2012年10月に視聴者から寄せられた意見
ニュース報道に関する批判意見が多かった。「尼崎連続変死事件」の報道では、事件の中心人物とみられる被告の顔写真を、取り違え、数日間使用し続けたことに、人権侵害だとの意見が寄せられた。また、iPS細胞を使って心臓手術を行ったという報道について虚報に踊らされたマスコミのあり方を問う声があった。
2012年10月にメール・電話・FAX・郵便でBPOに寄せられた意見は1,899件で、先月と比較して827件減った。
意見のアクセス方法の割合は、メール69%、 電話26%、 FAX3%、手紙ほか2%。
男女別は男性62%、女性33%、不明5%で、世代別では30歳代33%、40歳代30%、 20歳代 18%、50歳代12%、 60歳以上5%、10歳代2%の順になっている。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送局を特定したものは、当該局のBPO責任者に「視聴者意見」として通知。10月の通知数は863件【41局】だった。
このほか、放送局を特定しない放送全般の意見の中から抜粋し、19件を会員社に送信した。
意見概要
番組全般にわたる意見
10月の視聴者意見は1,899件と先月より827件減った。
ニュース報道に関する批判意見が多かった。「尼崎連続変死事件」の報道では、事件の中心人物とみられる被告の顔写真を、まったく別人のものと取り違え、数日間にわたって使用し続けたことに、人権侵害だとの意見が寄せられた。また、iPS細胞を使って米国で心臓手術を行ったと嘘の記者会見をした人物への取材についても、批判が多かった。虚報に踊らされたマスコミのあり方を問う声があった。遠隔捜査ウィルス事件で誤認逮捕が相次いだことにも、厳しい意見が多かった。警察・検察の自白強要などに対するマスコミのチェック機能への不信の声があった。
ラジオに関しては47件、CMに関する意見は80件あった。
青少年に関する意見
放送と青少年に関する委員会に寄せられた意見は116件で、前月より21件増加した。
今月は、いじめ・虐待に関する意見が30件、次いで低俗・モラルに反する意見が18件、性的表現に関する意見が10件と続いた。
バラエティー番組の中の「川柳」のコーナーで、女性アイドルの容姿を笑いのネタにした内容に関して、いじめではないかという意見が複数寄せられている。また、子どもが見る可能性がある午後の時間帯でのサスペンスドラマなどの再放送について、配慮を求める意見が寄せられている。
意見抜粋
番組全般
【取材・報道のあり方】
- 「尼崎連続変死事件」の角田美代子被告の顔写真が別人のものだったという。これは「松
本サリン事件・犯人誤報」以来の大問題だ。いずれの局も謝罪はしていたが、散々この事件についてあれこれ報道した後に、「すみません、間違っていました」の一言で終わらせていた。これは人権侵害であり、一言謝って済まされる問題ではない。なぜこんなことが起きたのか、各テレビ局で検証し、視聴者に説明するべきだ。倫理観を疑う。 - 「iPS細胞を使った手術」が捏造だと分かったとたん、今度は手のひらを返したようにバッシングが始まった。そもそも、虚言癖のある人物の言葉に惑わされ、ウラを取らないまま報道してしまったのは自分達マスコミである。それを反省するどころか本人バッシングにすり替えるとは報道者の風上にも置けない。
- iPS細胞の移植で問題になっているMさんの報道に関して疑問を持っている。本人の話が正しいとも思っていないし、擁護しているわけではない。しかし、元はといえば新聞社が情報の裏を取らずに、いい加減な記事を載せてしまったことだ。世紀の大誤報ではないか。しかし記者会見では、記者が責め立てるような口調で質問したり、バカにしたような笑い声が聞こえたりと聞くに堪えない。報道の誤りを認めずに、スキャンダルを得たとばかりに執拗に1人を責めるような報道は放送倫理が守られていると言えるのか。
- 沖縄で起きたアメリカ兵によるレイプ事件で、「代わる代わる暴行をした」と女性キャスターが読み上げていた。1人の女性を集団でレイプすると聞くだけでも、彼女がどれほど傷ついたことか。それを更に「代わる代わる」と表現する必要があるのだろうか。彼女は米兵にレイプされただけではなく、テレビからも犯されたようなものだ。こんなデリカシーのない、心ない報道がジャーナリズムなのか。複数の人の手を渡ったはずの記事をチェックする機能はないのか。真摯に反省すべきだ。
- 「週刊朝日と橋下徹大阪市長」について、各局の情報番組は“単なる興味本位”で取り上げているように感じられる。「同和問題」は非常に微妙な問題だ。知らない世代が増えていることを考えれば、正確な知識、情報もなく、ただテレビで騒ぐことが必要だとも思えない。また、橋下氏が記事を掲載した週刊朝日について「ペンの力での家族抹殺だ」と発言したことを、面白おかしく紹介していることに危機感を覚える。マスコミは「同和問題」という“事の重大性”を今一度認識して頂きたい。
- 近隣トラブルから、元警視の男性が女性を日本刀で刺し殺したという事件があった。その報道の中で、救急車が報道陣の前を通る際に、某テレビ局の記者が、「今、救急車が」と救急車の前に立ちふさがりリポートし、救急車が徐行せざる得なくなった。救急車はわずか数秒でも人の命を左右する緊急車両だとわかっているのに、自分たちの都合で邪魔をする。こんな行為は許されない。
- 遠隔操作ウィルス事件のマスコミの報道について。無実の人が、“自白の強要”により犯人にされてしまった事実をしっかり検証するべきだ。検察や警察の捜査、取り調べの問題点を追及するべきだ。誤認逮捕された人たちの生活はその後どうなったのか。またマスコミ自身で調査もせずに検察や警察の発表通りに報道した責任を感じてほしい。
- 誤認逮捕された人を、テレビや新聞でも最初は完全に犯人扱いで取材、報道していた。今になってテレビも、誤認逮捕と報道や解説をしているが、犯人扱いで報道していたテレビや新聞の責任は重大である。逮捕された段階で実名報道することは、推定無罪の原則をないがしろにするものではないか。こうした場合のテレビや新聞の反省を一度も聞いたことがない。報道の自由の拡大解釈であり、自らの責任を放棄している。
- お笑い芸人や芸能人をコメンテーターとして個人的な意見を言わせることはいかがなものか。特定の政党や政治家を批判するのならば、自分はどの政党や政治家を支持しているのか、明確に表明してからにすべきだ。批判だけ垂れ流すことは世論誘導だ。
- 最近、通行人などにボカシが入っている映像をよく見るが、気持ち悪い。肖像権を気にしているのかと思うが、そもそもテレビに映り込む通行人や野次馬などは雑観だ。通行人が自身の肖像権侵害に関して新聞社やテレビ局を抗議したとか訴訟を起こしたなどという話も聞いたことがない。自主規制なのだろうが、それなら生放送もぼかしたらどうか?
【番組全般・その他】
- とても良い番組だ。毎週見ている。地方の素朴な産品を使って一流の料理人が素晴らしい料理を作ってみせる。それと同時に地方の産品の紹介、風光明媚な田舎を紹介していることはとてもすばらしい。こんないい番組ができるのであれば、ぜひ地方の山間僻地や離島へも出掛けてほしい。私の妻は島根県の隠岐島の出身だが、一時期沢山来ていた観光客も今は少なくなり、人口は昭和40年代に比べると3分の2に減っている。こんなところへも是非一流料理人に来ていただき、地域の産品の生かし方と風景などの紹介をしていただきたい。
- 北極でシロクマを探すというコーナーで、あたかも偶然見つけたような放送だったが、その後接近しての映像を見ると、母熊の首に首輪のようなものがついていた。GPS機能がついていて、場所を特定出来るものではないのか。やらせにあたるのではないか。
- 視聴者の質問に対する男性アナウンサーの答え方に違和感があった。筋力の衰えの自己チェック方法が紹介されていたが、その結果をもう一度知りたいという要望に、「番組のホームページを見るように」との返答であった。スタジオの壁に貼り出されたその方のFAXは手書きのものであった。もしかしたらインターネットを使う方ではないのかも知れない。日々、インターネット環境にどっぷり浸かった生活をしていると気がつかないのかもしれないが、放送に携わる側は、こうした人々にこそ配慮する想像力が必要ではないのか。
- なぜ最近の番組は、「ワイプ」と称する小窓を出すのだろう。出演者の反応やリアクションを映したいのだろうが、不要だし邪魔だ。そんなものは必要ない。中にはそれを意識して過剰ともいえる反応をする出演者もいる。どんな反応をしようが、視聴者には関係ない。わざとらしいリアクションなどみたくもない。
【ラジオ】
- 1日4回も同じラジオショッピングを放送しているが、発毛剤やダイエット商品の効能が「ほぼ100%」や、使用した人の「96%に効果があった」など、誤解を生みかねない表現が多用されている。番組のホームページを見ても、効能や効果の出典の明記がなく、「景品表示法」で定める不当な表示に反する恐れがある。
【CM】
- CMに胸を打たれた。幼い兄弟が、田舎のおじいちゃんの家ではしゃいで虫捕りをするうちに暗くなってしまい、お兄ちゃんが健気に弟を励ましながら真っ暗な道を歩くという内容だ。最後にはおじいちゃんが普段給油をするスタンドの明かりがついているのを見て、ほっとすると同時に母親に見つけてもらい、思わずそれまで泣かなかったお兄ちゃんが泣いてしまうというもの。自分の子供時代を思い出し、いつもけんかをしていても困った時には姉妹で助け合ったこと、迷子になった時に母親に会えた時は心から安堵し、やはり泣いたことを思い出した。離れて暮らす両親に親孝行したいと思った。
- 自動車のCMで、女性歌手が歌う「Waiting for you」という曲が、どうしても「うぇいちん、うぇいちん、うぇいちんぽ~」と歌っているようにしか聞こえない。家族と一緒にテレビを見ていて気まずくなる。先日母が同じように聞こえたと言ったので、インターネットで検索したら何件か似たような書き込みがあった。おそらく他の人にもそう聞こえているのだと思う。女性歌手も商品の車も嫌いなわけではない。そういう風に聞こえないように改善していただけないか。
青少年に関する意見
【いじめ・虐待に関する意見】
- バラエティーで、女性アイドルの容姿を馬鹿にする川柳を放送していた。子どもたちも見る番組なのに、本人のいない所で容姿を馬鹿にして笑うのは、まるでいじめではないか。それを見て育つ子どもたちに、どんな影響があるだろうか。こんな内容を公共の電波を使って発信するなんて、とても疑問に思う。
- ドラマの番組宣伝の最後に「頼むから死んでくれ」と言っていたが、今問題になっているいじめの最たる言葉ではないか。今現在、いじめを受けている子どもたちは、この言葉によって深く傷つくかもしれない。「頼むから死んでくれ」などという言葉は、軽々しく使う言葉ではない。
【低俗・モラルに反する意見】
- バラエティー番組で、“ドッキリ”をやっていた。芸能人が驚いたり、怒ったり、よくある構成だった。しかし、ドッキリを仕掛けられるのが芸人だったら面白いが、今回、芸能人の5歳の子どもに“ドッキリ”を仕掛けていた。いくらなんでも良くない。
【暴力・殺人・残虐シーン関する意見】
- 7歳と9歳の子どもがこのアニメを予告で知り、楽しみにしていたので見ているが、あまりにも残虐なシーンが多くて見せるべきか迷っている。悪者が味方の脇腹を何度も刃物で刺す、悪者が味方の少女を何度も踏みつけるなど、恐ろしい。それ以外の主人公達が冒険しているシーンは楽しいが、無駄な暴力シーンに違和感がある。
【編成に関する意見】
- 午後の再放送枠で放送中のサスペンスドラマは、夜9時以降に放送する内容だ。同居している姑が見ているので、不可抗力で小学生の子どもが見てしまう。殺人やレイプなど、子どもに見せられる内容ではない。サスペンスの再放送は、昼間は放送しないでほしい。
【CMに関する意見】
- サスペンスや刑事ドラマのスポットCMは殺人のシーンが多い。番組は選んで見られるが、スポットCMは突然流れてくるので選べない。特に刃物で殺害する場面や、刃物のアップはインパクトが強い。簡単に手に入る刃物での殺傷シーンは、青少年に悪影響だ。