放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第6回

第6回 – 2007年10月

裁判員制度と事件報道

総務省の行政指導 …など

裁判員制度と事件報道

裁判員制度の発足を1年半後に控え、委員から事件報道のあり方を議論する必要があるのではないかとの問題提起があった。委員会として検討する必要があるのか、あるとするならどういうやり方があるのかを審議した。

まず提案委員から、立法段階からの報道のあり方をめぐる議論の流れが紹介された後、「公正」「推定無罪」「予断排除」「評議の秘密」の裁判の原則、9月のマスコミ倫理懇談会第51回全国大会で最高裁総括参事官から「被疑者があたかも犯人であるかのような事件報道のなかで、裁判員が公正・中立な判断をできるかどうか不安がある」との懸念が表明されていることなどをふまえ、委員会として公正な裁判を受ける被告人の権利と報道の自由をどうバランスをとるべきか、議論を深めるべきではないか、との問題提起があった。

議論の概要は以下の通り。

  • 基本的に、この委員会の存在理由は、既に放送されたものについて議論すること。”予習”としてはわかるが、放送されてから議論するのではないか。
  • 問題になるのはテレビの影響力をどうみるか。基本をおさえるのは大事だが、具体的事例でないと難しい。
  • まだ報道側の自主的なガイドラインができていない。できてからでないと議論もしにくいのではないか。
    この件に関しては、具体的事例がないと議論しにくいという意見が多くだされ、報道側のガイドライン作成を待ち、具体的な番組などがあった時にあらためて議論することになった。

総務省の行政指導

昨年から件数が増えている総務省の行政指導について、委員会として審議するかどうか、するとすればどういうやり方があるかを議論した。

  • 総務省と各局が個別対応しているが、どう対応したのか事例研究し、情報が周知されることが必要ではないか。
  • 総務省が、どういう根拠で指導を行ったかがわからないものが多い。社会に公開する仕組み、いわば”可視化”が重要。
  • 委員会として、運営規則第4条にある「放送倫理を高め、番組の質を向上させるため」と行政指導のあり方・放送局の対応の議論をどう結びつけるのか。
  • 何か問題があるとしても行政指導に対して表現する側(放送局)が毅然とした態度を示さなければ委員会としてはやりようがないのではないか。

こうした意見が出された後、委員長から「委員会として審議あるいは審理している番組などが行政指導を受けていれば、取り上げようもあるかもしれないが、過去に指導を受けた番組について、改めて委員会で議論するのは、委員会の目的からして難しい」との判断が出された。

一般の人にドッキリカメラ手法を用いて、霊能者が亡き人のメッセージなるものを伝え、「傷つけられた」と抗議のあった番組

「善意の放送の形をとりながら、結果的に自分や周囲の人たちが傷つけられた」と出演させられた一般の人から抗議が寄せられた番組について、制作手法や霊能者の使い方などについて審議した。なお、審議に先立ち、事務局が当該放送局の放送後の対応を報告し、出演者から抗議を受けた後、制作放送された当事者の活動を改めて紹介し直したフォロー番組を視聴した。

  • 取り上げた人に対する愛情が感じられない。最初から「感動を作ってやろう」という意図が見える作りだ。
  • 抗議を受けて作ったフォロー番組は、訂正でも何でもない。最初の放送は、相手方の了解をとらずにドッキリ手法で騙している。最初からストーリーありきで作っている。
  • 出演者にとって心外な内容を前提にストーリーができているのではないか。あざとい印象がある。仮に、それが事実であったとしても、触れてほしくない、開示されたくない情報を出すことを本人に断わらずに放送していいのか、という問題があるのではないか。
  • 仮に一般の人をだまして作るドッキリ手法の番組が許されるとしても、結果として撮影された人が喜んで納得しなければ、その時点で失敗。放送してはいけないと思う。
  • 有名タレント、有名な霊能者に会えば喜んでくれる、といった作り手の驕りがどこかにあるのではないか。番組の作り方の問題だと考える。
  • 委員会として何を問題にするのか。一般の人をだましたような作り方と霊能者と呼ばれる人の使い方、その発言内容が問題になるのではないか。また、抗議を受けて作ったフォロー番組は、訂正ではないので一般視聴者はわからない。問題のある番組を作ったという意識がないのでは。
  • 民放連の放送基準には、迷信、占いの類の表現に関する条文や、個人的な問題を扱う場合は、出演者および関係者のプライバシーを侵してはならないとか、不快な感じを与えてはならないなどいくつか条文がある。これに触れるという言い方はできるのではないか。
  • 総務省が放送局の作った基準を理由に行政指導を行うことが増えているので、違うフレームで見るほうがよいと思う。

委員会では、今回の議論をふまえ、問題点を整理したうえで、さらに審議していくことにした。

事務局からの報告

  • 浮くコンクリートは、真っ赤なうそで国民をだましたとの訴え。事務局で当該局から提供された番組録画を視聴した結果、放送表現上問題はないと判断。
  • 光市母子殺害弁護団に対する懲戒請求発言の放送について、公正・公平な検証を求めるとの要請。すでに、弁護士同士で係争中であり、委員会の審理要件に合致せずと判断。
  • 片輪走行競技の不適切な映像表現について、当該局から委員会に報告。視聴者からの指摘で、当該局が調査した結果、記録自体に間違いはなかったが、ビデオで確認した結果、スタントマンのお手本走行の映像を途中挿入していたことが判明。同社のホームページでお詫び。

その他、TBSが委員会の見解を受けたことなどによって、10月1日に組織改正を行ったこととあわせ、井上社長が会見で「番組をもっとちゃんと作るべきとの指摘を受け、非常に恥ずかしい思いをしている。これまでよりきめの細かい監督管理体制とし、番組の質的向上を目指す」と述べたことを報告。

また9月の委員会以降の視聴者意見概要とデータを報告。今年度上半期だけで、BPOに寄せられる意見が前年と比較し、80%増加し、放送局への批判、BPOに対する注文が強まっていることを指摘。

以上