放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第24回

第24回 – 2009年4月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『バンキシャ』

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』8 年前に放送されたノンフィクション番組 …など

第24回放送倫理検証委員会は4月10日に開催された。前回の委員会で審理入りした日本テレビ『真相報道バンキシャ!』で、昨年11月に放送された岐阜県の裏金作りに関する誤報について、特別調査チームのヒアリングの状況について中間報告が行われた。
NHK『ETV2001』事案は、担当委員から提出された委員会の決定文について議論し、基本的な合意が得られたので、若干の表現の手直しをした上で当該局に対して通知し、公表することにした。バラエティー番組についての意見に関しては、単に現状の問題点を指摘するだけではなく、制作現場の人たちと一緒に考えていけるような表明方法をめぐって議論が展開された。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年 4月10日(金)午後5時~8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

1. 虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組『バンキシャ』

2008年11月23日に放送された日本テレビの報道番組『真相報道バンキシャ!』が、岐阜県が発注した土木工事に絡み裏金作りが行われているという建設会社役員の証言をスクープとして報じたが、証言が虚偽であることが判明し、結果として誤報となった事案。前回の委員会で審理入りを決定し、特別調査チームを編成して事実関係の調査を開始した。事実調査の状況について、その中間報告があった。

<主な委員の意見>

  • 新聞や雑誌の世界だと、半分以上が外部スタッフということはほとんどありえない。どの範囲まで制作会社に任せてしまっていいのか。
  • 個人の問題にするのは簡単だ。放送倫理の問題をきちんと語ることは、単なる個人のモラルの問題じゃない。ただ、「放送局自体がコンテンツを自分ではもうほとんど作らなくて、よそに任せているという構造全体をやめろ」というような意見は間違っている。
  • 番組制作をアウトソーシングするのが多くなったが、放送責任はその放送局にあるわけだから、番組内容は放送局の誰かがチェックしなければいけないし、正にシステムの問題だ。そのシステムがきちんと機能しているのかどうかということが根本だ。
  • 実際には、できあがったものだけを見てチェックしろといわれても、チェックのしようがない。取材の過程からチェックを入れる仕組みがなければいけない。どの程度の裏を取ったかを確認した上でないと放送できないというルールが必要ではないか。
  • 会計検査院が指摘した、机やイスを買ったという税金のむだ遣いと、いわゆる裏金を要求されたということは収賄とか汚職の話だから位相が違う問題だ。情報選択のしかたや報道の姿勢も問われなければいけない。

このような意見が出され、次回以降に特別調査チームの調査報告を受けて継続して審理することになった。

戦時性暴力を扱ったNHKの『ETV2001』8 年前に放送されたノンフィクション番組

『ETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか 第2回問われる戦時性暴力」』の制作過程において、政治的な圧力により内容が不当に改変されたと関係者が主張している事案について、4回目の審議(討議を含めると8回目)を行った。
まず、担当委員から委員会決定文案が提出され、それに基づいて議論がなされた。その結果、大筋において合意が得られたので、最終的な表現の手直しについては委員長一任とし、4月中にNHKに通知して記者発表をすることにした。

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる問題点を「バラエティー論」として総括しようとする事案については、担当委員から対象になっている15番組の分類、今後の議論の進め方などについて提案がなされた。

<主な委員の意見>

  • バラエティー番組の向上を目指すといっても、大変難しいこと。何を持って向上というのだろうか。ジャンルの横断がテレビの活気を作ってきた。枠にはめてしまう方法は疑問だ。
  • 事例はたくさんあるのだから、文書で出すよりもシンポジウムのような方法を検討したらどうか。シンポジウム会場がジャンル横断になるような。記録は後で出せばよい。
  • まとめ方を間違えると娯楽の精神に反してしまう。
  • まとめる必要はない。問題点の指摘はたくさん出るはずで、その答えは制作現場が考えるべきだ。委員会はこうすべきだというべきではない。
  • 『シャボン玉ホリデー』『夢であいましょう』などが本来のバラエティーで、ウソも捏造もOKの世界。今は情報バラエティーが主流だからウソも捏造も許されない。バラエティーの意味が変わってしまった。今回は情報バラエティーに限定したらどうか。
  • ボードビル系のバラエティーと情報バラエティーは根っこの部分で通じる問題がある。熟慮の足りなさ、作りこみの乏しさを地道に議論すべきだ。
  • 視聴者の声を聞かないとテレビが見捨てられるという危機意識が必要だ。
  • バラエティー番組を項目ごとに分類して一つ一つの問題点をクリアしていく。文字だけでなく、(映像や音声のある)マルチメディアで説明しないとこのくだらなさは分からない。バラエティー番組を素材として提起し議論する場を設定する方法がよいのではないか。

こうした議論の結果、具体的なまとめかた、発表方法の方向性については次回以降に持ち越してさらに検討することになった。

以上