第69回 – 2006年6月
青少年に関する視聴者意見について審議
中学生モニターについて …など
青少年に関する視聴者意見について審議
視聴者から寄せられた意見を基に審議に入った。
最初に、日本テレビ放送網『ウタワラ』の新企画「チビっ子エロかわダンス選手権」の募集内容について、「タイトルに”エロかわ”と付いているからには、児童に際どい格好をさせて躍らせることは明白。近年、小学生を対する性犯罪が増えているのに犯罪を助長しかねない」「エロかわいい幼女をHPで募集しているが、これだけ幼女を狙った性犯罪が頻発しているにもかかわらず一般募集するのは、さらに犯罪者を煽ろうとしているとしか思えない」といった意見が視聴者から寄せられたことに対し、委員からは次のような意見が出された。
- 新企画の募集内容を見ると、”エロかわいい”をキャッチフレーズにしている女性シンガーをまねてダンスをさせるようだが、大人の女性はともかく、小学生以下の子に露出度の高い過激な格好でダンスコンテストをするとすれば問題ではないか。
- 少女が持っているエロティシズムにそそられる大人もいるので、子どもがエロチックな対象になるようなことはテレビで放送すべきではない。
- 国際的に児童ポルノに対し厳しくなっている状況の中で、この企画はそれに反する方向にいっているようだ。
- 最近では”エロかわいい”のエロをかわいい意味の強調語として使っているようだが、流行っているからといって子どもに使ってほしくない。
以上、審議の結果、青少年委員会として同社に対し、『放送前であるが募集の内容を見ると、この企画が放送された場合、放送基準21条の「児童を出演させる場合には、児童としてふさわしくないことはさせない」に抵触してくるのではないかという懸念が委員から出された。児童が興味本位に扱われることの無いよう、十分な配慮をお願いしたい』旨の文書を送付した。
次に、今回もバラエティー番組に対し、「低俗だ」「いじめにつながる」といった視聴者意見が多く寄せられた。その中で、”罰ゲーム”として鼻栓をした状態で氷の張った水の中に突き落としたり、ビンタや蹴りを入れるなどについて、視聴者から「いじめや暴力を是認する」「子どもへの影響が心配だ」「危険なことだ」といった批判が寄せられたことに対し、委員からは次のような意見があった。
- 子どもへの影響もあるが、かなり危険なことをやっているので、一歩間違えば事故でも起きかねない。危険なことを見せることでしか笑いをとることができないのかと思ってしまう。
- 笑いにはある種、危険すれすれで笑いをとるという伝統があるようだが、だからといって限度を超える危険なことはやるべきではない。
- “罰ゲーム”が、バラエティーでは、”いじめ”と受け取れる内容になってきた。今後この種のバラエティーには注視していきたい。
また、夜の時間帯で放送していたサスペンスドラマなどの再放送の時間帯について、視聴者から「サスペンスドラマの再放送が昼間にされているが、子どもも見る時間帯なので、やめてほしい」「再放送とはいえ、子どもが見ている時間帯に性を刺激する番組を放送すべきではない」といった意見に対し、次のような意見が述べられた。
- 生々しい殺人シーンのあるサスペンスドラマなどは、もともと大人向けに作られているわけだから、昼間の子どもが見られる時間帯に放送するのは考えるべきだ。
- 午後5時から9時までは子どもに配慮するとなっているために、その時間帯を外しているからいいというものではない。
- 再放送すること自体は視聴者にとっていい試みだが、再放送する番組と時間帯については検討すべきところがある。
なお、視聴者意見の中で、(1)東京放送の『リンカーン』で、4歳女児の目の前で父親を意味もなく殴り、自室を詮索して性的趣味を妻に暴露して驚愕させるバラエティーをやっていたが、女児のことを思うと児童虐待だ、(2)日本テレビ放送網の『ラジかるッ』で、”小学生のFカップグラビアアイドル”と紹介していたが、少女の性を売り物にしている、(3)テレビ朝日の『ミュージックステーション』で、女子高生のような制服を着た女の子たちが出演していたが、品性に欠ける振り付けがあって非常に不快だった、との批判について、委員会としては番組を見ない前に審議はできないということになり、当該局にビデオ提供を依頼し、各委員がビデオ視聴のうえ、次回委員会で審議することとなった。
中学生モニターについて
今月は28人から、37件(一人で複数件の報告有)の意見が寄せられた。報告テーマは、前回のモニター報告後6月中旬までに見た番組についての感想・批判・期待することなど。
今回は、ドラマとバラエティー以外の分野(情報・教養・ドキュメントほか)の報告が目立ち、特に『世界がもし100人の村だったら4』への意見が5件、サッカー・ワールドカップに関する意見は6件寄せられた。全体件数も19件と半数以上を占めた。ドラマについての意見は8件、バラエティーについては10件であった。
- 『世界がもし100人の村だったら4』への意見は、世界の子ども達の厳しい現実を知ることができ涙があふれて止まらなかったなどと、いずれも好評だった。そして「テレビの前で可愛そうというだけで何もできない自分をはがゆく思う」「テレビ局にビデオを学校に配布してもらい総合学習の時間にみんなで勉強したい」「あらためて学校へ行ける大切さや家族といられるありがたさを感じる」など一歩踏み込み自分に引き付けた感想が述べられた。
- ワールドカップに関しては3夜連続して放送されたNHKスペシャルのスーパースター特集に2件。1件は何気なく見ている技の素晴らしさを再認識できたという意見、もう1件はサッカーに詳しい人が興味を持つ有名選手を数多く取り上げてほしかったという注文だった。『ニッポン チャ×3』の1件は対戦国の選手の名前を笑ったり、特定の選手の性格を馬鹿にしたりして不愉快だったという注文だった。また、中継放送に対しては解説をもっと丁寧に、CMが多すぎるなどという注文が寄せられた。
- ドラマでは『クロサギ』に、詐欺師が主人公という世界にとまどいながらも楽しみにしているという意見が2件。また『ディロン~運命の犬~』に「久々にこんな心温まるドラマを見た」、『トップキャスター』には「主人公に良いところと駄目なところがあるからこそ魅かれる」、『ブスの瞳に恋してる』には「美男美女が主人公でなく新鮮な目で見られる」と、好評意見が寄せられた。
- バラエティーでは、『エンタの神様』に「好きで見ているが、同じようなネタをやる芸人が多すぎる」などの注文が2件。そして好評意見は『トリビアの泉』と『水10!ココリコミラクルタイプ』、そして『ココリコ・ミリオン家族』にも「かくれんぼをする家族のアイデアが面白い」と、計3件寄せられた。また不必要な芸能人が出演しているという注文が『行列のできる法律相談所』『週刊人物ライブ スタメン』『ニッポン チャ×3』に、『いきなり黄金伝説』には「食べ物を粗末にしている」という注文が寄せられた。
委員会では委員から次のような発言がなされた。
- 『世界がもし100人の村だったら4』の報告で学校教育と連動できればという意見があったが、大切なことなので実現してほしい。
- 不必要なタレントが出ているという注文が、複数の番組に寄せられているが同感。サッカー中継でもタレントの必要性を感じない。
- 『クロサギ』の感想が面白い。中学生には正義感があり、主人公の詐欺師にシンパシーを持とうとして悩んでいる。
- 「お互いが言い合っていて何を言っているか分からない」という『たけしのTVタックル』への意見や、「食べ物を無駄にしている」という『いきなり黄金伝説』への意見は、まともな感想で大人が見過ごしている気がする。
- 米山豪憲君の事件で報道の過剰を注文している意見があるが、確かに最近の情報系番組では何を伝えるかではなくどう印象付けるかに重点を置いているように思える。話し方まで演出過剰で声色まで普通じゃない。
7月の中学生モニター報告は、テーマを「テレビのこういうところはいや、こういうことはやめて欲しい」と設定し、意見を送ってもらうことに決定。7月27日(木)に開催する中学生モニター会議は、このモニター報告をもとに意見交換をし、会議内容をまとめた冊子を発行する。
調査・研究活動について
橋元委員から、調査企画チーム(第3回会合)の概要について、下記のとおり報告があった。
- 個別の深層インタビューをする方向で進めているが、対象者のライフヒストリーやテレビの見方の背景についても併せて調査する。
- 個別インタビューとは別に、視聴者から寄せられた意見の中で、問題になった番組についてグループインタビューを行うことも検討したい。
- テレビを長時間見る子だけではなく、テレビをあまり見ない子も調査する。
- 調査結果だけを公表するのではなく、テレビ局に対してなんらかのメッセージを出したい。最終的には、出版物にすることを考えている。
- 調査を開始する前のプリテストとして、7月27日開催の中学生モニター会議で、現在のモニターを対象にグループインタビューを行うこととした。