第090回 – 2004年7月
審理要請案件
委員会決定についての北海道文化放送の「改善報告」…など
審理要請案件
1.「警察官ストーカー被害者報道」
この案件の申立人は愛知県の女性で、内容は「警察官からストーカー行為を受け3月6日被害届を出したところ、当該局からインタビューを受けた。『放送では顔は出さないで欲しい』と依頼したにもかかわらず、ニュース番組で放送された。抗議したところ、『顔出しの了解は得ていたはず』と言われ、謝罪を求めたが断られた」というもの。
審理入りするかどうかについて意見が交換されたが、当該局になお話し合いの意図があることを考慮し当面話し合いを継続するよう要請することになった。
2.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」
この案件の申立人は、栃木県のセミナー運営団体と個人2人で、内容は「犯罪的行為があったことを前提とするような断定的な報道をされたために、人権や名誉を著しく傷つけられた。当該局に報道の訂正及び取消・謝罪を求めたが、当該局からは『十分な取材に基づくもので、問題はない』と回答された」というもの。
各委員から、「申立書の内容では、組織の名誉を侵害されたのか個人の名誉を侵害されたのか定かでない」「申立人2人についても直接放送では取上げられていない」「権利侵害の具体的内容がはっきりしない」などの意見が出された。
上記の意見を踏まえ、本件は受理されるまでには至らず、その旨を申立人側に伝えることにした。
3.「政治的公平を求める民主党の申立て」
7月6日付けで民主党代表の岡田克也氏を申立人とする申立書が提出されたのをうけて協議した。
申立書の内容は「山形テレビが3月20日に放送した『どうなる山形!~地方の時代の危機~』は、自民党山形県連制作の持ち込み番組で、”政治的公平”を定めた放送法の規定に反するものだ。本件番組は、自民党との関係で政治的に公平な取り扱いを求めることが出来る民主党の権利を侵害したものだ」というもの。
委員会で取り扱いを協議した結果、1.苦情の取り扱い基準を定めた放送人権委員会運営規則第5条第1項の(5)において、「苦情を申し立てることが出来る者は、当分の間、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする」と定めていて、政党等団体は申立人資格の適格性を欠くこと、2.本件申立ては本質的に見て、人権侵害というよりむしろ政治的公平性に関する問題を対象にしていると考えられるが、同運営規則同条同項の(1)において、苦情の取り扱い対象は、「名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関するものを原則とする」と定めていて、直ちに政治的公平に関する問題を審理することは困難であること、との見解で一致し、本件申立ては受理されないことになった。
以上の見解は、2003年12月に自由民主党の幹事長安倍晋三氏から「テレビ朝日が『ニュースステーション』で放送した『”菅政権”閣僚名簿発表』コーナーは不公平・不均衡」とする申立てが、BPO=放送倫理・番組向上機構宛にあった際、審理対象外として処理した事由と同内容である。
委員会決定についての北海道文化放送の「改善報告」
北海道文化放送(UHB)から委員長宛に6月21日付で、先の当該局に対する委員会決定(勧告)に関する「改善報告」があった。
委員会では、この報告内容を検討した結果、UHBが委員会決定を真摯に受け止め、誠意ある対応をしていることを高く評価した。
民放連加盟各局は、BPOの発足にあたり、「各委員会から放送倫理上の問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取り組み状況を3か月以内に委員会に報告し、委員会はその報告に対して意見を述べ、BPOが報告と意見を公表することを了承する」と申し合わせていることから、この申し合わせに基づき、北海道文化放送の改善報告ならびに委員会の意見をホームページならびに「BPO報告」で公表することを確認した。
放送人権委員会への苦情(6月)
6月に寄せられた放送人権委員会関連の苦情について、下記の報告が事務局よりあった。
◆人権関連の苦情〔21件〕
- 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先番組名などが明らかなもの)・・・5件
- 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・16件
その他、放送人権委員会についての問い合わせ等・・・1件
その他
次回放送人権委員会を8月17日午後2時から開くことを決め閉会した。
以上