放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第154回

第154回 – 2009年10月

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理 ……など

「割り箸」事案の「委員会決定」の内容が固まり、10月30日に当事者へ通知し、会見で公表することが決まった。「派遣法」事案の「委員会決定」案について審理し、大筋で了承された。「拉致被害者家族からの訴え」事案の実質的な審理が始まった。このほか、審理要請案件の審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年10 月20 日(火) 午後3時 ~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

東京在住の勤務医とその家族から申立てのあった「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案は、10月7日に開かれた2回目の起草委員会で検討された「委員会決定」案について、その内容が報告され、取りまとめに向けての意見が交わされた。その結果、若干の修正はあるものの、大筋として了承を得たのを受け、10月30日に申立人、被申立人双方に対する通知及び公表を行うことを決定した。
この申立ては、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月12日に放送された割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、起草委員会が策定した「委員会決定案」をめぐって、審理が行われた。 この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込んだなどの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を産みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで4回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などで審理を続け、先月には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。 これら審理を通じて、この事案の判断について各委員が意見を述べ、それをもとに起草委員会が「委員会決定案」をまとめ、この日の委員会に提出した。
委員会では、この「委員会決定案」を巡り審理を続けた結果、大枠では了承されることとなった。しかし一部に文章の加筆・修正も提案されたことから、これらを踏まえた「第2次決定案」を起草委員会がまとめ、今後持ち回りの委員会で了承を得る運びとなった。
なお、持ち回り委員会で了承が得られた場合は、11月上旬にも、この「決定」の通知・公表を行う方針も決めた。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

8月の委員会で審理入りが決まっていたものの、事案が重なったことなどから実質審理が延びていた。今月の委員会から本格的な審理に入った。
申立人である「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」は、2009年4月24日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」と発言したことについて、「人の生死に関する安易な発言は、名誉毀損以上に最も重大な人権侵害である」とし、テレビ朝日に田原発言の撤回と謝罪などを求めている。これに対し、テレビ朝日は「社として確認できていない内容が生放送され、家族や関係者にご不快の念を抱かせ、視聴者の方々の誤解を招いた」として5月29日の上記番組内で謝罪している。
この日の委員会では、改めて本事案の主な論点について確認した後、(1)田原氏の発言内容についてどう判断するか、(2)局側の対応と責任についてはどう考えるか、の2点を中心に各委員がひとりひとり意見を述べた。
次回の委員会では、さらに突っ込んだ議論を交わすことになった。

審理要請案件

本年7月17日のフジテレビ「FNNスーパーニュース」の放送をめぐって宮城県の温泉旅館の女将が事実に反する内容だったと申し立てた。委員会は審理入りするかどうかについて審議した結果、申立ては運営規則が定める要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
放送は、不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、フジテレビに対し謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基づく事実を伝えたものです」と主張している。
来月の委員会から審理が開始される。

仲介・斡旋解決事案

事務局より以下の件について報告し、了承された。

「インタビューの編集により誤解を招いたとの訴え」事案

在京テレビ・キー局が2009年6月、ニュース番組で放送した”地方空港の開港”をめぐるニュース特集で、取材を受けた地元企業の社長が、インタビューの肝心な部分が削除されたことにより、名誉を侵害されたとしてその回復を訴え、放送人権委員会に苦情を寄せた。
訴えの内容は、「国内線が決まっていないのは残念だ。しかし、国際線の乗り入れが決まっているので心配していない」とインタビューで答えたが、その前半部分だけ放送され、開港を期待している地元企業の仲間に対し、自分があたかも開港に悲観的な意見の持ち主のように放送され誤解を招いたというもので、当該局に対し、名誉回復措置をとるよう要望していた。
委員会では、当該局に対し、被取材者と誠意を持って話し合うよう勧めていたところ、9月末になって、報道局長名で「説明とお詫び」の文書を出すこととなり、話し合いで決着することになった。
この文書の中で当該局は、「被取材者の考えを十分に汲み取った放送をできなかったことを申し訳なく思っています」と述べている。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 64件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • BPO加盟各社を対象に11月26日に開かれる第1回「BPO事例研究会」のテーマが決まった。当日は、「事実確認のあり方」と「訂正放送のあり方」をテーマに2件の事案を取り上げる。事務局より報告し了承された。
  • 次回委員会は11月17日(火)に開かれることになった。

以上