放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第142回

第142回 – 2008年12月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表についての報告

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理開始 ……など

12月3日に行われた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表に関する報告が事務局よりあった。また、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えた「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理が始まった。

議事の詳細

日時
2008 (平成) 年12 月16 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表についての報告

放送人権委員会が、委員会発足後初めて、「放送と通信」をテーマに審理を行い、また、公人の疑惑追及報道についても検討した上記事案の「委員会決定」の通知・公表が12月3日(水)に行われ、事務局より以下のような報告があった。(委員会決定の内容はこちら)

「委員会決定」の通知は12月3日午後、申立人と被申立人が同席して行われた。申立人である元広島県議会議員3名のうち2名が広島より上京し、一方の被申立人側も中国放送報道センター長ら2名が出席した。
本事案では、中国放送によるテレビ実名報道のインターネット配信を「放送と同視できるか、どうか」について審理が行われたが、竹田委員長は、「本件報道の動画・音声配信が停止され、文字情報のみの配信となった時点において放送と同視できる状態ではなくなった。したがって、名誉権の侵害を訴えた本事案の実質審理には入らない」とする決定内容を通知した。

通知を受けて申立人は「事実上の門前払いで残念だ。実質審理に入ってほしかった。局は文字情報による配信についても責任を負うべきだ」とする感想を述べた。一方、被申立人は「弊社の主張が認められたものと思う。今後とも国民の知る権利のために尽力していきたい」とするコメントを出した。

通知終了後、午後3時から竹田委員長のほか、起草委員を務めた堀野委員長代行と三宅委員、及び多数意見と同じ結論ながら、理由が異なるとして「意見」を執筆した山田委員の4名が出席して記者会見を行い、「委員会決定」の内容を公表した。会見には27社・53名の記者が集まり、テレビカメラ6台が入った。
記者との質疑では、「文字だから同視しないとのことだが、本件ネット配信で伝えている事実はテレビ放送と同じではないのか」、「放送がネットに掲載された場合、BPOとしては今後も個別にやっていくのか」等の質問が出た。これに対し各委員は、「本件においてはもともと動画と音声を伴うテレビ放送が、文字のみの配信となったことから同視できないという結論になった。あくまでもオリジナルであるかどうか、その違いがポイントだ」、「今回の事案は、問題提起のケースだった。当委員会としては、放送と通信の現状を踏まえながら運営規則の弾力的な運用を具体的な事案によって判断していきたい。BPO全体としてどう対応するかは今後の課題だ」等と答えた。

会見を受け、当該局である中国放送は、当日夕方のローカルニュース番組「イブニングニュース広島」内で、決定内容と双方の当事者のコメントを伝えた。在京民放テレビキー局は、いずれも当日夕方から翌朝にかけてのニュース番組や情報番組内で全国ニュースとして伝えた。
また、新聞各紙は地元・広島を含め、翌日の朝刊社会面等で一斉に報じた。

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理開始

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた今年7月23日のテレビ朝日「報道ステーション」の放送により、名誉・信用を毀損されたと、全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が申し立てた事案の審理を開始した。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして、テレビ朝日に対し訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は「見解」で「報道内容に基本的な間違いはなく、報道内容は野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

前回の委員会後、テレビ朝日の「答弁書」、野中氏の「反論書」とこれに対するテレビ朝日の「再答弁書」が提出された。

この日の委員会では事務局が双方の主張の概要を説明した後、補助金の実態が正確に取材・報道されているかどうかや、放送によって申立人の社会的評価が低下したかどうかを中心に意見を出し合った。
次回1月20日(火)の委員会では、双方からヒアリングを実施することになった。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・61件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は2009年1月20日(火)に開かれることとなった。

以上