放送人権委員会

放送人権委員会 委員会決定

2009年度 第42号

「派遣法・登録型導入報道」事案

委員会決定 第42号 – 2009年11月9日 放送局:テレビ朝日・朝日放送

見解:構成・表現に関し配慮を求む
テレビ朝日・朝日放送の共同制作による『サンデープロジェクト』は、2009年2月に2回にわたり特集「派遣法誕生」を放送した。この番組について、インタビュー取材を受けた元労働次官と経済学者らが、「質問と答えを勝手に切り貼りされ、局の都合の良い内容に捏造された」などとして名誉侵害を訴えた事案。

2009年11月9日 委員会決定

申立人
高梨 昌・関 英夫・木村 大樹
被申立人
株式会社テレビ朝日・朝日放送株式会社
苦情の対象となった番組
『サンデープロジェクト』
(毎週日曜日 午前10時~11時45分)
放送日時
第1回 2009年2月1日(日)(番組後半の特集 約30分)
「派遣法誕生(前編)~“雇用破壊”の原点はこう作られた~」
第2回 2009年2月8日(日)(番組後半の特集 約31分)
「派遣法誕生(後編)~“生みの親”キーマン二人の証言~」

本決定の概要

テレビ朝日・朝日放送(以下「局」もしくは「被申立人」という)の共同制作による『サンデープロジェクト』は、2009年2月1日および8日の2回にわたり、特集「派遣法誕生」(以下「本件放送」という)を放送した。番組は、2008年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、いわゆる「労働者派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当て、その成立の過程を追った調査報道である。
この中で「労働者派遣法に登録型を導入するにあたり大きな力を発揮したのが、元労働次官と経済学者の2人であることが分かった」と、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えた。
この番組について元労働次官と経済学者ら(以下「申立人ら」という)が、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りされ、局の都合の良い内容に捏造された。また、労働者派遣法に『登録型をひっそりと盛り込んだ』などの表現を多用し、2人が派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃された。これにより名誉を侵害されたので、局に対し訂正と謝罪の放送を求める」と、放送と人権等権利に関する委員会(以下「当委員会」という)に申し立てたものである。
この申立てを受け当委員会で審理した結果、本件放送には一部に申立人の社会的評価に影響をもたらす表現が含まれているが、申立人らが公人として労働者派遣法の制定に関わっていた以上、論評を受忍すべき範囲は一般人よりも広く認められるし、そもそも放送内容自体にはその重要な部分において事実に反するところがなく、現在の雇用不安に至る原因を探るという公共性の高い性格を有していることから、名誉毀損などの違法性はないとの見解に至った。
また、この調査報道番組を制作するに当たって、インタビュー証言の編集や放送表現に関し、なお配慮すべき点が幾つかあるものの、放送倫理上問題ありとまではいえないとの結論で当委員会は一致をみた。

(決定の構成)

委員会決定は以下の構成をとっている。

Ⅰ.事案の内容と経緯

  • 1.申立てに至る経緯
  • 2.放送内容の概要
  • 3.申立人の申立ての要旨
  • 4.被申立人の答弁の要旨

Ⅱ.委員会の判断

  • 1.派遣法成立の経過と報道のあり方
  • 2.事実の認定と判断
  • 3.放送内容についての評価

Ⅲ 結論と措置

Ⅳ.審理経過

全文PDFはこちらpdf