第157回 – 2010年1月
「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理
「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理 ……など
「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の当事者に対するヒアリングと審理が行われた。「拉致被害者家族からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理し、内容を一部手直しのうえ来月の委員会で再度検討することになった。このほか、「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案で「勧告」を受けたTBSから、「委員会決定」後の対応報告が提出された。
議事の詳細
- 日時
- 2010年 1月19日(火) 午後3時~8時
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理
「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理
「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理
「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案でTBSから対応報告
12月の苦情概要
その他 - 出席者
- 堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員
「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理
この事案は2009年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
今月の委員会ではヒアリングとその後の審理を行った。
ヒアリングで申立人は「最初から最後まで『元気ある温泉地を撮らせてもらいたい、頑張っているところを撮らせてもらいたい』ということだけで、一言も『再生』という言葉は聞かなかった。あるひとつのストーリーがあって、それに私たちが話したことの部分、部分をつなぎ合わせて当てはめたような形の放送になっていると思った。報道番組に結果的に傷つけられた。バラエティー番組とは違ってきちんとしたことを伝えるべき報道番組で、そういう放送をしていいのか」などと述べた。
フジテレビからは報道局の担当者3人が出席し「口頭の説明や文書によって、企画の意図が正確に伝わっていたことは明らかだと考える。不況に立ち向かい、再生に向かって頑張っている姿を描くという当初の企画意図は放送まで一切変わっていない。頑張った結果、温泉街が活気に溢れているか、宿泊客数が伸びているかについては実際に取材した印象やデータなどをそのまま放送した。ただ、結果的に取材に協力していただいた方々に不愉快な思いをさせてしまったのは残念で、今後より細かい神経の遣い方をしていきたい」などと述べた。
ヒアリングのあと審理したが、次回2月の委員会でもさらに審理を続けることになった。
「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理
前回の委員会で「委員会決定」の方向が固まったのを受け、起草委員が「委員会決定」案をまとめた。これを1月7日の起草委員会で検討しこの日の委員会に提出した。
審理の結果、「委員会決定」案に大筋では異論は出なかったものの、一部内容と表現の手直しが必要との結論となり、来月の委員会で再度修正案を検討することになった。
本事案は、2009年4月24日のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』で司会者のジャーナリスト田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分っている」などと発言したことについて、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から「最も重大な人権侵害である」として申立てがあったもの。
「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理
テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から申立てがあり、先月の委員会で審理入りが決まった。
この日の委員会では、これまでに提出された申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」に基づいて、本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。
放送は、2008年11月に長野県上田市で老夫婦が隣人に殺害された事件を取り上げ、狭い私道を挟んで住む被害者と加害者の、車による通行をめぐるトラブルが直接の原因となったが、そもそもは明治時代に行われた精度の低い測量に基づく公図の境界線が曖昧で複雑なことも一因ではないかとしている。
この放送について申立人は「両親の長年に亘る嫌がらせが殺害の動機との内容は事実ではない。放送は両親の社会的評価を著しく低下させるものであり、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらに子供である申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
これに対しテレビ朝日は、「番組は決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなくまた、謝罪、訂正が必要な事実誤認もなかった」と反論している。
「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案でTBSから対応報告
本事案で重大な放送倫理違反があったとして昨年10月30日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、1月12日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。
(TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第41号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)
12月の苦情概要
12月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・3件
(個人又は直接の関係人からの要請) - 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・50件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
- 来年度の委員会日程について事務局より報告し、定例の委員会を本年度と同じく毎月第3火曜日に開催することで了承された。
- 3月25日にBPO年次報告会が開かれることになり事務局より報告した。
- 次回委員会は2 月16 日(火)に開かれることになった。
以上