすいし、出演者が体験していることが、まるで自分も一緒に体験しているような気分になるので面白くてよく見ています」。
次に「小さいころから見続けているから」という回答が寄せられたのはアニメだった。『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』『ONE PIECE』『おじゃる丸』などが集中して見られていた。
そのほか、学習に役立てたいので見ている番組として『世界一受けたい授業』『熱血!平成教育学院』『歴史秘話ヒストリア』などを挙げる意見もあった。「集中して見ているのは『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』です。この番組では政治のことなどを分かりやすく説明してくれ、沖縄の基地問題についてとても勉強になりました」「最初は何となくNHK教育の『英語が伝わる!100のツボ』を見ていましたが、今ではペンとノートを用意して”集中して見る時間”になっています」。そのほか、『情熱大陸』や『NHKスペシャル』などのドキュメンタリーを集中して見ているという回答も寄せられた。
次に「偶然テレビをつけたら、思わず引き込まれて見た番組」では特集番組が多かった。『マイケル・ジャクソン~愛と悲しみの真実』や『阪神・淡路大震災から15年 神戸新聞の7日間~命と向き合った被災記者たちの闘い~』など、初めは何気なく見ていたが思わず引き込まれてしまったという意見が寄せられた。「初めは嵐の櫻井翔くんが出演しているからと軽い気持ちで見ていたのですが、被災しながらも新聞製作をあきらめない記者たちの姿に強く心を打たれました。現場で被災者にカメラを向け『すみません、すみません』と言ってシャッターを切る姿が印象的で、これまで見慣れていた写真もまったく別の写真に見えるような気がしました」。
一方、集中して見ていたが期待はずれだったという意見は特になかった。面白くなければ途中でチャンネルを変えてしまうからというのが主な理由だった。
【委員の所感】
- レポートを読んで、バラエティー番組よりドラマや報道・教養系の番組をより集中して見ていることがよく分かった。ドラマでは、自分が興味のある職業、あるいは目指している仕事を登場人物が演じ、自分もそこにいて一緒に体験しているような気分が味わえるストーリーの展開があること、人間の生命や社会の現状を映し出すテーマで好きな役者がキャスティングされていることなどが理由として挙げられていた。
- 報道・教養系では、政治や経済など専門的で難しい話題を分かりやすく説明してくれる、素朴な疑問が思わずひざをたたくような感じで解説されていることなどが、重要な要素になっていることが読み取れた。
- 一方、バラエティー番組では、好きなタレントやあこがれのグループが出演していること、それぞれのキャラクターが個性的で面白く、トークの濃さやテンポの良さが欠かせないこと、一体感というかワクワク・ドキドキ感やちょっとした気分転換になることなどを理由に挙げている点が興味深かった。今見ている番組で10年後、20年後にやがて共通の話題になる”時代を象徴する”番組は何だろうかと考えながら、テレビを見るのも面白いかも知れないと感じた。
【放送局からの感想】
1月のモニター意見で最も多かった『NHK紅白歌合戦』について、番組のプロデューサーから以下のような感想が寄せられた。
- 中学生モニター報告を拝見して感じたのは、(1)非常に細かく、冷静に番組を見ている。(2)『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日スペシャル!!』の支持が高いなど、10代の視聴傾向が分かりやすく見てとれる。(3)流行に流されないで、ある意味では大人よりも社会的意識の高い意見が多い、の3点です。特に『NHK紅白歌合戦』に関しては、流行を追うだけではなく、「本当にいいものを求めている中学生」が多いことに驚きました。私たちがふだん見ているNHK番組モニター(大人)評とは全く異なる視点からの意見も多く、今後はNHKのモニターにもこうした10代の意見を積極的に取り入れるべきと考えています。
「青少年へのおすすめ番組」について
青少年委員会では、これまで青少年の健全な育成へ寄与するため、良質なテレビ番組の情報発信について議論してきた。今委員会で2010年4月からの取り組みとして、特別番組、単発番組等を対象に、各テレビ局からの推奨による「青少年へのおすすめ番組」の一覧をホームページ上に掲載することを決定した。