放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第36回

第36回 – 2010年3月

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

バラエティー問題について …など

第36回放送倫理検証委員会は3月12日に開催された。まずブラックノート(黒く着色された偽札)詐欺事件を報じたTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』について3回目の審議を行い、委員会決定の文案について若干の修正を加えた上で、通知・公表することにした。
「バラエティー番組」のブックレットの内容について基本的な合意が得られたので、近く刊行の運びとなった。
毎日放送の報道番組『VOICE』で放送された街頭インタビューは、ヤラセではないかと視聴者から抗議があったが、当該局の説明を了承して取り上げないこととした。

議事の詳細

日時
2010年 3月12日(金) 午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

昨年12月、TBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』で、ブラックノートに特殊な薬品をかけると1万円札に戻ると称して、薬品代をだまし取るという詐欺事件が放送された事案。担当委員から提出された決定文案をもとに3回目の審議を行った。
まず、他人の車に勝手に発信器を取り付ける行為については、それ自体は妥当とは言い難いが、事案によっては報道の公益性との関わりが生じるので、委員会が安易に一般論を述べることは適当ではない、当該局と制作会社が具体的状況に即して判断すべき問題だ、という意見が大勢を占めた。
また、テレビ局と制作会社とは、対等なパートナーだと標榜されているが、実態は支配・従属関係になっているように見える、番組クレジットの表示方法も、制作実態に合わせて検討すべきではないかとの指摘があった。
決定文案を多少修正したうえで、速やかに通知・公表することにした。

【委員の主な意見】

  • 犯人と思われる人物の車に、無断で発信器を取り付けた取材方法について検討することは大切だが、一方で報道の公益性とのバランスを常に考えなければならない。その線引きはケースバイケースであり、この委員会がガイドラインを作るような問題ではない。
  • テレビ局と制作会社は使用者と非使用者ではないから、支配・従属の関係にはないのに、現状はそのように見える。バリエーションはあるにしても、本来両者は請負や委任の対等な契約関係にあるのではないか。
  • テレビ局と制作会社の契約関係は対等だとしても、放送責任は一義的にはテレビ局が負わなければならない。そのため、テレビ局が制作会社へコンプライアンスについて注文を出すのは当然だ。それは番組の中身だけでなく制作プロセスの問題も含まれる。今回の場合、制作会社とテレビ局の間で、報道の使命が自覚もされず、議論もされていないのではないか。
  • 制作会社と局との共同制作と、制作会社の完パケ持込みとの中間で起こった問題だ。今回の場合、局は制作会社との共同制作ならば、責任の所在を明確にするためにも、きちんと制作表示すべきだ。
  • 委員会は制作会社に対して直接意見を言う立場にない。制作会社で生じた今回のような問題は、放送局に対してきちんと取材方法の適正性をコントロールするように伝えるべきだ。
  • テレビ局が責任を負うべきなのに、制作会社をより厳しく取り扱うという方向で対応するのだとすれば、それは違うと思う。
  • 委員会は発足して3年になるが、今まで取り上げた事案の中には、テレビ局と制作会社との関係がおかしかったが故に起きた事例がたくさんある。

バラエティー問題について

昨年秋に公表した「委員会意見」のほかに、ブックレットに何を収録すべきかについて、担当委員がまとめた原案が報告され、基本的に承認された。
また、複数の番組や勉強会などで「委員会意見」を熱心に検討したフジテレビの対応を評価する意見が出された。
委員会は、「意見」を出したからバラエティー問題を今後扱わないと判断したわけではなく、問題のある番組が放送されれば、引き続き個別に取り上げることを確認した。

やらせインタビューを疑われた毎日放送の『VOICE』

毎日放送の報道番組『VOICE』(2月1日放送)で、大阪のワンコインタクシーが、乗務距離制限を課せられたことで経営的な難問に直面していることを報じた。その中で、タクシー乗り場にいて利用者としてインタビューされた男性が「乗車拒否されたことがある」など乗務距離制限に否定的なコメントをしたが、実はその男性は、ワンコインタクシー会社の社長であったことから、対立する大阪タクシー協会から、ヤラセではないかと抗議があった事案。毎日放送はそういう人物だと知らないでインタビューしたと、後日の放送で釈明した。委員会は毎日放送の説明を了承し、取り上げないこととした。

連絡事項

総務省が開催している「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」(3月29日)に飽戸理事長が呼ばれ、BPOの活動を説明することになったと報告した。また、4月1日に行われるBPO事務局スタッフの交代(事務局長と調査役1名)について報告した。

以上