青少年委員会

青少年委員会

2012年3月2日

子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望

PDFファイルはこちらpdf

2012年3月2日
放送倫理・番組向上機構【BPO】
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会は3月2日、東日本大震災報道と子どものPTSD(心的外傷後ストレス障害)等の心理的ストレスとの影響について、1月開催の第129回、および2月開催の第130回委員会で議論を重ねた結果、「子どもへの影響を配慮した震災報道についての要望」を公表いたしました。

2011年3月11日に発災した東日本大震災後、各局が24時間体制で伝えた震災報道は、国民の知る権利に応えるとともに、被災者支援にも大きな力を発揮しました。また起こりうる災害に備えるためにも、今後、この事実を伝え続けるためにも、報道はますます重要になるものと思われます。
私たちは、真実を伝える報道の重要性を尊重しつつも、その一方で、子どもたちの震災ストレスに十分注意し、適切なケアを行う必要があると考えています。震災以後、青少年委員会にも震災報道を視聴することによるストレスについて多くの意見が寄せられてきました。
こうしたことを踏まえ、東日本大震災から間もなく1年を迎えようとする今、青少年委員会では各放送局の自主・自律性を最大限に尊重した上で、以下の3点をお願いすることにいたしました。

  • 震災関連番組内で、映像がもたらすストレスへの注意喚起を望みます。
    青少年委員会は、各局が映像によるストレスへの配慮をしながら震災関連番組を制作してきたことを評価するものです。また、注意喚起を行ってきた番組の存在も十分に承知しております。今後放送される番組内でも、映像によるストレスについての注意喚起が引き続き行われていくことを望みます。
  • 注意喚起は、震災ストレスに関する知識を保護者たちが共有できるように、わかりやすく丁寧なものとすることを望みます。
    注意喚起は、子どもたちを映像によるストレスから守る立場の保護者に向けたメッセージとして効力のあるものでなくてはならないと考えます。番組内で行われる注意喚起のあり方と内容について、各局でさらに十分に協議し、放送されることを望みます。
    震災ストレスに対する啓発のための番組の制作、および情報番組や報道番組内での詳しい解説による保護者たちへの情報提供についてもご検討いただけると幸いです。
  • 特にスポットでの映像の使用には十分な配慮を望みます。
    番組宣伝のためのスポットは、予告なく目に飛び込んでくること、前後の脈絡がない中で映像が切り取られて使用されることなど、受ける衝撃は通常の番組よりも強いものとなることが懸念されます。震災関連番組のスポットで使用する映像に関しては、子どもたちへのストレスを増長する危険性の有無について協議した上で、十分な配慮を望みます。

本委員会では、2002年3月15日に、前年の大阪の児童殺傷事件やアメリカの同時多発テロ報道を契機とした議論をもとに、「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」を発表しました。提言では「テレビ報道が『事実』を伝えるのは、国民の『知る権利』に応えることであり、民主主義社会の発展には欠かせないものである。その伝える内容が暗いものであったり、時にはショッキングな映像であったとしても、『真実』を伝えるために必要であると判断した場合には、それを放送するのはジャーナリズムとして当然である。子どもにとってもニュース・報道番組を視聴することは市民社会の一員として成長していく上で欠かせない。」としています。その上で、子どもをPTSD(心的外傷後ストレス障害)等の心理的ストレスから守るため「刺激的な映像の使用への注意」「『繰り返し』効果がもたらす影響への検討」を求めました。

本委員会は同提言を踏まえ、東日本大震災の報道により、PTSD等子どもたちの被害を拡大させないために、あらためて各放送局に要望することにいたしました。

≪ 参考資料 ≫
BPO青少年委員会「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」2002・3・15
民放連・放送基準審議会「『番組情報の事前表示』に関する考え方について」2001・7・19

以上