放送人権委員会

放送人権委員会 委員会決定

2008年度 第39号

第39号 徳島・土地改良区横領事件報道

【委員会決定を受けてのテレビ朝日の対応】

テレビ朝日の報告は以下の通り

2009年6月29日
放送倫理・番組向上機構 御中

株式会社 テレビ朝日

委員会決定後の対応と取り組みについて

当社番組「報道ステーション」の「徳島・土地改良区横領事件報道」事案について、2009年3月30日の放送倫理・番組向上機構 放送と人権等権利に関する委員会による委員会決定を受けて、当社は以下の対応と取り組みを行って

おりますので、ご報告いたします。

  • 委員会決定後の対応について
    3月30日の委員会決定を受けて、当社広報部は当日「委員会の勧告を真摯に受けとめ、放送倫理や人権に十分配慮をしてまいります」というコメントを発表しました。委員会決定の内容につい

    ては、当社のコメントも交えて、当日夕方の「スーパーJチャンネル」と、委員会決定の当該番組である「報道ステーション」および翌日朝の「やじうまプラス」内「ANNニュース」で全国向けに放送したほか、4月5日の番組「はい

    !テレビ朝日です」の中で放送しました。社内においては、委員会決定の当日以降、局長会をはじめ社内常設の番組審査や放送倫理にかかわる会議などで委員会決定の内容を報告しました。また、報道局においては局内の会議で詳

    細な報告を行いました。4月14日には、顧問弁護士も交えて委員会決定について詳細に分析・検討する会議を開き、対応策の策定などの方針を確認しました。申立人には、4月16日に報道担当取締役が面会し、委員会決定の趣旨に沿

    って、今後番組を編集・放送していく方針を説明したところ、申立人はそれを了承されました。社員の処分は4月21日付で行い、「裏づけ取材など不十分なまま放送にいたり、結果、放送倫理違反があったとしてBPOから勧告を受け

    たことに対して」として、報道ステーション担当部長ら番組の担当者5名を減給1カ月、また「その管理監督責任を問う」として、報道局長と報道局ニュース情報センター長を譴責としました。当社放送番組審議会においては、4月17

    日の第499回審議会で社長が委員会決定について報告しました。5月15日の第500回審議会では「報道情報系番組の『取材』のあり方、『情報』の取り扱いと放送倫理、人権の問題について」というテーマで審議が行われました。この

    中では、委員から「ぜひ取材に関してはしっかりとやってもらいたい」「情報という危険なものの扱い方の伝承がなされているか。デスククラスが心をひきしめていかないといけない事態だ」などの意見が出されました。

    らに、6月4日の第76回テレビ朝日系列24社放送番組審議会委員代表者会議(大阪市で開催)においても前述のテーマで議論が行われました。出席委員からは「番組制作の現場で、経験の少ないスタッフによる放送倫理観が欠落して

    いたことや、それを監督する立場の責任者のチェック機能が十分でなかったのが取材不足の原因ではないか」「ジャーナリストとして勉強する機会がどこまで保証されているのだろうか。余裕がない現場が危ない状況を生んでいると

    思う」「テレビの映像と音声は一瞬にして消えるが、影響力が大きいだけに間違いを起こさないように謙虚であるべき」「取材を慎重に行い、事実の確認をきちんと行うことが重要だ。さらに事実を報道したとしても、視聴者がど

    のような印象を持ったかが重要となる」などの意見が出されました。

  • 再発防止に向けた取り組みについて
    「報道ステーション」では、番組の責任者が全スタッフを集めて、委員会決定の内容と、取材の経緯や表現方法などを説明しました。委員会決定で指摘された問題点を重く受け止めて

    、検証報道に必要な十分な裏付け取材を今後も怠ることなく徹底的に実施するよう注意喚起を促すとともに、様々な意見交換を実施しました。また、幹部デスクとも委員会決定後に協議を重ね、放送人権委員会で審理されることに

    なった問題点を再度整理し、今後は放送項目についてチームリーダーを決め、素材の確認をはじめナレーション原稿や表現方法など全体的な点検作業を徹底的に実施していく方針を確認しました。
    報道局に、放送倫理の一層

    の徹底および危機管理情報の共有を図り、問題発生の事前防止に向けた施策を機動的に立案し、実施するための会議「報道局・危機管理プロジェクト」を設置しました。この会議では、まず「徳島・土地改良区横領事件報道」につ

    いて、このような放送に至った原因の究明や、再発防止に向けた業務の改善方法などについて検討を行いました。
    5月14日には当社に、放送人権委員会委員長代行で今回の委員会決定のとりまとめを担当した三宅弘弁護士を

    招いて、委員会決定の内容や問題点等について2時間以上にわたって説明を受ける研修会を実施しました。社員・社外スタッフなど約80人が参加し、番組スタッフなどから出された質問や疑問について三宅委員長代行から回答をいた

    だき、委員会決定についての理解を深めるとともに、問題意識を持つことの重要性を再認識しました。

  • 番組における具体的な改善策
    1)検証報道を実施する際の裏付け取材の徹底。
    検証報道に限らず、ニュース報道の根幹は十分な裏付け取材が必要なことは言うまでもありません。確認作業は一人では行わず、必ず複

    数人で一つ一つ疑問点を解消していきながら、十分な裏付け取材ができているか、最終的な確認作業をデスクと必ず行うことを徹底します。
    2)安易で短絡的・拙速な報道の防止。
    十分な裏付け取材ができなかった場

    合や、コンセプトが明確になっていない場合などは、拙速な報道を避けて当日の放送を見送るという決断をするよう努めます。
    3)チームリーダーを決め確認作業を実施。
    現在のニュース編成は、一つの項目に対して複

    数のディレクターが取材や原稿、編集などを分担して作業を実施するため、全体を統括する責任者はいるものの、細部まで完璧に把握できていないこともありました。これを改めて、チームリーダーを項目ごとに配置して責任体制

    を明確にし、取材や編集などすべての過程において確認作業に当たらせることにします。
    4)チェック体制の強化と節目ごとに確認作業を実施。
    チームリーダーは1次的な確認作業を行いますが、進捗状況も含めて担当

    のデスクやプロデューサーがチームリーダーとともに節目節目で取材や編集など進捗状況をチェックして確認作業を行います。また、ナレーションでの表現方法なども含めて、適切かどうか確認を進めることとします。
    5)定

    期的な勉強会と研修を実施し、再発防止を推進。
    他番組や他局で起きたことも含めて、当該報道に関連した講師や人物を招いて勉強会や研修会を開催し、スタッフの意識を常に高めるように努めます。

以上、放送と人権等権利に関する委員会による委員会決定についての当社の対応と取り組みをご報告申し上げました。

以上