放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第127回

第127回 – 2007年9月

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案のヒアリングと審理

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理…など

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長らが「大阪市の償還金補助に関する毎日放送の報道は、特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダー個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

委員会では、申立人・被申立人双方から直接言い分を聞くヒアリングが行われた。この席で、申立人の解放同盟大阪府連の書記長は、「この報道によって、市から2倍の補助金を受け取っていると勘違いされ、大学や福祉施設の関係者それに学生らに説明しなければならない状況になった」と被害を被った実態を述べた。

一方、被申立人の毎日放送は、「放送全体を通して市の杜撰さを伝える方法として2倍という表現をとった。大阪府連書記長という肩書きは、代表例として取り上げたもので、公的存在である以上許されるのではないか」と述べた。

ヒアリングの後、更に審理を続け、10月5日に起草委員会を開いて本事案の問題点等を整理し、委員会決定の草案作成に向けて作業を進めることになった。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理

“グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの報道により、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案について、放送人権委員会は委員会で前回に次いで審理を続けた。

その結果、「報道が事実に基づいて行われたかどうか」、また「自宅周辺での取材がプライバシーの侵害にあたるかどうか」などについて、10月の委員会で申立人・被申立人の双方を個別に招きヒアリングを行うことを決めた。

「エステ店医師法違反事件報道」事案 当該局の改善報告

上記事案の委員会決定(6月26日)を受けて、当該局の日本テレビは8月28日放送人権委員会宛に「委員会決定を受けての取り組みについて」という文書を提出した。

この中で日本テレビは、「取材・報道指針の中の無断撮影・無断録音(隠し撮り)の項において、無断撮影・無断録音(隠し撮り)素材の放送での扱いに関する基準について、素材の使用に際しては十分な検討を行うとの基準を、新たに設ける改定を行った」としている。

苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[14件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

事務局が下記の準備状況を報告し、了承された。

1.「BPO放送法研究会」のスタート

BPOの各委員会の委員有志を核にメンバー構成した放送法研究会の第1回会合を、9月25日に開くことになった。放送評論家の松田浩氏が「電波三法の制定とその変質」をテーマに講演し、そのあと質疑、討論を行うことにしている。20余人の参加を見込んでいる。

2.「放送人権委員会フォーラム」の開催

「放送と人権~放送倫理の確立を目指して~」をテーマに、放送人権委員会10周年を記念するフォーラムを12月5日(水)に開催することになった。会場は東京・千代田区平河町の全国都市会館。全国の放送局の編成・考査・危機管理担当者や制作・報道担当者等300人を対象に、「放送と人権」「放送倫理」について基調講演とパネルディスカッションを予定している。基調講演は、放送人権委員会委員長で弁護士の竹田稔氏による「放送による人格権侵害と放送倫理」、パネルディスカッションでは、取材・編集・OAの各段階での放送倫理などについて具体的な論議を進めたいと考えている。なおパネリストとしては、ジャーナリストの江川紹子氏、読売新聞編集委員の鈴木嘉一氏、それに放送人権委員会委員や放送局側の代表も参加する予定。

3.「放送人権委員会判断基準」改訂版の発行

放送人権委員会は、2005年11月に「放送人権委員会判断基準2005」を発刊したが、その後審理事案も増え、新たな判断内容も加わったことから改訂版を発行することにした。改訂2008年版に掲載される判断基準は、26事案35件となる予定で、2005年版より10事案10件増えることになる。
事務局から「参考資料として、新たなマスコミ関連判例も載せ、より使い勝手の良いものにしたい」と説明し、委員会はこうした編集方針を了承、監修を右崎正博委員が担当することになった。来年3月の発行を目途としている。

9月委員会は、次回委員会を10月16日に開くことを決め閉会した。

以上