第146回 – 2009年4月
委員長代行の指名
審理要請案件 ……など
堀野新委員長の下で初の定例委員会が開かれ、委員長代行に樺山、三宅の両委員が指名された。続いて、3件の審理要請案件について協議し、いずれも審理入りが決った。次回委員会から実質的な審理に入る。
議事の詳細
委員長代行の指名
冒頭、堀野委員長が、委員長代行に樺山委員(印刷博物館館長・新任委員)と三宅委員(弁護士・再任委員)を指名し、2人もこれを受諾した。堀野委員長は「再任委員と新任委員、法律家と非法律家という観点で選ばせていただいた」と語った。
この後、新体制のスタートに伴う委員会冒頭の撮影取材が行われ、新聞・テレビ各社から計14社・26名が集まり、スチールカメラ9台、テレビカメラ7台が入った。
審理要請案件
3件の審理要請案件について、それぞれ「申立書」と、局側から提出された「交渉の経緯と見解」及び「番組同録ビデオ」をもとに協議した。この結果、3件とも審理入りが決定し、次回委員会から実質的な審理に入ることとなった。
- 「派遣法・登録型導入報道」事案
この事案は、テレビ朝日『サンデープロジェクト』が、2009年2月1日および8日の2回にわたって特集した「派遣法誕生」の放送内容をめぐるもので、委員会で協議の結果、申立ての要件を充たしているとして、5月の委員会から実質審理に入ることを決定した。
この特集では、最近の雇用破壊・派遣切りの原点が「派遣法」の制定にあり、特に「登録型」導入に問題があったとしているが、この番組の中で、「法制定を積極的に進めたのは元労働事務次官と元大学教授の2人であると名指しで個人攻撃され、名誉・信用を侵害された」として、両名らが訂正及び謝罪の放送を求めて申し立てた。
これに対しテレビ朝日は、「特集は、不安定雇用の原因とされる『労働者派遣法』を検証する企画であった。特に見直しの検討も言われる「登録型」について、その成立の過程と問題点を指摘したもので、この問題を放置してきた「行政の不作為」についても検証している。決して、当時、法の制定に関わった方々を個人的に糾弾するものではない」と反論している。 - 「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案
東京在住の勤務医らから申立てのあった「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案について協議した結果、申立ての要件を充たしているとして、5月の委員会から実質審理に入ることを決定した。
申立ては、2008年2月にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたもの。
これに対しTBSは、医療事件を巡る刑事判決と民事判決を比較しながら、医療機関には「最善の注意」を果たしてもらいたいとの観点から放送したもので、名誉を毀損したとの認識はないと反論している。 - 「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案
この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。委員会で協議の結果、本件についてはBPOの放送倫理検証委員会で討議された経緯があるものの、申立ては要件を充たしているとして審理入りを決めた。
番組は2008年10月19日放送のTBS『サンデージャポン』。「申立書」によると、子ども達が並んでいる映像は行政代執行前日に撮影されたもので、この映像をもとにコメンテーターらが「無理やり並べさせられてかわいそう」などとストーリーを展開させており、ねつ造以外のなにものでもなく、訂正放送も全くおざなりだとしている。そして、具体的な事実誤認とコメンテーターの誤った発言に触れた訂正放送と名誉毀損の具体的内容に触れた謝罪の放送などを求めている。
TBSは「理事に直接謝罪し、説明不足はあるものの、事実誤認に関しては訂正・お詫び放送を行ったことから当社としては意を尽くしたつもりでおります」としている。
3月の苦情概要
3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。
- 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・5件
(個人又は直接の関係人からの要請) - 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・149件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)
その他
- 3月30日に行われた「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の「委員会決定」の通知と公表について、決定を受けての当該局・テレビ朝日『報道ステーション』での報道や新聞各紙での記事掲載について、事務局より報告があった。
- 次回委員会は5月19日(火)に開かれることとなった。また、事案が重なっていることから、迅速・的確に審理を行うため、6月以降、定例委員会に加え、必要に応じて臨時の委員会を開くことを決めた。
以上