放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第15回

第15回 – 2008年6月

光市事件報道の委員会「意見」に対する在京6局の検討結果の報告書について

シンポジウム「事件報道と開かれた司法」の総括 …など

光市事件報道の委員会「意見」に対する在京6局の検討結果の報告書について

委員会が公表した「意見」に対する在京6局の検討結果の報告書について討議した。各局において、委員会の「意見」に対する批判も含めて活発な議論が行われたことについて、評価する意見が大勢を占めた。また、この報告書を一般に公開することにより、更に議論が深まり放送界の発展に寄与するのではないかとの討議がなされ、BPOのホームページ等に公表すべきだとされた。

<主な委員の意見>

  • 各局で議論が行われ、刺激になったことは良かった。
  • この「意見」は現場へのクレームではなく、局のスタンスに対する意見書だと思う。局のスタンスが現場に浸透していないのではないか。
  • 各局もBPOもお互いに“考える”ことが大事。“考える”素材としての「意見」だ。それなりの波紋、反発はあってよいと思う。各局はむしろ委員会の「意見」に対する批判を遠慮しているのではないか。
  • 個別具体的な番組にはモヤモヤが残るかもしれないが、見えてきたのは良いこと。ある局では、委員会が出したこの「意見」によって社内が変化した。少しずつ輪が広がればよいと思う。
  • この先どうするかが大切。各局は受け止めたことを、どう具体化するかが大切。コミュニケーションがとまることがまずい。
  • 「5:5が公平か?」という批判があったが、「意見」ではそうはいっていない。繰り返し理解を求めることが大切だ。
  • BPOに監視されている、と思われているのは誤解だ。そうではないと繰り返し言うべきだ。
  • できればこの「意見」を報道・制作現場の方、全てに読んでもらいたい。私たちの「意見」は、表現の自由を尊重する立場からのものだ。

シンポジウム「事件報道と開かれた司法」の総括

東京大学大学院情報学環との共催で開催されたシンポジウムについて、参加者は263名と別に用意したモニター室も満員になったこと、「タイムリーで中身の濃いパネルトークであった」「情報番組とドキュメンタリーとの役割の意味に言及して欲しかった」などのアンケート結果が事務局から報告された。

委員からは「テーマが多岐にわたり、コーディネーターは難しかったと思う」「予定時間より大幅に長くなってしまったことは反省点」「キーワード毎に各論に入る方法もあったのではなかったか」「裁判の公益性と報道の関わりをもう少し展開できればよかったが、公益性・公共性の定義は難しい」「パネリストの人選も今後の参考になった」といった意見が出された。

(なお、シンポジウムの概略はこちら

報告事項

  • 取材先の日本原燃から隠し撮りや誤謬等を指摘された報道番組

    当該局と原燃が話し合いを行い、第2弾の放送時に不明確な表現を修正した結果、お互いの主張は了解点に達した。放送局の自主自律の原則に則り解決が図られたので、当委員会はそれを了解した。

  • テレビ局が女性の卑猥なパフォーマンスを仕掛けたと報道された事案

    秋葉原で女性が下着を見せるパフォーマンスが行われ、それにテレビ局のスタッフが関っていると週刊誌に報道された。週刊誌の記事と当該局の説明内容を討議した結果、このパフォーマンスを当該局が正式に取材し放送したわけでもなく、委員会で取上げる問題ではないと判断した。

  • 放送記者による新聞記事盗用

    テレビ局の放送記者が新聞記事を元に、実際には取材をせずにニュースを放送した。このこと自体は責められるべき問題であるが、新聞社と折衝し、当該局の責任において処理すべき事案で、当委員会が取り上げるべき問題ではないと判断した。

  • 報道番組のキャスター・コメントに対する抗議

    報道番組の後期高齢者医療制度を取上げたコーナーで、自民党の幹部が談笑している映像を見たキャスターが「よく笑っていられますね」とコメントした。それに対して自民党から、その問題を議論しながら笑っていたわけではない、との抗議が局にあった事案。討議した結果、キャスターは印象を述べたものであるし、談笑している映像も放送前日に開催された役員連絡会冒頭のいわゆる「アタマ撮り」で、その役員連絡会では後期高齢者医療制度が話し合われているから、まったく関係のない映像を使用したとは言いがたい。更に、役員連絡会については会議が始まる冒頭、いわゆる「アタマ撮り」の取材しか許されていないので、直近の「アタマ撮り」の映像を使用したことにも理由があると判断できる。確かに、番組の作り方にも誤解を生まないように配慮すべき点があるが、それについては、5日後に、同番組で4分間弱にわたってキャスターにより説明がなされているので、視聴者も正しく理解したと判断できる。以上の理由により、当委員会はこの事案を取上げないこととした。

以上