放送人権委員会

放送人権委員会 委員会決定

2005年度 第25号

第25号 産婦人科医院・行政指導報道

【委員会決定を受けてのNHK名古屋放送局の対応】

2005年7月28日に委員会決定を受けたNHK名古屋放送局は、放送と人権等権利に関する委員会〔BRC〕宛に10月18日に「改善策と取組状況」をまとめた文書を提出した。

これは、NHKと日本民間放送

連盟が、BPOの発足にあたり基本合意書において「3委員会から指摘された放送倫理上の問題点については、当該放送局が改善策を含めた取り組み状況を報告し、放送倫理の向上を図る」と申し合わせたことに基づくもので、1

0月の委員会では、7ページにわたるこの報告文書について意見を交わした。

この中で、同局内で行なわれた職場研修に招かれた渡邊委員からは「60名程の報道部員が集まり、予定の時間を超えても質問するなど非

常に熱心でした」との報告があった。また、委員からは「委員会決定を受けた当該局としては今までで一番丁寧な対応といえる」「申立人に直ちに会うなど取り組み方はきめ細かい」などNHK名古屋放送局が、具体的改善策を講

じ、誠意ある対応をしたことを高く評価する意見が相次いだ。

NHK名古屋放送局の報告は以下の通り

平成17年10月18日
NHK名古屋放送局
NHK名古屋放送局で放送した「産婦人科医院・行政指導報道」のローカルニュースについて、BRCより受けた「勧告」に対するNHK名古屋放送局の対応や取り組みに

ついて報告します。

(1)勧告後のNHKの対応について

平成17年7月28日のBRCからNHK名古屋放送局への勧告を受けて、NHKは同日午後、東京・渋谷区の放送センターにある「ラジオ・テレビ記者会(全国紙など14社加盟)」と「東京放送記者会(地方紙など13社加盟

)」に対して、「勧告で指摘された問題を真摯に受け止め、今後さらに放送倫理の向上に努め、公共放送に対する視聴者の皆様の期待に応えていきたい」というコメントを発表しました。
名古屋放送局では、この決定を受け

て、同日午後6時10分からの愛知・岐阜・三重の東海3県向けのローカル放送「ほっとイブニング」で、BRCの勧告内容をNHKのコメントを加えて放送しました。さらに東京から全国向けに午後9時からの「ニュース9」で同様

の内容を放送しました。ラジオでは、午後7時45分から東海3県向けに、また、午後11時から全国向けに放送しました。

申立人に対しては、同日夜に、愛知県豊明市の自宅に名古屋放送局報道部長と副部長の2人が

直接出向いて、勧告内容を「ほっとイブニング」で放送したことや「ニュース9」でも放送することなどを報告しました。

「勧告」を受けた7月28日の翌日、29日に、名古屋放送局報道部内に報道部長をチームリ

ーダーとして、ニュース取材、テレビ制作、映像制作(編集)、映像取材(カメラマン)、報道番組の各責任者5人のあわせて6人による「改善チーム」を直ちに立ち上げるとともに、報道部会を開いて勧告内容を説明し、勧告を

重く受け止め、放送倫理の向上に一層努めるよう指示しました。
東京の報道局でも、この問題を幹部が出席する編集会議で取り上げた上で、注意を喚起する旨の文書を29日付けで全国の報道の現場に送り、放送倫理の向上

に一層努めるよう指示しました。
さらに勧告後、9月16日に名古屋放送局で開かれた、中部地方在住の11人の学識経験者らからなる第506回中部地方放送番組審議会で、勧告内容、改善計画について報告しました。

(2)「勧告」に対する報道部員の意見集約と問題点の整理

名古屋放送局報道部では、BRCの「勧告」について、報道部員全員から「勧告」をどう受け止めたか、問題点はどこにあったか、などについての意見を求めるためにリポートを提出させました。その際に、「勧告書」のほか、BRC

が行った記者発表の内容や出席した新聞社などの記者の質疑応答をまとめた文書を熟読するように指示しました。
これらのリポートを集約して、「改善チーム」で問題点を整理しました。ひとつは、「報道される側への配慮

が足りなかった」という、ニュースを報道する側の意識の問題があげられました。報道のイロハである「いつ」が欠落した点に重大な問題があると「勧告」で指摘されており、原稿上の事実関係は正しくても、報道される側への配

慮を欠いたニュースであったことを深く認識するべきで、記者、デスク、ほか報道に携わるもの全員が、改めて人権に対する意識を改革する必要があるという結論に達しました。
もうひとつは、当該の原稿が出された際の「

チェック体制」の問題です。この点については、原稿の内容が専門的で、担当デスクに全面的に任せるかたちになっていたこと。また、放送間際の出稿で、編責やTVデスクによる十分なチェックができなかったことなどが上げら

れました。「改善チーム」では、これまでのチェック体制を見直し、より重層なチェック体制を構築する必要があるとの結論に達しました。
以上を踏まえて、名古屋放送局報道部では、再発防止に向けて、ニュース・放送に

携わる者のさらなる意識改革を行うこと、ニュースデスク体制や編集責任者(編責)体制を中心にニュースのチェック機能を一層強化することの2点を重点に、以下のような措置を講じました。

(3)名古屋放送局報道部での具体的改善策

1.「報道される側に配慮した放送」へのさらなる意識改革

  • グループ討議を開き、再発防止と人権への意識を高める
    報道部の記者、カメラマン、映像制作、報道番組の各グループが9月2日から21日にかけてそれぞれグループ討論を行いました。各グループからは、「ニュースの

    出し手としての責任の重さを痛感した」、「人権への配慮が問われるとき、情報を共有化して確認する作業がいっそう必要だ」、「相手への影響をまず考えることが大切だ」などという意見が出されました。

  • 職場研修の実施
    10月6日、名古屋放送局900会議室にBRC委員で千葉弁護士会の渡邊眞次弁護士を招いて、2時間あまりにわたって職場研修を実施しました。研修には報道部を中心に全局から60人が出席し、講演を

    通じて改めて「報道される側に配慮した放送」への意識を高めました。
    報道部では、この研修のほか、随時、人権に関する研修を開いて意識改革に努めることにしています。

2.「ニュースのチェック体制の強化」

  • ニュースデスク体制の見直し
    ニュース原稿を二重、三重にチェックするため、新たに総括デスクを設け、ニュースデスクの役割を明確にし、機能の強化を図りました。
    これまで、名古屋放送局から出稿される原稿

    については、1番デスク、2番デスクに分かれて地域別の責任体制をとっていました。今後は、1番デスクを出稿全体の責任者に位置づけ、2番デスクが1番デスクの補佐役として、原稿の2次チェックをすることとしました。ま

    た新たに創った総括デスクは、3次チェックを行い、その日出された原稿のニュースバリューや、翌日のニュースの予定の選択、TVデスクとの綿密な打ち合わせなどを業務として位置づけました。1番・2番・総括デスクの役割

    分担を明確にした上で、互いの業務に目を配ることで、名古屋放送局から放送されるニュースについてより重層的にチェックできると考えています。

  • 報道部のレイアウト変更
    複数の報道部員から「ニュースデスクとTVデスクとの間が離れすぎていて綿密なコミュニケーションがとれていない」という指摘があり、これを改善するため、報道部フロアのレイアウトを変

    更し、ニュースデスクとTVデスクの距離を近づけました。これによって、出稿を担当するニュースデスクとTV制作を担当するTVデスクとが、より緊密に連絡をとれるようにしました。

以上が、BRCより受けた「勧告」に対して、NHK名古屋放送局が取り組んできた内容です。

以上