第092回 – 2004年9月
「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理
「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件について検討…など
「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理
警察官からストーカー行為を受けた愛知県の女性が、「警察に被害届を出した際、名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、意に反して顔出し放送(3月)され、権利侵害された」と訴えている事案。名古屋テレビは、「申立人の意思を確認した上で顔出し放送に踏み切った」と主張している。
委員会では、申立人からの「申立書」「反論書」や、それに対する当該局からの「答弁書」「再答弁書」などを踏まえて、実質的な審理に入った。また、本事案の基本的な論点となる「申立人から事前に取材要請があったかどうか」や「放送での顔出しの応諾に関する事実認識」の双方の主張について意見交換した。
検討の結果、委員会では、申立人・被申立人双方の主張に隔たりが大きいことから、10月の委員会で双方を個別に招いて事情聴取することが必要と判断し、ヒアリングを行うことを決めた。
「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件について検討
この案件は、6月に栃木県のセミナー運営団体から、「犯罪行為があったことを前提とするような断定的な報道をされ、人権や名誉を著しく傷つけられた」として苦情申立てがあったもの。
放送人権委員会では、7月の委員会で協議した結果、「申立書の記載内容に不明な点がある」として不受理と決定。その旨を7月末に申立人代理人に伝えるとともに、申立人の意向を確認していたところ、9月、一部手直しした申立書が新たに送られてきた。
これを受けて、委員会で取り扱いを検討した結果、当該申立内容について放送局と一度も話し合っていないことから、まずは申立人側に局側との話し合いを行うよう要請することにした。
放送人権委員会審理に関連する苦情について
- 「文化財遺跡発掘関連報道」に関する苦情
「文化財遺跡発掘についての取材を受けたが、答えた内容と放送が違っていた。放送では事実関係を捏造され事件屋扱いされた」との苦情が、大阪府の男性から8月、放送人権委員会に寄せられた。苦情申立人と当該局との間では、苦情申立て以前に文書でのやり取りが行われていたが、双方の主張は対立したままである。
委員会としては再度、双方に話し合いを要請し、その結果によっては「申立書」の提出を求めることにした。 - 「親に無断で施設児童取材」との苦情
8月に放送された”被虐待児童が児童施設で養育されている様子を描いたドキュメンタリー”に対し、山形県在住の児童の母親が苦情を寄せた。「施設に預けている子どもが自分に無断で取材され放送された。放送前に番組を視聴させてもらったが、モザイクを掛けてあるとはいえ、明らかに自分の子どもとわかる。放送をやめるようディレクターに話したが、取り合ってくれない」と当該局に抗議。
これに対し、当該局は「親権を代行している施設の長に許可を得ており問題はない。モザイクも掛けており、人権上の配慮もしてある」として、放送に踏み切った。
放送後、放送人権委員会に対して電話で苦情の訴えがあったものの、母親から当該局に直接訴えがなされていないことなどから、放送人権委員会では、両者にさらなる話し合いを要請していた。
9月に当該局の報道担当役員らが苦情申立人宅を訪れ、取材意図や配慮などを説明した。これに対し申立人は、「親の許可なしでの取材・放送は遺憾である」と主張したが、それ以上の要求はなく経過してきており、当該局側は、これで一応決着したものと判断している。
人権に関する苦情対応(8月)
- 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
- 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・2件
その他
「放送人権委員会委員と在京局の放送人権委員会担当者との意見交換会」を、早ければ11月の委員会当日に開催することにした。
また、「放送人権委員会委員と地方の放送事業者との意見交換会」は、年を越えた今年度内を目途に広島で実施することにした。
次回放送人権委員会を10月19日(火)午後3時30分から開くことを決め、閉会した。
以上