第72回 – 2006年10月
少女を性的対象視する番組に関する要望 (案) について
青少年に関する視聴者意見について審議 …など
少女を性的対象視する番組に関する要望 (案) について
前回委員会で申し合わせたとおり、本田委員長、大日向委員、山田委員が起草委員となり「要望」(案) を作成。それを基に審議した。
なお、審議するにあたり本田委員長から、「委員会では、視聴者からの厳しい意見を踏まえ、今年6月から審議を重ね、要望を出すこととなったが、委員会としての議論をさらに深めるため、次の2点についても各委員からの意見を求めたい」と発言があった。
1.要望は児童の人権、福祉の観点から「児童の権利条約」の趣旨に基づき作成したが、権利条約の中には、”児童が意見を表明する権利が確保されている(児童の意見表明権)”ということが盛り込まれている。権利条約の一つの主張からみると、好ましくない番組であっても子どもが出たいと希望するなら子どもの自主的な意見として尊重すべきではないかと考えられるので、これについてどう対処するか。
各委員の意見は次のとおり。
- 児童の意見表明権は、本来、子どもの意見を理解し、年齢によっては大人がそれをサポートすることであって、子どもが希望することでも場合によっては大人の判断で止めさせることもできるというものであるから、今回の要望は、この趣旨に反するものではないと考えられる。
- 表明権の趣旨は、子どもの話に耳を傾けるべきであるということで、子どもの意見をすべて通すというものではない。特に放送という公共の場を考えると、当てはまらないのではないか。
- 「放送基準」には”児童としてふさわしくないことはさせない”と明記してあるので、それに照らし合わせておかしいと思う番組については、意見表明権を認めなくてもいいのではないか。
2.要望にはタイトルを含め、一般的な概念として使われている「少女」と法律用語の「児童」という言葉が混在しているが、統一すべきかどうか。
各委員の意見は次のとおり。
- 視聴者意見には、少女ばかりではなく、小さい男の子の裸に対する批判もあるし、男の子が性的対象になる恐れもあるので、児童で統一してはどうか。
- 男の子の裸は意図して放送しているのではないものが多いが、少女の場合は、明らかに幼いエロティシズムを狙っていると思われるので、ここははっきりと法律の部分は「児童」、放送の問題点の指摘については「少女」と分けて使用するべきではないか。
以上の審議の結果、?については、今回の要望は児童の人権、福祉を守るものであって、児童の意見表明権を侵すことにはならない、?については、法律的な部分は「児童」、問題点の指摘部分には「少女」を使用することで一致し、原案に若干の修正を加え、了承した。その後、10月26日に「要望」を公表し、NHK、民放各社に送付した。
青少年に関する視聴者意見について審議
10月から始まった”中学生の女子が妊娠し、母親になる”という新ドラマについて視聴者から、「多感な年齢の子どもたちへの影響が心配だ」 「中学生が子どもを生んで育てるというと、ドラマとしては美しいが現実は違う」といった先月と同様の批判的な意見が多く寄せられ、委員からは、次のような意見が出された。
- “中学生の妊娠は非現実的だ” といった意見があるが、そうは思わない。頻繁に起こっているわけではないが、あり得ない話ではないと思う。万引きシーンがあったが、ドラマとして必然性があったのではないか。
- ドラマのテーマは”命の尊さ”となっているが、14歳の中学生が中絶しないで生むことを生命の尊重としているとすれば、すこし短絡的ではないか。
- 視聴者からは批判的な意見が多いが、中学生モニターの意見をみると冷静に受け止めているようなので、今後、どういう展開になるのか注視していきたい。
次に、健康に関する情報番組で、ゲストの医師が「ADHD(注意欠陥多動性障害)は、食事の仕方によって発症し、キレ易くなったり犯罪者になる恐れがある」と発言したことに対し、視聴者から、「医学的に間違っている」「ADHDへの偏見を助長し、人権侵害だ」といった意見が寄せられた。委員からは、次のような意見が述べられた。
- 病気の当事者や保護者にとっては深刻な問題なので、医師の発言を求める時は、1人の意見だけではなく、幅広い意見を求めることも必要ではないか。
- 情報番組などで、科学的に原因も分からず結果が出ていない事象を取り上げるときには、細心の注意を払うべきだ。
- 食生活のあり方や健康に関する番組が増えているが、病気予防や健康管理について前向きに喚起するものならばいいが、視聴者に偏見や不安を植え付けるような取りあげ方にならないよう注意してほしい。
このほか、放送局の対応に関する視聴者意見について、委員からは「意見・抗議の内容によっては、フォロー、フィードバックするなど、対応の整備も考えてもらいたい」と発言があった。
中学生モニターについて
多くのメンバーが代わった後期モニターの初レポートだったが、18人から26件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。分野別に分けると新番組が始まったドラマが最も多く12件、バラエティー・音楽が8件、情報・ドキュメント・ニュースが5件、そしてスポーツが1件だった。今月複数意見が寄せられたのは『14才の母』が3件、『僕の歩く道』が2件だった。
- 『14才の母』の3件は全部女子からだが、「視聴者の方の反論とかもあったと思うけど、私はこの番組はそんなに変なシーンもないし、きちんと生きていくために必要なことを伝えてくれてるんじゃないか、と思いました」と刺激的なテーマにもかかわらず違和感なく受け止めており、「大人と少年・少女の気持ちを半分ずつ伝えていて丁度いい」などとすべて好評だった。ただし「新聞の番組欄を見ただけでもとても家族と一緒に見られそうもありませんでした」という女子の意見もあった。
- 『僕の歩く道』も、「私は病気の話のドラマはあまり好きじゃありませんが、このドラマはなぜか好きになりました。幼なじみでいつも助けてくれる人がいて、いい人達に支えられていると思いました」、「僕はドラマをあまり見ないのですが、このドラマは毎週見たいと思いました」と好評だった。
- 『のだめカンタービレ』は漫画からのドラマ化だが「楽しみにしていましたが、劇中の音楽全てがクラシック音楽でとても満足した」と、企画・演出とも好評だった。『Dr.コトー診療所』『世にも奇妙な物語』の連続企画や『名探偵コナンSP』『喰いタンSP』のスペシャル企画には好意的だったが、『電車男DX』には「本来の”真実の恋”というのがうすれてしまった」と注文意見が寄せられた。
- バラエティーの分野では、『筋肉バトル!!スポーツマンNO.1決定戦』は「次の朝、学校でこの番組はとても話題になりました」と好評だったが、『嵐の宿題くん』には「大物司会者を抜いて若手だけで番組を進行すべきだ」、『志村けんのバカ殿様』には「下品で、食べ物を無駄にしていて、見るにたえなかった」、『クイズ$ミリオネア』には「一般人の時より芸能人の問題の方が、簡単な気がする」、『行列のできる法律相談所』には「子どもも見ることが多い時間帯なのだから、司会者の言葉遣いや話す内容にも気を配って欲しい」などの批判意見が寄せられた。
- 情報・ドキュメント・ニュースの分野では、NHKスペシャル『プラネットアース第6集』が、「スタジオの出演者にコストをかけるより、その部分を番組の質にかけるこのような番組をふやしてほしい」、『イマイが暴く!架空請求スペシャル』も、「悪徳業者が負けているような気がしてとても気分がよくなりました」と好評だった。また北朝鮮の核実験を取り上げる多くの番組の姿勢に対して、「核開発はやってはいけないことかもしれないが、北朝鮮をせめるばかりで核兵器を持っている他の6つの国のことに触れないのはおかしい」と疑問を投げかける意見が寄せられた。
委員会での委員の発言も『14才の母』に集中した。
- 中学生モニターの女子3人は番組を抵抗なく受け止めている。番組を冷静に見ており、素直な感想だと感じる。
- 母親の出産に立会い「生命誕生の感動的な場を体験した」女子モニターがいた。「妊娠するという命について深く考えた作品で、様々な余韻を残すような深い作品であってほしい」という意見は説得力がある。
- 「番組欄を見ただけで家族では見られないと思い、見るのを止めた」という女子の意見もあったが、やはり親としては子どもと一緒に見るのも話し合うのも恥ずかしい。
- 中学生の妊娠は『3年B組金八先生』にもあったが、むつかしいテーマだと思う。中学校で性教育がしづらくなる傾向があるが、性教育の必要性は高まっている。この番組が、家庭や学校で性について考えるきっかけになればよいのだが…。
なお、第6回の「中学生フォーラム」に関連し、在京テレビ6局に出演者の推薦を要請したことを事務局から報告。また現在実行中の小・中学生のテレビ視聴インタビュー調査の途中経過を橋元委員がフォーラムの中で紹介し、問題提起をする事が決まった。
調査・研究活動について
橋元委員から、調査企画チーム(第9回会合)の概要と10月21日から始まった本調査(第1回)について、下記のとおり報告があった。
- 第9回会合では、21日の本調査に向け、インタビュー項目の最終的なチェックを行った。
- 第1回本調査では、6人の対象者にそれぞれ1時間20分ほどの時間をかけインタビューをした。
- 6人を調査しただけでも、多様なテレビの見方が出てきたので、対象者の個性を生かしたサンプルをつくり深く分析したい。
- 調査からは、テレビ視聴時間と携帯電話との関係が顕著に出てくるのではないかと感じた。