放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第21回

第21回 – 2009年1月

建設中のマンションをPR的に扱ったバラエティー番組

戦時性暴力を扱ったNHKのノンフィクション番組 …など

第21回放送倫理検証委員会は1月9日に開催され、まず建設反対運動が起きているマンションをPRのように扱ったのではないかとされるバラエティー番組について討議した。ある街の魅力的なスポットをランキング形式で紹介するという当該番組のコンセプトと、具体的な番組の問題点についていろいろな意見が出されたが、個別の事案としては取り上げないことにした。
NHKの戦時性暴力を扱ったノンフィクション番組について5回目の討議を行った。8年前の番組ではあるが、放送倫理上の問題がある可能性があると認められたので審議入りすることにした。
昨年9月の委員会で、バラエティー番組の演出方法や質の問題について事例を積み重ねた上で検討することを決めた件につき、事務局から中間報告が行われた。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年 1月 9日(金)午後5時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

建設中のマンションをPR的に扱ったバラエティー番組

この番組のコンセプトは、ある街で見つけたモノの良い面だけを捉えてランキング形式で紹介することなので、結果としてPR的な手法になることはやむを得ない。また、マンション建設の是非がテーマの番組ではないし、一方の主張だけを取り上げたともいえない。しかし、1位としたそのマンションを取材するときに係争中であることに気がつかなかった、というのは明らかに当該局の取材不足である。身近な街の紹介をコンセプトとする同種の番組は何本か放送されているが、十分なリサーチと、広告宣伝とは一線を画した毅然とした制作姿勢が求められる。
以上のような意見を踏まえて討議の結果、当該番組自体に放送倫理上の問題があるとまではいえず、委員会としては取り上げないことにした。

委員の主な意見は次の通り

  • 今までのこの番組の流れから見て今回が特別とは思わない。広告を模したつくりがコンセプトなので、PR的な番組にならざるを得ない。
  • 六本木など再開発の流れの一環として、街全体の大きな変化としての取り上げ方ではないか。たださまざまな配慮が足りなかった。
  • 番組制作過程においてPR的な要素を、疑おうと思えばいくらでも疑えなくはない。そのような番組を放置しておいていいのだろうか。
  • 放送法とか番組基準で考えていくと、広告と番組の境界線を壊していて、ある意味ではテレショップ番組より質が悪い。この番組だけをあげつらうんじゃなくて、全体的にチェックしていかなければいけない。
  • 報酬が伴われて番組にしたとすれば問題だが、番組制作者が本当に価値がある情報だと判断して紹介するのであれば問題はない。放送の中で商品を紹介することに対して、何がいえるかはかなり難しい。
  • 例えば、番組で書籍をストレートに紹介するとPRになるが、これは私にとっては役に立った書籍ですということと、これはこの地域にとって活性化にとても役に立つ再開発ですということ、PRと番組の境目がどこにあるのか難しい問題だ。
  • この種の番組は他にもたくさんある。店に入っていってコマーシャルベースで商品を紹介したりする。コンセプトがゆるくなっている。
  • 番組を通して見て、マンション建設を1位にしたことが悪いかというとそうともいえない。放送倫理の問題として何かがいえるのかというと難しいと思う。ただ、係争中のものを番組の中で取り上げて積極的に評価をして良いのかは疑問だ。
  • 視聴者サービスなのか広告まがいなのか、その境が難しい。制作者のセンスが重要だ。宣伝くささが立ちすぎると、番組の魅力がなくなるから必然的に視聴者が離れる。
  • このマンションを1位に持っていったのは作為的だ。つまり、1位以外はほとんどが食べ物店やせいぜい花屋くらい、店ばかりを紹介しておいて突如このマンションが1位はあまりにも不自然だ。
  • 番組を作るに当たって係争中ということを知らなかったというのはおかしな話だ。現地の人はみんな知っているはず。当該局は1週間の調査をしたとあるが、本当に知らなかったならば取材・調査不足だ。
  • このマンションを紹介するなら、値段や間取りと並んで係争中であることも必要情報として放送すべきではないか。
  • あの番組のコンセプトは紹介するものを全て好意的に捉えているから、マイナス情報は出せない。
  • 街作りをどう見るかの問題だ。再開発をして街を作っていくのがいいという人もいれば、今までの環境が変わるのがイヤだという街作りもあって、どちらがいいとは言い難い。

戦時性暴力を扱ったNHKのノンフィクション番組

戦争と裁判をメインテーマに、戦時下における性暴力を扱った8年前に放送されたノンフィクション番組(『ETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか 第2回問われる戦時性暴力」』)。制作過程において政治的な圧力により内容が不当に改変されたと関係者が主張している事案について5回目の討議が行われた。
これまでの議論を踏まえて担当委員によって作成された、放送倫理上の問題点を整理した文書を元に討議がなされた。その結果、当該番組の制作プロセスを、NHKが自ら公開している文書および最高裁判所の判決により検討する限り、放送の自主性・自律性がどこまで守られたのかについて疑いが残ると認められるので、放送倫理上の問題がありうるとして、事案の審議入りを決めた。
今後の審議のため、NHKに補足的な説明を求める質問書を送ることにした。NHKの回答をまって、さらに議論を進めることになった。

まとめて議論する予定のバラエティー番組についての中間報告

委員会運営の問題点や新年度に向けての課題等について意見交換を行った。
まず、事務局から次のような現状と運営上の問題点を提示した。

第17回の委員会において、個別に審議するほどではないが、放送全体の倫理水準という意味では見過ごせないバラエティー番組が散見されるので、まとめて検討することを決定した。その後、討議の対象になりうるとしてリストアップされた10番組について、事務局から報告された。
今後は、担当委員を決めて番組の分類、分析等を行い、具体的な検討資料が作成された段階でその取り扱いを討議することにした。

以上