放送倫理検証委員会

「三委員長の見解と提言」を出すにあたって(理事長コメント)

「三委員長の見解と提言」 を出すにあたって

2003年12月11日

「三委員長の見解と提言」 を出すにあたって

BPO[放送倫理・番組向上機構]理事長  清 水 英 夫

BPOは今年7月の発足以来、三委員会(BRC、放送と青少年に関する委員会、放送番組委員会)の独自性と独立性を尊重してきた。同時に、それら委員会に共通する問題や、そのどこにも該当しない問題等の処理に関して、検討を続けてきた。

今回の視聴率問題に関する三委員長の見解と提言は、BPOのあり方に関する一つの方向を示したものと言えるであろう。この提言がまとめられる過程として、各委員会において活発な意見交換が行われた。そして、それら有識者の意見を基に、三委員長による検討がなされ、まとめられたのが今回の見解と提言である。

ただちにわかることは、今回の視聴率問題に関する三委員長の見解が極めて厳しいことである。その背景には、各委員会における委員各位のさまざまな厳しい意見が存在している。そして、それらの意見に共通しているのは、今回の事件が偶発的でもなく、また当該プロデューサー個人の問題でもないという認識である。

放送による人権侵害、低俗番組の横行、青少年に与える番組の悪影響など、BPOの主な関心事の背景には、視聴率至上主義や視聴率即メディア通貨と捉えがちな業界体質の存在があるのではないかと、多くの有識者委員は考えている。その事実を放送界は重く受けとめてほしい。

有識者委員の多くも、放送局経営における視聴率調査の存在理由や、視聴率を番組評価の一手段とすることには否定的ではない。しかし、視聴率を巡る業界の現状は、市民の常識に反し、あまりにも常軌を逸していたと考えざるを得ない。その意味で、今回の事件は放送のあり方を再考するうえで重要な契機にしなければならない。

三委員長は、次のような重要な提言を行っている。

  • 量的な視聴率調査だけでなく、番組の質を測定する視聴質調査の導入も検討すること。
  • 広告界も新しい評価基準づくりに向けて、積極的に協力してほしいこと。
  • 放送人のモラルを高め、自律を強める倫理研修の必要性。
  • 視聴者(市民)の番組に対する積極的な発言を期待する。
  • 新聞や雑誌が視聴率至上主義の増幅に加担しないでほしいこと。

放送を担う人々がこれらの提言の真意を理解され、健全な放送文化の実現と発展のため、総力をあげて取り組まれることを切に希望する。

BPOも、第三者機関としての役割を再認識し、視聴者の声に耳を傾けながら、放送の自律と放送文化の向上のために努力していく所存である。