放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第23回

第23回 – 2009年3月

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組「バンキシャ」

戦時性暴力を扱ったNHKの「ETV2001」事案 …など

第23回放送倫理検証委員会は3月13日に開催された。まず、昨年の11月に日本テレビ「真相報道バンキシャ!」で、岐阜県の土木事務所が架空工事を発注し裏金作りが行われているとの匿名の男の証言が放送されたが、県による内部調査と当該局の再調査の結果、誤報であることがわかった事案。明らかに虚偽報道であるので審理入りすることにした。
NHK「ETV2001」事案は、当委員会が出した質問に対してNHKから回答が届けられたので、その内容について意見が交された。その上で委員会の決定文の作成についていくつかの問題点が議論されたが、結論は次回以降に持ち越された。
東金市女児殺害事件の知的障害がある容疑者に対する報道は放送倫理に違反しているのではないかと問題提起された事案については、放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)で扱うほうがより適当であると判断して、この討議結果を同委員会に伝えることにした。
最後に、バラエティー番組全体に見られる問題点を「バラエティー論」として取りまとめる事案について、担当委員から番組の分類や基本的な考え方をまとめた案が提出された。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年 3月13日(金)午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

虚偽証言をスクープとして放送した日本テレビの報道番組「バンキシャ」

日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」(2008年11月23日放送)で、全国の自治体の裏金をテーマに4府県をとりあげて放送した。そのなかで建設会社役員の男の証言が紹介され、岐阜県で土木工事の発注に絡み裏金作りが行われていることがスクープとして報じられた。それを受けて岐阜県は土木事務所に対して内部調査を行ったが、そのような事実は見つからず、日本テレビに調査と訂正を求めた。日本テレビが再調査した結果、建設会社役員の証言は虚偽であることが判明し、訂正放送が行われた事案。なお、この問題は日本テレビの社長の辞任にまで発展した。

<主な委員の意見>

  • 社内教育が低レベルになり現場の質がものすごく落ちている。これは放送だけではなく活字でも起こっている。メールを送るだけでことが済むという現象が日本の総社会的状況だ。人間的接触の大切さを再認識すべきだ。
  • 日本テレビの訂正放送等のコメントを聞いていると、日本テレビが被害者だと思っているのではないかと疑いたくなる。
  • 報道番組を作るプロセスが変わってしまった。常駐とは言いながら外部スタッフの比率が高いことは教育問題も含めて大きな問題だ。今の報道番組がどう作られているのか根本部分を洗うべきではないか。
  • 日本テレビは検証番組を作るべきだ。
  • 民放の制作現場は人、金、モノがますます厳しくなっている。報道番組が増える4月以降、各局にとっても、ますます切実な問題である。
  • 情報に対する飛びつき方が浅ましい。何を根拠に信用したかが子供っぽい。裏取りを徹底すべきだ。
  • 誰が悪いということではなく、報道現場がいかにグズグズになっているかを検証すべきだ。
  • メディアの世界、特にテレビ各局はこの問題に対する危機感が薄いのはなぜか。この放送が原因で建設会社役員の逮捕に至ったのだという認識が低いのではないか。
  • なぜ常識的なチェック機能が働かなかったのか。実効的な防止対策が必要だ。

以上のような意見を踏まえて、なぜ虚偽放送がされてしまったかの原因・背景や社会に与えた影響の大きさを考えた場合、重要な事案であり審理入りすることを決めた。さらに事実関係の調査については、特別調査チームを初めて組織することにした。

戦時性暴力を扱ったNHKの「ETV2001」事案

8年前に放送されたノンフィクション番組『ETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか 第2回問われる戦時性暴力」』の制作過程において、政治的な圧力により内容が不当に改変されたと関係者が主張している事案について、3回目の審議(討議を含めると7回目)を行った。
まず、当委員会が出した5項目の質問書に対する回答がNHKから届けられたので、それについて意見がのべられた。
次に、NHKから提出された回答書を踏まえた上で、決定文の作成について議論された。具体的に話し合いがおこなわれたが最終結論に至らず、継続して審議することにした。

東金市女児殺害事件の容疑者に対する報道について

東金市女児殺害事件に関する一連の報道は、知的障害がある容疑者に対する人権侵害の疑いがあり、取材方法や放送のあり方が問われるべきだとして問題提起された事案。事前に配布された資料や映像をもとに討議した結果、当委員会で取り上げることも可能だが一般的・総論的な議論にならざるを得ない。このテーマの重要性を考えると、本事案に即した具体的な議論が必要なので、放送人権委員会で審理するほうがより適当であろうと判断し、この討議結果を同委員会に伝えることで一致した。

バラエティー番組の問題点について

バラエティー番組全体に見られる問題点を「バラエティー論」として総括しようとする事案については、担当委員から対象になっている15番組の分類、今後の議論の進め方等について提案がなされた。具体的な議論は次回以降に持ち越されることになった。

以上