放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第139回

第139回 – 2008年9月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え ……など

中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えで、先月に引き続き、ネット配信とテレビ報道との同視問題をめぐり、審理が行われた。
また、先に放送人権委員会決定が公表された2事案について、 当該局のその後の対応に関する報告があった。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年9月16日(火)午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」について、先月に引き続き審理が行われた。
本事案については、当委員会運営規則に定められた申立の期間要件(「原則として放送のあった日から3ヶ月以内に放送事業者に申立てられ、かつ、1年以内に委員会に申立てられたもの」)を満たしていないものの、RCCが実名報道の内容を、インターネットの同社ホームページ上に「藤田県政の闇」と題するバナーを置き、本年6月まで文字情報の形で掲載してきた事実があり、申立人らがこれによる被害の継続を訴えていること等から、「文字情報による配信行為をテレビ報道と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とする」こととなったもの。
先月の委員会後に、申立人からは、被申立人(中国放送)の「答弁書」に対する「反論書」、中国放送からは「反論書」に対する「再答弁書」が、それぞれ新たに提出された。
中国放送はこれまで、実名報道の動画に関しては昨年4月に削除し、それ以後は文字情報のみによる配信となっていたと説明してきたが、申立人は「反論書」において、「中国放送ホームページにアクセスして映像データを入手できる状態がその後も継続し、現時点でもその状態が続いている」とし、「テレビ放送とネット配信とを同視できることは当然かと考える」と主張した。
これに対し、中国放送は「これまで述べて来た通り、実名報道した4回分の映像データについては、既に昨年4月の時点で配信を終え削除している。その後、本年6月にバナー、7月には特集ページも削除しており、現在はホームページにアクセスして閲覧することは不可能である」とした上、申立人の主張に対しては、「裏金問題に関心のあると思われる人が、特殊な条件下において当社のサーバーに保存している動画ファイルにアクセスし、閲覧している状態と言わざるを得ない」と反論した。
また、文字情報でのネット配信に関連し、申立人は、「放送と配信との間には、選挙絡みの裏金が県議に授受された事実の有無にかかわる中心的かつ重要な事実内容に同一性が認められる」こと、また、「テレビ放送とネット配信は一体のものとして報道されており、このことはホームページ上のバナーを一連の報道タイトルと同じ『藤田県政の闇』と統一していることからも明らかである」とし、テレビ報道とネット配信とが同視できると主張した。
これに対し、中国放送は、「映像・音声・テロップ・ナレーション・解説等の複合的表現方法で成立しているテレビ報道とまったく同じ情報を、インターネットにアクセスした人が文字情報だけから得ることはできない」とし、さらに、「申立人ら代理人らの指摘の通り、テレビ放送が直接家庭の茶の間に侵入し、即時かつ同時に動画や音声を伴う映像を通じて視聴される点で、他のメディアには見られない強烈なインパクトを及ぼす」のに対し、「インターネットによる配信は、閲覧者が自らの意志でバナー等をクリックして該当ページを開き、内容を閲覧するものであること、その際、内容も十分検討でき、また、何度でもアクセスして内容を確認できることからも、放送とは根本的に異なる」と反論した。
双方の主張を踏まえ、この日の委員会では長時間にわたり各委員の間で突っ込んだ議論が交わされた。最終結論については次回に持ち越しとなったものの、委員会決定を取りまとめる為の起草委員会を発足させることが決まり、今後、起草作業の中でもさらに検討が加えられることとなった。

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え

『元祖いちご大福』報道に関する案件について、委員会の審理の対象とするか否かについて審議を始めた。
この案件は、「いちご大福」の考案者を自認する人とその人が経営する東京の和菓子店が申立人となり大阪のテレビ局を訴えているもの。申立人は、「2008年3月放送のバラエティー番組の中で、”いちご大福の元祖は東海地方の和菓子屋”との紹介をしたため、考案者としての名誉・信用を著しく害された。また、元祖の店としての信用・営業権を侵害された」と主張している。
委員会では、双方から提出された資料を踏まえて審議した後、次回委員会で議論を集約することになった。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の当該局対応

去る6月10日に通知・公表された「高裁判決報道の公平・公正問題」事案に関する第36号委員会決定(放送倫理違反)を受け、当該局であるNHKは9月3日、委員会宛に「委員会決定に対するNHKの対応について」と題する文書を提出した。これについて事務局より報告し、了承された。 (NHKの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第36号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

「群馬行政書士会幹部不起訴報道」事案の当該局対応

去る7月1日に通知・公表された「群馬行政書士会幹部不起訴報道」事案の第37号委員会決定(放送倫理違反)を受け、当該局であるエフエム群馬は9月16日、委員会宛に「委員会決定の取り組み状況について(ご報告)」と題する文書と、これを機会に新しく製作した「エフエム群馬 報道・編集ハンドブック 2008年版」を提出した。これについて事務局より報告し、了承された。
竹田委員長は、「委員会決定を活かすべく、エフエム群馬は、真摯に、熱心に取り組んでくれている。対応としては申し分ない。」と感想を述べた。
なお9月25日付で、改訂版が寄せられた。
(エフエム群馬の報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第37号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
(個人又は直接の関係人からの要請)

人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・65件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

「意見交換会(中部)」を11月に開催
放送人権委員会委員と会員各社との「意見交換会」を、今年は11月11日に、中部地区会員社を対象に名古屋で開くことになった。放送人権委員会委員と各局関係者が、「放送における人権・倫理問題」を論じ合うもので、東京地区での意見交換会を含め、今年で12回目の開催となる。
次回委員会は10月21日(火)に開かれることとなった。

以上