放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第189回

第189回 – 2012年10月

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の審理
「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理…など

前回に続き、「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の「委員会決定」(決定文)案について検討した。「肺がん治療薬イレッサ報道に対する申立て」事案について審理し、来月の委員会でヒアリングを実施することになった。

議事の詳細

日時
2012年10月16日(火) 午後4時~7時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の審理

本事案は、テレビ神奈川が本年4月、神奈川県警による無許可営業のスナック摘発と女性経営者の現行犯逮捕を現場で取材し、4月11日の『tvkNEWS930』で1分強のニュースとして放送したことに対し、この女性と家族から「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や、実名、自宅の住所等まで放送したのはプライバシーの侵害」等と申立てがあったもの。テレビ神奈川は、「通常の実名報道原則に基づいて放送した。申立人の基本的人権についても十分慎重に検討した」等と反論している。

この日の委員会では、前回委員会での議論を踏まえて提出された「委員会決定」(決定文)修正案の検討を行なった。今回は決定文の構成、内容、表現のほか、特に結論部分について各委員が改めて意見を述べた。
委員会が示す結論には「勧告」または「見解」があるが、その判断のグラデーションについては、放送局への聞き取り調査を踏まえて本年5月に修正が行われた結果、「勧告」は「人権侵害」、「放送倫理上重大な問題あり」、また「見解」は「放送倫理上問題あり」、「要望」、「問題なし」、となった。

この日の議論では、本事案が修正後の「判断のグラデーション」を適用する初めての事案となるため、グラデーションの考え方とその適用の仕方についても確認を行い、委員会としての結論を確定した。
この結果、次回委員会までに修正案をさらに吟味し、「委員会決定」最終案として諮ることとなった。

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたり肺がん治療薬イレッサに関する問題を取り上げた企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性から、イレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性や正確性、公正さに欠けた報道により人権を侵害されたと申立てがあったもの。フジテレビは、番組に人権侵害も放送倫理に抵触する部分もないと反論している。
前回委員会では、番組内容が放送倫理に抵触しているとする申立人の主張が、申立人に対する人権侵害とどう関連しているのかを中心に議論が交わされた。
この日の委員会では、前回委員会での議論を踏まえ起草委員間でさらに検討を重ねて整理した論点について、担当委員から説明が行われた。続いて、それに基づいて作成されたヒアリングに向けての論点と質問項目の原案が示され、全員で検討を行った。その結果、いくつかの質問項目を追加することで意見がまとまり、来月の委員会で当事者へのヒアリングを実施することになった。

「国家試験の元試験委員からの申立て」事案の審理

本事案は、TBSが今年2月25日に放送した『報道特集~国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた一冊の書籍』で、国家資格である社会福祉士の試験委員だった大学教授が、試験委員就任前に執筆しその後も改訂を続けていた著作物が過去問題の解説集に該当する等、試験委員としてふさわしくない行為があったと放送され、名誉と信用を毀損されたと申立てたもの。
申立人は、番組では「疑念を招く」程度の行為を取り上げてあたかも申立人が試験問題を漏洩したかのように視聴者に印象付けるなど個人攻撃が行われたと主張している。これに対してTBSは、「問題漏洩等にはいささかも言及していない。試験委員だった申立人の行為が社会福祉士試験の公平性・公正性に疑念を招いたのではないかと問いかけたものだ」と反論している。
一回目の実質審理となったこの日の委員会では、双方の主張が対立する点や、全体的な番組の構成について資料をもとに事務局が説明した後、各委員が番組を見た感想も含め意見を述べた。
来月の委員会では、当事者へのヒアリングに向け、委員会の提示する論点や質問項目について検討する。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・10件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は11月20日(火)に開かれることになった。

以上