青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第67回

第67回 – 2006年4月

青少年に関する視聴者意見について審議

中学生モニターについて …など

青少年に関する視聴者意見について審議

審議に入る前に、前回の委員会で調査対象になった2つの番組について、事務局から次のとおり報告があった。「合コンから個人恋愛に発展させる4月からの新番組に、中学生への出演依頼が来た」との教師から抗議があった番組を視聴した結果、中学生は出演せず、今どきの高校生の男女交際を取り上げたものであった。

また、「番組の中で、小学生がキャバクラ嬢と風俗店に同伴出勤した」と視聴者から指摘のあった番組については、当該局に事実確認をした結果、「小学生とキャバクラ嬢が中華料理屋で食事をした映像に風俗店が映し出された。この4月からは時間帯が変更になったため小学生は出演しない」との説明があった。これに対して委員からは、「小学生が出ている意味がわからない」「安易に子どもを連れてきて番組を活性化させるということならばやめたほうがいい」などの意見が述べられた。

この後、視聴者からの意見を基に審議に入った。

はじめに、”秋葉原”を特集に取り上げた夕方のニュース番組について、「オタク=犯罪者予備軍という捉え方をしている」「子どもが見ている時間帯なのに、女性記者にアダルト系ゲームの取材をさせた」などの視聴者意見が数多く寄せられているが、委員からは主に次のような意見が出された。

  • ニュース番組で、若者が新しいことにのめり込む現象を取り上げるとき、”オタク”という言葉に封じ込めて、それがあまり好ましくないと決めつけた見方が偏見と受け取られている。
  • 意見の中で、最近は青少年犯罪が減少しているにも関わらず、オタクと青少年の犯罪を結びつけるような扱いは偏見だということだが、青少年犯罪に関する数値が放送中にきちんと出されているのかどうかが基準になるかと思う。ニュースで取り上げるときは、客観的なデータを示すことで方向付けることが可能になるのではないか。
  • ニュースに関連して、メディアではネーミング(例えば”オタク”とか”投げ捨て男”のように)をつけて報道するが、言葉で象徴するのではなく、もっと普通に説明して放送することが望ましい。
  • ニュースのテーマの取り上げ方が安易な設定になっていて、社会的な問題提起よりはセンセーショナルなもの、物珍しさや特定の地域に限定されているのではないか。作り方もフォーマット化されていて、目配りが足りない。
  • 最近のテレビニュースはネタがないのか、同じものが集中的に取り上げられている。
  • 夕方の時間帯でアダルト系ゲームなどをニュースとして扱うときは、子どもも見る時間帯であることを配慮してほしい。
  • 今回、ニュースの中で偏見と受け取られかねない取り上げ方やアダルト系のテーマの扱いについて問題になったが、ニュースの扱いについてはこれだけではないので、今後積み重なっていった段階で対応していくことでいいのではないか。
  • ニュースで最近の社会現象を取り上げることは問題ないが、子どもが見ている時間帯での表現の仕方などについても、事件報道での子どもへのインタビューの配慮と同じように、青少年委員会として考えていくべきではないか。

さらに、消費者金融CMやパチンコCMに対する批判も増えてきていることについて、次のような意見があった。

  • 消費者金融CMは青少年が見て、いかにも簡単にお金が借りられるものと思ってしまうのが問題だ。
  • パチンコCMには規制はないが、パチンコ自体は18歳以下には禁止となっているので、子どもが見る時間帯での放送は考えるべきではないか。
  • たばこCMに関しては、世界的に見て厳しい規制がされている。パチンコなどのギャンブルCMは、場合によっては家庭崩壊にも繋がるおそれがある。「未成年のパチンコ遊戯は禁止されています」というような、マイナスイメージのテロップを必ず入れることを義務付けるのが、時代の趨勢としてあってしかるべきではないか。
  • CMの意見には、ゲームソフトCMに対する批判もあるが、ゲームソフト業界の自主規制で、低年齢層には購入禁止となっているゲームソフトについては、パチンコCMと同様に、放送時間帯には配慮するようテレビ界も良識を持って対応してほしい。

このほか、「タレントを氷水に浸けるのはいじめだ」という視聴者意見に対し、委員から「以前から問題にされているのに、相変わらず”イジメ的”なバラエティーがある。なくしてほしい」「芸人が芸人をいじめるパターンは、中学生モニターでも面白いという意見は出ていない」「自分たちだけで楽しんでいるのでは」との意見が述べられた。また、他の委員から、4月から始まったドラマのタイトルについて、「視聴者からも”ブス”というタイトルは差別的という意見があるが、今は使わないのが普通の認識としてあるので、今後、視聴者からの意見を注目していきたい」との意見があった。

中学生モニターについて

今月からの新規公募モニター24人中の23人、1月から報告を送ってもらっているテストモニター9人の計32人から寄せられた意見について審議した。報告テーマは、1月から4月中旬までに見た番組についての感想・批判・期待することなど。委員からは次のような意見が出された。

  • 中学生モニターの意見はとてもしっかりしていて上質な意見が多い。バラエティーでも芸人の自己満足的なトークに批判的であり大変まともな感じがする。
  • とにかくまじめで一生懸命にテレビを見て書いてくれている点は感激するくらいだ。
  • これだけの文章を書けるのだから質が高いメンバーが多いのは間違いないだろうが、感じ方は普通の中学生と共通していると思う。
  • この委員会では、放送局のバラエティー担当者と話を続けてきたが、是非中学生モニターにバラエティーをどう思っているか意見を聞きたい。
  • 10代・20代のテレビ視聴率は低下している。バラエティーを若い人がどのくらい見ているか知りたい。(次回の委員会までに、いくつかのバラエティー番組について視聴者層を調べ、報告することにした。)
  • ドキュメンタリー系番組についての意見もかなりあった。中学生のドキュメンタリーへのニーズは多いのではないかと思う。
  • こうした意見を一過性のものとして見るだけでなくデータとして蓄積しておき、調査・研究につなげるための分析手法を考えたい。

中学生モニター報告の4月分は、ドラマについての意見が一番多く21件(1人で複数件の報告有)。バラエティーについて17件、その他11件となっている。全体としては好きな番組の感想や推奨する意見が多く、7割程を占めた。

ドラマでは『少しは恩返しができたかな』に、一番多く3件の意見が寄せられた。「人間のとにかく生きようという力が伝わった」、「実話だということもあり、親近感が湧いた」、また「曲(上を向いて歩こう)の使い方が素晴らしく、1曲で人間の喜怒哀楽をリアルに伝えてくれた」などといずれも好評だった。また意見が2件寄せられたのは『クロサギ』『たくさんの愛をありがとう』『西遊記』であった。『西遊記』には、沙悟浄が孫悟空に言う台詞で「天国にいけないぞ」というのがあったが、仏教の世界の話なので”天国”ではなく”極楽浄土”のはずだ、一行の中心に一番偉い三蔵法師でなく孫悟空がいるのはおかしいなど「脚本がいい加減だったのではないか」という注文があった。他に『白夜行』について、「原作を読んでいたが、あまりにもはしょっている、6カ月間のドラマにしてほしかった」、『妻は多重人格者』にも「お金をたくさん借りたことにより家族に不幸が訪れるという話だったので、スポンサーを金融業者が担当するのはあまりいいこととは思いませんでした」などの注文があった。

バラエティーでは、一番多く3件意見が寄せられたのは『愛のエプロン』。うち「世界ではご飯を食べられない子どもがいるのに、タレントが下手な料理を作って番組のネタにしているのはもったいない」などの注文が2件。「家族そろって楽しめるので多くの人たちに見て欲しい」という推薦意見が1件だった。意見が2件寄せられたのは『あいのり』と『笑っていいとも!春の祭典SP』。『あいのり』への意見では、「今後も現在の時間帯で30分間の放送を続け質が落ちないように、ただ特殊な人ばかりを出演メンバーに選ばないで」という希望が伝えられた。他に主な注文としては、『笑いの金メダル』に、ネタが少ない・芸人だけ楽しめばいいみたいになっている。『エンタの神様』には、たまに驚くほどつまらない芸人が出ているなどがあった。

その他の分野で2件意見が寄せられたのは『その時歴史が動いた』。「誰も知らないような事が出てくるので、みんなで見ていて楽しい」などと好評だった。

中学生モニターの意見は、一般視聴者意見同様、関係各放送局に送付することになった。

今後の調査・研究活動について

青少年委員会の今後の調査・研究について、過去のテレビの研究成果などの資料を基に委員から次のような意見が出された。

  • テレビの影響調査に関する資料を見ても、データを求めて因果関係を鮮明にするという発想は不毛なのか、それともまだ可能性があるのかよくわからない。
  • 研究者から考えても、不毛というより結果的にいろいろな要因が絡み合っているのが目に見えている。現在は、メディア状況が複雑化しているので、はっきりした因果関係は見出せないと思う。
  • テレビの影響関係を調べるよりはメディアリテラシーの問題をテーマにするのはどうか。
  • 中学生モニター意見のような自由回答を基に、統一した視点をもって見てもらい基準を作っていくことも考えられる。
  • 番組の良し悪しを主観的に判断しているので基準がほしい。
  • テレビを見る前と見た後の感想や見始めるきっかけについてなど、テレビ視聴の周辺も調査できるといままでとは違うものが掴めるのではないか。

以上の意見を踏まえ、今後、調査・研究を具体的にするため、橋元委員、是永委員が中心となってたたき台を作って進めていくこととした。

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