放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第137回

第137回 – 2008年7月

審理要請案件「広島県知事選裏金疑惑報道」 審理入り決定

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 通知・公表の報告 ……など

第137回委員会では、中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えについて、審理入りするかどうかを検討した結果、審理入りが決定した。また、7月1日に行われた「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の通知・公表についての報告、「アブラボウズをクエとして販売した疑惑追跡報道」についての仲介・斡旋解決の報告等が行われた。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年7月15日(火)午後4時~6時半
場所
「放送倫理・番組向上機構〔BPO〕第1会議室
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

審理要請案件「広島県知事選裏金疑惑報道」 審理入り決定

中国放送(RCC)は、2006年10月19日以降、夕方のニュース番組『イブニングニュース広島』内で、「特集 藤田県政の闇 知事選裏金疑惑」と題する特集を継続的に放送し、この中で、「藤田知事後援会の政治資金規正法違反事件に関連し、広島地検の取調べを受けた知事の元秘書が、1997年の県知事選挙の際、15名の県会議員に裏金を渡したと供述、このうち現職議員の名前がRCCの独自取材で判明」として、2006年11月から2007年4月にかけ、4回にわたり、計11名の現職県議(当時)の実名を報道した。また、その放送内容をインターネットの同社ホームページ上に掲載した。

これに対し、実名報道されたうちの元県議A氏は、その放送から6ヵ月後に「事実無根の報道により名誉を毀損された」としてRCCに対し抗議し、謝罪等を要求した。しかし、RCCは「選挙にかかわる金銭授受の問題は大きな社会問題となっていたことから、広く県民に報道することが公益にかなうと判断した。報道は真実であると信じるに足る根拠に基づいてなされたものであり、公平を期すため、実名を公表された本人にも取材し、そのコメントも伝えている」などと回答、謝罪を拒否した。

放送からほぼ1年後の本年4月、実名を公表されたA氏を含む元県議3名が申立人となり、「事実無根の報道により名誉を著しく毀損され、申立人のうちの2名が県議選に落選するなど大きな被害を受けた」として、名誉権侵害を訴える申立書を当委員会に提出した。委員会では本事案について審理入りするかどうかの検討を行った結果、RCCが一連の報道内容をインターネットの同社ホームページ上に本年6月まで継続して掲載してきた事実があること等から、これを放送と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とすることを決定した。

本事案の本格的審理は、8月の第138回委員会より開始される。

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 通知・公表の報告

放送倫理違反との決定されたが承認された「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の通知・公表の模様と当該局の対応などについて事務局から次の報告があった。

委員会決定の通知は、7月1日(火)申立人と被申立人のエフエム群馬に対し、個々に行われた。

委員会決定に対し申立人は、「自分の主張をもう少し認めてほしかったが、妥当な内容だと思う」と述べ、被申立人側は「放送倫理違反の指摘を真摯に受け止め、今後取材には十分気を付け、公正・公平な報道を心掛ける。これをきっかけに、ニュースの扱いについて反省し、より信頼される報道を心していきたい」と語った。

続いて15時から、委員会決定の内容を公表した。記者会見には竹田委員長と起草委員が出席、メディア側からは27社40人が集まり、テレビカメラ6台が入った。

記者との質疑では、「書類送検や不起訴のニュースでは、多くの場合、相手の言い分を聞くことなく伝えている。今回のケースでは何が違うのか、なぜこの報道がダメだと言うのか」という質問が多かった。これに対し委員からは、「原則は双方に取材し報道すべきだが、通常の書類送検や起訴なら当事者の言い分を取材しなくても放送倫理違反にならない場合もあるだろう。しかし今回のケースは単純な事件の報道ではない。1年以上も前に不起訴になっているもので、それが県議会という場で取り上げられたということから、群馬県行政書士会内部の複雑な背景事情がうかがわれる。それにもかかわらず、一方の当事者に全く取材をしないまま放送したのは問題だった」との説明があった。

この決定を受けたエフエム群馬の決定日当日の放送対応は次のとおり。

  • 「EVENIN’(イブニン)」内ニュースコーナー 18:03頃(1分15秒)
  • 「特別番組 人権委員会“放送倫理違反”の見解」 19:55(4分45秒)
  • 「特別番組 人権委員会“放送倫理違反”の見解」 20:55(4分45秒)

一方、在京テレビ局は、発表当日の夕方~夜、及び翌日朝のニュース番組で、30秒~1分35秒この決定について放送した。東京では新聞各紙が翌日の社会面で報じた。

以上の説明の後、エフエム群馬より送られてきた、特別番組(上記 3)を委員会で聴取した。

仲介・斡旋解決

事務局より下記案件が報告され、了承された。

「アブラボウズを高級魚クエとして販売した疑惑追跡報道」

在阪のテレビ局が、2007年暮のニュース番組内で、新たな食品疑惑として、高級魚クエと偽ってアブラボウズが販売されているという疑惑を追跡し、検証する企画報道を行った。

流通ルートから“偽クエ”の卸並びに小売をしている会社が突き止められ、社長(匿名)の取材に対する対応ぶりなどが放送された。

放送後、この社長が、「偽クエ疑惑の主犯格として扱われ、暴利を貪っているとの印象を視聴者に持たれた」と主張して、放送局に抗議したが、局側は、高級魚クエでも偽の表示で流通が行われていることを、一般の視聴者に注意喚起するための企画であると反論し、謝罪・訂正放送を拒否した。このような経過を経て、社長が2008年3月、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。

放送人権委員会で、双方に更なる話し合いを求めたところ、「二度とこのニュースを取り上げないよう求める」という社長側の要求をめぐって決着が長引いたが、局側が「今後も、適正な報道を行ってまいります」との表現を盛り込んだ文書を出すことで話し合いがまとまり、放送以来半年ぶりに解決した。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・10件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・250件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8月19日(火)に開かれることとなった。

以上